贋作に明日はない
- ロマンス (120)
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ヘイリー・リンド著、岩田佳代子訳『贋作に明日はない』(創元推理文庫、2012年)は贋作ミステリーの二作目である。主人公アニー・キンケイドは世界的な贋作者の孫娘で、駆け出しの画家・装飾家である。舞台はサンフランシスコである。贋作がテーマとなっているだけあって、芸術の話題が豊富である。 話題となる芸術はヨーロッパに特化されているが、登場人物にはアフリカ系やアジア系もおり、人種のサラダボールとしての米国を描いている。主人公の祖父は会話にフランス語が入るフランス愛好者であるが、一方で本書はフランス語を「口から出まかせを並べ立てるのに、このうえなく適した言葉」と扱き下ろすことも忘れていない(154頁)。 主人公は駆け出しの芸術家で生活は苦しい。そのために家賃も滞納気味である。しかし、家主は「この先、家賃支払いの都合がつかないような状況に陥ったら、ちゃんと言ってきてくれ」とまで言う(58頁)。人情味ある家主の存在によって新たなストーリーが生まれる。 駆け出しの芸術家という主人公は夢も追って上京した日本の若者とも重なるが、日本の状況は深刻である。僅か一日の家賃滞納で高額な違約金を請求し、追い出し屋に豹変するゼロゼロ物件業者が横行している。現代日本の閉塞感はゼロゼロ物件などの貧困ビジネスが横行する住まいの貧困が要因になっていることを再確認させられる。 冒頭から死体が発見され、ミステリーとしての舞台が整うが、主人公は事件を解決する探偵ではない。刑事の友人はいるが、警察に協力して事件を解決する立場でもない。そのために事件解決に向けて一直線という物語ではない。むしろロマンスの粋な会話を楽しむ作品である。 スリルという点では序盤は張り込み中に友人を呼んでパーティーをするなど緊張感の欠片もない。ラストは緊迫感あふれる状況であるが、メアリー・グレーの解説が深刻感を薄め、スリルの中にもユーモラスな雰囲気にしている。(林田力) | ||||
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