ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編
評判
ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編の評価:
4.13/5点 レビュー 176件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全134件 61〜80 4/7ページ
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ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編の評価:
4.13/5点 レビュー 176件。 B ランク
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この作者の得意わざである、「僕」による一人称小説。処女作「風の歌を聴け」以来、この「僕」はあまり年老いることができない。そして、この「僕」はいつまでたっても春樹的モラルの体現者である。春樹的モラルとは、例えば、
1.窮地に陥っても、いつも気の利いたセリフを言う。
2.健康な性欲の持ち主だが、お金で女性をを買ったりはしない。(私もそうだ)
3.保守的で、何故かすでに出来上がっている自分の価値観(それが春樹的モラルだ)から一歩も出ない。
4.その守るべき自己(価値観)を脅かす外敵(それが一つの悪であろう)とは、決然と戦う。
5.いつもスパゲティは自分で茹でる。(私もそうだ)
などが、思い付くままに挙げられる。村上春樹は昔ながらの私小説の書き手ではない、と信じられているから、「僕」が現実の春樹氏とシンクロして年令を増していく必要などないが、それにしても、永遠に青春小説を書くのはつらいから、ついにノンフィクションにも手を染めたのか、なんて憎まれ口はさておき、ねじまき鳥と「アンダーグラウンド」では、人間性のもたらし得る悪を、まともに表側から、もちろん春樹式レトリックによって(それ意外に何ができる)描こうとした。
この人はもともと、生々しいものや、どろどろしたもの、重苦しいもの等について、それらに直接触れることを好まず、その痕跡や、それがかつてそこにあったことを伝える余韻のみを、言わば、本体が抜け出たあとの窪みを、スマートに描いて見せることで際立った小説家であったのだ。でもこれからは、どぎつく描いちゃうんだもんね。例えば、小説の末尾近くになって、「皮剥ぎボリス」という綽名が示される赤軍少佐。私は、このロシア人が日本軍間諜の生皮を剥ぐシーンを都営地下鉄三田線の車中で読んで、以後一週間ほど、飯も喉を通らず、夜はうなされて眠れなかった。文字通り悪魔の化身。悪魔の化身の悪魔ぶりがくっきりと描かれた。なんじゃこりゃあ。村上春樹の本を読んでこんな思いをするとは。何と生々しい表現の力。ただし、この「悪」は「ぼく」の身じかにあったわけではなく、その悪の化身によって踏み付けにされ、人生の中身を奪い取られてしまったような経歴をもつ老人の回想として小説中で示されるに過ぎない。すでに存在感の希薄な老人の語る「悪」に圧倒的な存在感が付与されているのは何故なのか。一方、「僕」に具体的な困難を及ぼした張本人とされるワタヤノボルとその悪は、あくまで抽象的、また遠隔的なものだ。
それにしても、今さら何ゆえ「悪」などに着眼したのか。