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iisan さんのレビュー一覧

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レビュー数84

全84件 81~84 5/5ページ

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No.4: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

本当に超大作です

質量ともに、超大作。評価を9にしたのは、あまりに長編過ぎて読む人を選ぶだろうから、というのは冗談だが、文庫本で5巻、約2500ページのボリュームに圧倒された。さらに、読み始めればぐいぐい引き込まれてゆく、まさに英語版ペーパーバックの惹句の常套句“page-turner”そのままの圧倒的な筆力にも感服した。
ストーリーは連続女性誘拐殺人事件だが、描かれているのは単なる犯人探しでもなく、サイコパスの恐怖でもなく、「劇場型犯罪」とは何か、「劇場型犯罪」が生まれる社会とは何かを追求した社会派ミステリーと言える。主要な登場人物だけを取り上げても、犯人、被害者の遺族、警察、ジャーナリスト、犯人の友人とその家族、遺体の発見者など多岐に渡り、それぞれの背景や視点からの言動がぶつかり合って巨大な群像劇が展開される。さらに、周辺的な登場人物もしっかりとキャラクター設定されており、なるほどと思わせるエピソードが繰り広げられるため、ストーリー構成はきわめて重層的で複雑に絡み合ってくる。しかし、キャラクター設定が確立しており、また筆者の構成力が素晴らしいため、読み難さは一切感じなかった。
あえて難癖を付けるとすれば、登場人物同士の出会い方に相当なご都合主義があると思うし、クライマックスに向けて重要だと思われるエピソードが中ぶらりのままにされているのが気になるが、これだけの数の登場人物の壮大なお話しをまとめあげるには仕方ないことだろう。
傑作エンターテイメントとして、どなたにもお奨めできる。
模倣犯1 (新潮文庫)
宮部みゆき模倣犯 についてのレビュー
No.3: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

大成功の実験作

保安官コーク・オコナーシリーズの最新作は、極めて大胆な実験が見事に成功した作品だ。
実験とは、大きな一つのストーリーを二つの作品として完成させること。本作品は本作品として完全に成立しながら(読者に十分な満足を与えながら)、次作への渇望感をかきたてるラストシーンが実験の成功を物語っている。
小説の冒頭にいきなり「結末」の章が出てくるというオープニングに意表を突かれるが、保安官に復帰したコークが偽の緊急通報に呼び出され、銃撃されるところから始まるストーリーは、さらに別の殺人事件とつながり、犯人の追跡、黒幕の追求、さらには愛妻・ジョーの過去やコークの動揺など複雑な要素が絡み合って、どんどん読者をひきつけてゆく。最終的には、捜査は「結末」を迎えるのだが、そこはまた新たな展開(次作)のスタートになっているという、複雑さ。一歩間違えれば、ミステリーとしては「トンでも本」になるところだが、さすがにクルーガー、破たんなく仕上げている。
いつも冷静沈着で意志堅固なコークが、ジョーの過去に嫉妬したり、謎のセキュリティコンサルタントの美女に心を動かされるところが、優柔不断な凡人である私などは個人的に共感できたというのも、また一興、シリーズの新しい側面を見た印象である。

注意:この作品の「あらすじ」は間違って、「二度死んだ少女」のものが掲載されています。
闇の記憶 (講談社文庫)
ウィリアム・K・クルーガー闇の記憶 についてのレビュー
No.2: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

よく練られている

今さら宮部みゆきを褒めてもしょうがない気がするが、実によくできている作品だ。
連続して亡くなった3人の若い女性。そのいずれも殺人とは思われないのだが、4人目の被害者になるかもしれないとおびえる、もう一人の女性。これは、連続殺人なのか? というキーの物語で探偵役を務めるのが、なんと高校生の男の子。しかも、被害者の親族でもなければ、もちろん刑事や探偵でもない。それでも、探偵役になる必然性が設定されているから面白い。
さらに、主人公の少年自体にも解決すべき過去の重荷があり、これまた、物語の重要な部分を占めるという複雑さ。この二重、三重になって展開していく物語を破たんなく、面白く読ませる構成力はすばらしいの一言だ。
主人公の少年ができすぎた大人みたいに見えて、ちょっと苦笑したくなるところもあるが、まあご愛敬だろう。
魔術はささやく (宮部みゆきアーリーコレクション)
宮部みゆき魔術はささやく についてのレビュー
No.1: 8人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

次作への期待が高まる

北欧のミステリーといえば、古くは「マルティン・ベック」シリーズ、最近では「ミレニアム」ぐらいしか読んでいないが、本作品も前記2つに勝るとも劣らない傑作だった。
警察組織内部で嫌われ者の偏屈なベテラン捜査官が、独自の捜査で難事件を解決するというのはありがちなストーリーだが、そんなありきたりさがまったく気にならない面白さだった。まず、自殺で片付けられきた被害者が実は5年間も監禁されており、しかも、捜査側は被害者が生きていることを知らないまま捜査しているという設定が意表を突く。読者は被害者が生きていることを知っているだけに、救出までのプロセスの一つ一つにハラハラドキドキ感が否応なく高まる。さらに、サイコパスの犯人の動機や意図がなかなか明らかにされず、この側面でも推理する楽しみが非常に大きい。犯人が判明するまでのプロセスもよく考えられている。
さらに、主人公のカール・マーク警部補、助手の怪しいシリア人・アサドをはじめ、今後のシリーズで重要な役割を果たしそうな人物が非常に魅力的なキャラクターなのも、今後の作品への期待を高めてくれる。
シリーズはすでに4作まで刊行されているということで、本当に次作の登場が楽しみである。
特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕