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いわし雲 さんのレビュー一覧

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レビュー数25

全25件 21~25 2/2ページ
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No.5: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

全体的に浅くて面白味に欠ける作品。

人工知能をテーマとした近未来ミステリー小説ということで、横溝正史賞というイメージとはかなりかけ離れたものになっています。それでいながらこのような賞を取ったからにはよほど面白いのだろうと期待しましたが、読んでみるとあまり面白いものではなかったというのが正直な感想です。

主人公は人工知能の開発に関わる研究者の工藤という若いという男です。ある時彼の所属する会社が新しいソフトを開発することになりました。そのソフトとは、今は亡き謎の美少女ゲームクリエイター水科晴の人工知能を作ること、そしてそのソフトを会社として売り出すのが目的です。 人工知能とはご存知のように自ら学習して賢くなっていくそんなソフトのことを言います。この本を読んで納得がいかないのはこの工藤という男が人工知能というものをあまり信用していないということです。 人工知能は人間を超えるような知性でもなんでもなく時には予想を超える行動をすることがあるが、それはあくまでも説明可能な範囲での行動であり、単なる道具に過ぎない。そんな考えを彼は人工知能に対して持っているわけです。言ってみれば人工知能を否定しているという、そんな感じすらします。その彼が会社としての開発が中止になった後も、水科晴の人工知能を個人的に作ろうとするということ自体非常に矛盾した感じがいたします。しかもその人工知能を作るモチベーションとなるのが晴に対する恋愛感情だということなのです。この工藤という男は恋愛というものに関しても非常に否定的な考えを持っている男で、そんな男がすでにこの地球上に存在しない晴に対して恋心を抱くというのも非常に矛盾した感じがします。

一言で言うと全体的に浅い、そんな印象を受ける小説なのです。ミステリー小説としても謎が非常に浅いという感じがします。ドキドキするような展開もなく大きなスリルもサスペンスもなく、淡々と話は進んでいきます。そして終わってみればあーやっぱりそうか やっぱり着地点はそういうことか、というがっかり感がハンパないのです。ミステリーとして非常に底が浅いし、近未来のSF小説というそんな感じもない,また恋愛小説としてみたとしても中途半端な感じがいたします.とにかくどのような読み方をしても基本的に全てが浅い,それがこの小説だという気がします。本の最後に載っている選評を読むと、他の作品を圧倒した内容で、短時間で選考が終わったという有栖川有栖氏のコメントが載っていますが、果たしてそうなのでしょうか。これが他を圧倒していたというのであれば他はよほどひどかったとしか、言いようがないのではないでしょうか 。もっとちゃんと選んで欲しかったと思います。

虹を待つ彼女 (角川文庫)
逸木裕虹を待つ彼女 についてのレビュー
No.4:
(8pt)

209号室にはいったい何が?イヤミス系ホラーの傑作。

櫛木理宇という作家は以前読んだことがありますが、あまり面白かった印象はありません。ただ今回選んだこの作品は、最近読んだものの中ではかなり面白いものでした。いわゆるイヤミス系のホラーとでも言いましょうか。短編が5つ収められておりそれぞれが独立して読んでも面白いのですが、全て繋がっていて全体を読むと事の真相が分かります。

それぞれの作品に共通しているのは女性が主役ということです。彼女たちは皆心に闇を抱えております。非常に傷ついた心で毎日を送っている。そんな女性が不幸に巻き込まれていきます。舞台はある瀟洒なマンションです 。ここの209号室から来たという謎の少年、「葵」この少年がまさに魔を呼ぶ少年というか、彼が現れることでそれぞれの家族が破綻していくというストーリーになっています。

イヤミスの最大の特徴は読後感が悪いということではないでしょうか。事件は解決されたのに何か嫌な気持ちが残ってしまう。 本来であれば楽しむために読書をするのですが、このイヤミスを読むと気分が何か悪くなってしまう、この作品もまさにそういった作品です。しかもこの作品はホラーなのです。楽しい理由はありません。しかし209号室にいったい何がいるのかそして全てを明らかにするその真相とは一体何なのか、 時間忘れて読まざるを得ません。これもまた読書の楽しみのひとつだと思います。嫌だ嫌だと言いながら結局読んでしまうのが イヤミスの魅力だと思います。結局面白いんですね。


第一話「コドモの王国」

このマンションの一室に住む若い若い夫婦と三歳の男の子雄斗。どこにでもいるようなほほえましい一家ではあるのですが、妻の菜穂は夫に不満を抱いています。やんちゃで悪戯好きな息子、その息子の教育を一切せず息子と一緒になって遊んでばかりいる、そんな夫に対して菜穂は大きなストレスを抱えています。そんな中ある日息子の雄斗に新しい友達が友達が出来ました。その友達の名前は「葵」という6歳の少年。209号室に住んでいると言います。どうやら鍵っ子らしく両親は昼間いないようです。葵は毎日のように菜穂の家に入り浸り朝から晩まで雄斗と遊んだり、また食事も全て一家と一緒に食べるようになりました。その事で菜穂はさらにストレスをを抱えていくのですが、この葵という少年の正体は一体なのなんなのか。そして待ち受ける悲劇とはいったい何なのか。209号にはいったい何があるのか。最初の作品にふさわしい出来だと思います。


第二話「スープが冷める」

第2話の主人公もストレスを抱える女性です。彼女の名前は石井亜沙子。ある会社の主任を務めています。非常に仕事のできるキャリアウーマンということで会社では通っています。年下の夫はいますが、現在海外に赴任中。自宅では夫の母親と二人で暮らしています。子供はいません。この夫の母親は人間的には悪い人物ではないのですが、50代半ばを過ぎて未だに少女趣味の抜けない世間知らずな女性で、いわゆる空気の読めない人物なのです。悪い人でないだけにやることなすこと気に障り、亜沙子はこの義母のことが非常に嫌いになります。とにかくこの義母は常識というものが一切ありません。なんとある日3歳ぐらいの男の子をスーパーで見つけ、自宅に連れ帰ってきます。そしてまるで自分の真の孫のように世話を始めるのです。この男の子の名前が「あおい」という名前なのです。この男の子が来ることによってまた不幸な事態が起こり始めます。それは読んでからのお楽しみです。


第三話「父帰る」

専業主婦である千晶が主人公です。彼女はまだ24歳ですが17歳の義理の息子がいます。つまり彼女は後妻であり夫はかつての上司なのです。夫の前妻つまり義理の息子の本当の母親は数ヶ月前に病気で亡くなっています。このような複雑な関係を抱える彼女はやはり心にストレスというものを持っています。また彼女は幼い頃養子に出されたそんな体験があります。なぜ彼女は養子に出されたのかその裏に隠された秘密とは何なのか。そこもまた興味深いところではあります。そんな中ある日、義理の息子が一人の男の子を連れ帰ってきます。その男の子はランドセルを背負った小学生で名前が「葵」と言います。もちろんこの「あおい」という少年は209号室から来たと言います。例によってこの「葵」が来てから恐ろしい出来事が次々と起こるのです。これもまた読んでからのお楽しみだと思います。

第4話「あまくてにがい」

第4話の主人公はOLの和葉です。ストーリーの終盤に向けて物語は少し動きを見せてきます。
和葉が住んでいるのは何とあの209号室なのです。この和葉には別のところに住んでい奈々香という妹がいます。子供の頃から何でも和葉ものを欲しがってきたこの妹を、和葉は大変憎んでいました。 この和葉のもとに7歳から8歳ぐらいの少年がやってきます。そして USBメモリを残して行きますこの USB メモリを和葉は再生してみました。そこには動画が写っておりました 果たして動画に写っていたものは何なのか。事件は急展開を始めていきます。


第五話「忌み箱」

この作品で全体の謎が解き明かされます。よって詳しいことは書けません。主人公は209号室のオーナーである波佐野羽美です。彼女もまた心に闇を抱える女性でした。ここから先は読んでいただくしかないのですが、着地点がここだったというのはなにか腑に落ちないというか、肩透かしを食った感が無きにしもあらずですかね。ありがちな種明かしといえるかも知れませんね。ただ面白く、一気に読み終えてしまったほどですから、作品の出来はかなりのものだと思います。ホラーなんですが、あまりおどろおどろしい内容ではないです。肩の凝らないさくっと読める作品に仕上がっていてとても楽しめました。

209号室には知らない子供がいる
櫛木理宇209号室には知らない子供がいる についてのレビュー
No.3:
(7pt)

「監獄舎の殺人」の感想です。

この本は東京創元社の「ミステリーズ!」という専門誌の新人賞を獲った作品を集めた短編集です。
それぞれの作品をみていきましょう。


「強欲な羊」美輪和音・著

最初の「強欲な羊」美輪和音・著。これは大豪邸を舞台にしたサイコサスペンスものです。大きなお屋敷に二人の美少女が住んでいます。姉の麻耶子は大輪の薔薇のように艶やかで気性が激しく、妹の沙耶子は桜のように可憐でどこか儚げで優しい。この2人の対照的な姉妹をめぐる屋敷内での様々な殺人事件。「強欲な羊」とは果たして誰のことなのか。物語はこの屋敷に住む使用人の女性の視点で語られます。文章も非常に手慣れて巧みでなかなか読みやすかったです。そして最後にどんでん返しもあり、非常に面白いそんな作品でした。少し読み進んでいくうちにある程度このストーリーの展開は読めるのですが、最後の本当のどんでん返しはちょっと想像できませんでした。そういう意味では非常に上手く書かれた作品だと思います。 美輪和音氏は映画, 『着信アリ』シリーズの脚本家だそうです。

「かんがえるひとになりかけ」近田鳶迩・著

これはいわゆる最後の1行であっと言わせるそういう小説ですね。もしかすると頭のいい読者の中には途中で気がついた人もいるかもしれません。ただ私は気づきませんでした。この作品は胎児の視点から語られます。まずそのことが非常にユニークです。胎児の視点から語られた作品、私はあまり読んだことがありませんが、実に面白いと思います。ただこの胎児はただの胎児ではありません。実は この「胎児=私」はある女性に殺されていたのです。殺された私がこの胎児に憑依したのかあるいはまた別の理由があるのか、そこの部分に触れるとネタバレになるので触れるわけにはいきませんが、何のために私は殺されそして殺した犯人が誰なのか、そこがこの作品の中心となる謎の部分です。途中までどういう展開になるのか全く予想がつかず一気に読んでしまいました。そして最後の最後に書かれたその1行、確かに驚きではありますが、ちょっとユーモラスな印象を持ちました。思わず笑ってしまいますね。 驚くというよりも何だこれはとニヤニヤしてしまうそちらのほうが、感想としては正しいかもしれません。

「サーチライトと誘蛾灯」桜田智也・著

この本の中では、これだけが面白さが分かりませんでした。確かに会話の部分は漫才の台本みたいででおかしいのですが、ミステリとしてはまったく楽しめかったというのが、正直な感想です。逆にどこが面白いのか選んだ人に聞いてみたいほどです。公園の見回りをしている吉森という男が、殺人事件に出くわすという話なのですが、謎の部分がまったくありません。なんせ犯人が出頭してしまうのですから。「あの方を本当に殺してしまったのは私かも知れません」と言って。もしかすると私の知らない楽しみ方があるかのかも知れませんでしたが、私には理解できなかったということです。


「消えた脳病変」浅ノ宮遼・著

これはちょっと変わった医療ミステリでした。 ある大学の医学部の脳外科の授業で 榊という教授が授業をするのですが、その授業はこの教授の医師としての経験に基づいた問題を学生に対して投げかけます。それに対して学生がどう答えるか、それによって教授は点数をつけるわけです 。榊の出した問題はこうです。「目の前に1人の女性が意識を失って倒れているどんな処置をすべきかどんな、検査はすべきか君たちになりに考え病気の原因を探って欲しい 。」榊が担当していた患者の中に Aさんという女性がいました。この女性がある日病院で急に意識を失って倒れてしまいました。彼女の脳にはもともと脳病変がありました。ところが、これが検査の結果全く消えてしまっていたのです。じゃあなぜ倒れたのでしょう。一体どういうことなのでしょうか。この謎に対して学生達は様々な回答します。しかしほとんどがはずれでした。ある学生が答えたその正解は実に驚くべき内容のものだったのです。
この作品はあまり読んだことの無いタイプの医療ミステリで、作者は医者のようですが、難しい表現もなく素人にも分かりやすいもので、面白かったです。


「監獄舎の殺人」伊吹亜門・著

これは歴史ものいうか明治維新を舞台にした作品です。京都にある監獄舎に一人の男が囚われていましたこの男の名前は平針六五。罪名は政府転覆を企てた謀反です。 この平針がある日、死罪になることが決まりました。ところが彼はその直前になぜか毒を飲み自害してしまいます。果たしてその原因は何なのでしょうか。長州藩士であり政府高官にまで上り詰めた 彼がなぜ死罪を恐れて自害するなどという恥知らずな行為を選んだのか。そもそも果たして本当に自害だったのか。その驚くべき謎は。この結末はちょっと予想がつかないものでした。


この本全体を読んでの感想は、それなりに面白かったけれども、ものすごく突き抜けたものはなかった、そういう感じですかね 。合格点ではありますが、新人の作品としてはもっとぶち抜けたものが欲しかったなという感じがします。点数としては10点満点で言えばなら7点ぐらいでしょう。8点はあげられませんね。作品的には最初の「強欲な羊」それから2作目の「かんがえるひとになりかけ」これ面白かったです。 期待できる作家だと思います。





監獄舎の殺人 (ミステリーズ! 新人賞受賞作品集) (創元推理文庫)
美輪和音監獄舎の殺人 についてのレビュー
No.2: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

面白いけど、ややこしや

法条遥という作家の作品を読むのはこれが2冊目です。「忘却のレーテ」という本を以前読んだことがあり、それは非常に面白いものでした。そこでこの作品を選んでみましたがいわゆるタイムトリップものまた別の言い方をすればタイムリープもの、 まあいわゆる時間を移動するということですね。こういう作品の特徴としては時系列が非常に複雑になって理解しづらいというのがあります。 この作品も発想がいいんですが、やはり一回読んだだけでこの内容を全部理解するというのはほぼ不可能。おそらく作者は手元に図を描いてその図を見ながら全体の構図を頭の中で描いたんだと思いますけども、やはり読者がこれを読んですぐに理解するというのは無理だと思います。とにかく突っ込みどころがたくさんあります。しかしそのツッコミどころを言っていたのでは完全にネタバレになってしまうので、ここでは書けません。そこが歯がゆいところではあります。とりあえず私のレビューの基本としてはネタバレはしないというのが信条としてありそこはもう我慢するしかないということでしょう。一応物語の発端だけ書いておきますと、1992年の夏に主人公である美雪のクラスに園田保彦というイケメンの少年が転校してきました。この少年は実は未来人だったのです。彼は300年後の世界からやってきた未来人で、その目的はちょうどこの時代に書かれたある本を探すためにタイムリープしてきたのです。彼は300年後の世界ではある研究をしている研究員でした。天才的な研究員で自らタイムリープする薬を発明しその薬によって1992年にタイムリープしてきたわけです。主人公の美雪はこの園田という少年に恋心を抱きます。この事は後になって重要な要素の一つともなるわけですが、ある日校舎が崩れて園田が生き埋めになるという事件が起こります。美雪は彼を助けるために彼からあらかじめもらっていたタイムリープの薬を飲み10年後の自分の部屋にタイムリープします。そこにあった携帯を手に元の現場に戻りその携帯を適当にいじっていると、生き埋めになった園田少年の持っていた機械が反応し園田少年は救出されます。この辺りにもかなり突っ込み所はあるのですがもうそこはいちいち気にはしていられないでしょう。
1992年の世界から10年後の2002年の世界に飛び携帯を持ち帰ったこのことによって、歴史の因果がある意味変わってしまったわけです。それを正すにはどうしたらいいか。それは2002年になるまで待ってその携帯を元の場所に置くということです。彼女は携帯を大事に保管して10年経つの待ちました。10年前の自分がその携帯を取りに来るのを。ところが10年前の自分は一向に現れません。携帯はそのままです。これはおかしい、もしかすると歴史がその後変わってしまっていたのかもしれない。 一体何が起こったのでしょうか。発端はこういう感じです。そしてその後彼女の周りには奇妙で不可思議な様々な事件が起こります。園田少年が未来の世界から探しに来たという本も、非常に重要なこの物語の要素となっていると思います。細かいことは言えませんが、とにかく時間が行ったり来たりしてなかなか理解できないです。全体的な印象としたら面白かったと思いますが、タイムリープものは非常に頭を使わされるので疲れます。白河三兎という作家の「もしもし還る」という作品もそうでした。あれもこんがらがってよくわけのわからない作品でした。お読みになっていない方がいらっしゃれば読んでみてもらいたいと思います。未だに私は理解できていません。このリライトという作品には後になって続編がいくつか書かれているようですが、今のところ私は全く読んでいませんもちろん。機会があれば読みたいと思います。全部読むことによってもしかするとこの最初のリライトという作品の内容をより理解できるかもしれない、そのような期待があるからです。

作品に関してはこれ以上語れないのですが、タイムリープというものに関して私はちょっと昔から疑問を持っております。というのはタイムリープ自体はもちろんまずありえないものだという風に思いますが、仮にあったと仮定してもなぜタイムリープをする人間は時空から切り離されているのでしょうか。これがよく分からないんですよね。タイムリープをして昔に帰れば自分も歳が若くなって生まれる前に戻って自分は消えてしまわないのか。そこが不思議でならないんですよ。タイムマシーンでスイッチを入れて過去に戻ったらスイッチを入れる前に戻らないんでしょうか。タイムマシーンの内部だけは時空から切り離されてしまっているのでしょうか。タイムスリップをする時にはなぜ裸ではないんでしょうか。着ている衣服まで一緒にタイムリープしてしまうのは一体どういうわけなのか、不思議でしょうがありません。衣服は身体に接触しているからということでしょうか。であるならば、靴の下にある地面も体に接触していますから土の塊も一緒にリープしてしまうのか、よく分かりませんね。この辺のところを分かっている方がいれば聞いてみたいものだと思っております。

もう一つ付け加えるとタイムリープをした場合リープをした先の状況がどうなのかということですよね。もしリープをしたその先が海底だったらどうなんでしょうか。あるいは地面の中だったらどうなんでしょうか。リープをした瞬間にその人は死んでしまいますよね。それを防ぐにはどうしたらいいのかと言うと例えばロボットを先に行かせるとか、そういうのがあるでしょう。非常にめんどくさいなという感じはします。タイムリープ先がどんなところかそれを事前に確かめないと生命の安全は保障されないと思います。例えば10年後の同じ場所に何か別の建物が建っていたとしてその壁の中に現れたとしたらその壁に押しつぶされてすぐ死んでしまいますよね。その辺の疑問を分かっている方に解説していただきたいなという気がします。

タイムリープというのはパラドックスというものを非常にはらんでいるものですから、いくらでも小説が書けてしまいます。ただそれには相当な実力というものが必要になると思います。これまでも、数多くのタイムリープものが書かれてまいりましたが、初期のものは非常に単純でわかりやすかったのでそれなりに面白かったのですが、今書かれているようなタイムリープものは複雑さが増しており、なかなか理解しづらい楽しみづらいものになっています。そこをもっとわかりやすく説明することがこれからのタイムリープものの作者に求められることではないでしょうか。書いてる本人が分かっているだけではだめです。読者が簡単に理解できるようなものを期待したいと思います。
リライト (ハヤカワ文庫JA)
法条遙リライト についてのレビュー
No.1:
(8pt)
【ネタバレかも!?】 (2件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

忘れてはいけない歴史がここにある

非常に残酷な過去の歴史があった、そのことに目を背けて生きていくことは非常に楽かもしれませんが、やはり見逃してはいけない歴史というものがあります。その一つがこの作品で描かれているハンセン病なのではないでしょうか。ハンセン病が他人に伝染する可能性は全くないということが今の医学ではわかっており、治療する方法も確立されているということです。それにもかかわらず戦前から戦後にかけてまでは彼らは差別の対象とされ療養所と称する場所に隔離されてしまう、これが国策として行われていたという事にまずは驚かされてしまいます。この作品はルポルタージュを得意とする石井光太という作家が書いた初めての小説だそうです。この作品の舞台は四国は香川県の高松市にある雲岡という田舎の小さな村での話です。この閉鎖的な村においてハンセン病患者もまた非常で過酷な差別の対象でありました。ハンセン病患者たちは寺に十数人人がまとまって住み、世の中から隠れるようにして生きていました。この中のに乙彦というハンセン病ではない少年が、あるきっかけで紛れ込んで来ます。そこから始まる極めて残虐非道な差別と暴力の世界、見方によってはグロいというふうに思われる方も居るでしょう。この本の批評などを見ると一般の読者は、やりすぎなのではないかこういう風に思っている人が多いようです。しかしどうでしょうか。逆にタンパクに書いていればこんなものじゃないよ現実はという批判がくるでしょう。私個人の感想で言うならば現実はもっとひどかったと思っています。ここに書いてあることですが相当ひどいです。目を背けたくなるような描写がかなり出てきます。物語の舞台となったのは昭和27年頃です。そこから約60年の時を経て、かつてこの寺に住んでいた乙彦に殺人の疑惑をかけられます。乙彦はこの60年の間に血反吐を吐くようなものすごい努力をして事業家として成功して、都議になり人権問題に取り組むいわば叩き上げの人物でした。この乙彦がなぜ殺人の疑惑をかけられたのか、その根本は60年前のあの村での生活にあったのです。物語は60年前と現在と交互に描くという形で構成されています。物語の中心にあるのはこの乙彦の息子、彼は医者です。彼は医者であることに対して非常に心の中で葛藤を抱えています。なぜなら彼を医者にしたのは父親乙彦だったからです。乙彦は子供の頃ハンセン病患者を見てきたその思いから何としても息子を医者にしたかったのです。果たして父親は殺人を犯したのか。そしてその被害者は乙彦たちを苦しめた村人の中の二人であったのです。既に彼らは90歳の齢を迎えていました。動機は十分あります。しかしさらに重要な人物がこの事件の中にはいます。それは60年前に乙彦たちと一緒に暮らしていたハンセン病の少女小春です。この小春は果たしてその後生きているのかいないのか、 それはこの本の結末を読んでいただければわかると思いますが、この少女の存在というものが非常にこの物語の中では大きい位置を占めています。ある意味この物語の中心的な人物は子の小春ではないでしょうか。そして最後に明かされる大きな秘密、その部分はネタバレになるのでここでは書けませんが、いずれにしても一人でも多くの人に読んでいただきたい作品だと思います。この物語の中で小春がつぶやく一つの言葉があります。「そうよ生きちゃいけなかったのよ。らい病ってのはこの世でのうのうと生きちゃいけない存在なの。」非常に心にグサリと突き刺さる言葉です。この言葉が少女の口から出てくるほど厳しい時代だったということがよくお分かりだと思います。ほんの60年前の話です。60年と言うと長いように思えますが、長い歴史の中ではつい昨日のような話です。 多くのハンセン病患者を苦しめてきた、らい予防法、この悪法が1996年に廃止されるまで、続いてきたということに驚きを禁じえません。ほんの少し前までこのような差別的な法律が存在してきた。そしてさらに大きな問題は決してハンセン病は終わったというものではないのです。裁判で賠償を受けた人以外にも数え切れないほどの患者がいるのです。また裁判に勝ったからといって、それまで受けてきた差別や苦しみは回復されるものではありません。我々はこの長い差別の歴史を絶対に忘れてはいけないと思います。そしてこれから明るい未来をつくるためにこの教訓を生かして行くべきだと思っています。それとこの物語で使われているセリフ、これが共通語なのを読者の中には批判をする人がいます。たしかに香川県の田舎で使われている言葉がなぜか共通語というのには、違和感を覚えることは事実です。しかしとはいっても完全に地元の方言で書いてしまったのでは読者のほとんどは理解できないのではないでしょうか。だからその違和感をがあったとしてもあくまでも多くの人がより理解しやすいということを優先して、作者は共通語を使ったと思います。 NHKの大河ドラマでもだいたい出てくる言葉は共通語です。それは仕方のない話だと思います。方言だと誰も分からないですから、その地方以外の人達は。ここはしょうがないと思います。


蛍の森 (新潮文庫)
石井光太蛍の森 についてのレビュー


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