永遠の0
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永遠の0の評価:
3.96/5点 レビュー 2,077件。 S ランク
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未読の方はご注意ください
全4,096件 1,081〜1,100 55/205ページ
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
要するに、語り手と聞き手を設定して、話し言葉で分かりやすく解説するやつです。いわゆる「対話編」形式で、これはプラトン以来、プロパガンダの手法として広く採用されてきました。
日中戦争や太平洋戦争に詳しくない方や、私みたいに兵器に疎い者には、歴史や兵器に関するさらっとした解説として分かりやすくていいかもしれません(というわけで★2つ)。ただ、小説としては、読むに堪えません。人物描写が平板すぎるし、特攻隊員や海軍のパイロットを美化しようとするあまりに、その場その場でご都合主義的なセリフを登場人物に吐かせたい意図が見え見えです。
著者が小説を通して主張したいことは以下のように要約できるでしょう。
1 軍の指導層は最悪。だが、現場はよくやった。
2 誰も好き好んで特攻に出撃したわけではない。「行きたくなかった」が海軍に行かされたのだ。
3 しかし、特攻出撃を(実質)命令された者たちは、苦しみ葛藤しながらも、「愛する者を守れるなら」と最後は受け入れ、笑顔で出撃した。
4 希望のない特攻(やその他の戦闘)を「文句ひとつ言わずに」やり遂げたもの達は、立派だ。
よくある「特攻は悪か」という問いは、あまり意味がありません。著者のように、「作戦(を立てた指導層)」と「実行(した兵士)」をわけて論ずる向きからは、「その場合の”特攻”って何を指しているの?」と返されるだけです。
著者は徹底して指導層を貶め、現場の兵士を持ち上げたい。ここに、無理が生じます。
現場の兵士を持ち上げるためには、彼らが愚か極まりない特攻に進んで参加したことにはできない。だから、強制された、と言う(兵士は、状況の被害者)。
他方、単に強制された被害者であるだけでは「立派」とはいえませんから、どこかで兵士の強い意志を描かなければならない。
ゆえに、愛する者のために笑顔で自己の役割を引き受けた、と言う(兵士は、積極的な行動者)。
しかし、もし仮に、そういうことが本当に起こったのだとしても、そこからは、特攻に参加せざるをえない状況に追い込まれた者が、いかに異様な態度を取ることになるか、という人間心理こそが導かれるはずです。「自ら積極的に役割を引き受ける」という態度を取らなければ「耐えられないほどに追い込まれた」のではないか、という疑念を抱けないような人間にまともな小説が書けるとは思えません。とはいえ、そもそも著者が特攻隊員について、きちんと取材をしたという保証はどこにもないんですけどね。
他にもツッコミどころは満載。重要なところだけ書きます。
特攻とテロは違う、と著者は登場人物に語らせます。自爆テロは狂信者のなせるわざだと。端的に言って自爆テロに関する偏見に満ちています。自爆テロは、特攻と同じです。標的が市民であるか否かは関係がありません。市民を標的にするななどというのは、それでも相手を制圧できる算段のつく強者の論理ですし、そもそも市民を巻き込まない戦争なんてありません。理不尽に自分の身内を殺された者が、やむにやまれぬ抵抗の手段として自爆テロを選ぶのであれば、それは特攻や他の戦争行為となんら変わりがないはずです。
著者は登場人物の一人に、軍隊を暴走させたのは国民を煽った当時のメディアだと主張させます。もちろんメディアの責任も問われるべきですが、戦争を実際に遂行するのは、軍隊や国民自身なのですから、メディアだけにその責任をなすりつけるのはおかしな話です。
また、元特攻要員(特攻隊員の候補者)であった人物には、特攻隊員達が、最終的に笑って飛び立って行くまでに味わった苦しみや葛藤を想像できないものに、彼らのことを語る資格はない、と言わせます。こういう論法で、この人物は、特攻隊員についてあれこれいう新聞記者を批判するのです。しかし、その論法で言えば、著者たる百田氏には特攻隊員を語る資格はそもそもあるのでしょうか?それとも特攻隊員を批判するのはダメだけど、「立派だ」と言うのはいいってことなんでしょうか?
結局、小説は、ステレオタイプな無知で生ぬるい現代人たる主人公姉弟が、特攻隊員達に話を聞いていき、その過程でステレオタイプな新聞記者が特攻隊員に論破され、皆が皆、ステレオタイプな「立派な」男たちの集団である海軍の中でも、とりわけ優秀な「スーパーマン」たる祖父の物語に感動した主人公たちが心を入れ替えて新たな人生の一歩を踏み出すところで終わります。
なんだかやたらと「感動した」という声が聞かれるこの小説ですが、正直、こんな安直な書きぶりの小説に対して、どうやって感動したらいいんだかさっぱり分かりません。