十角館の殺人
評判
十角館の殺人の評価:
3.75/5点 レビュー 763件。 S ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1,460件 1,021〜1,040 52/73ページ
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十角館の殺人の評価:
3.75/5点 レビュー 763件。 S ランク
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129ページから130ページの記述は、非常にアンフェアである。著者が意図的に読者の推理を妨害している個所である。ミステリ研の面々は、その場面で槍玉に挙がった登場人物以外にも、他のもう一人の登場人物も槍玉にあげなければいけなかった。そうしないと、島にいる犯人が有している技能とのつじつまが合わなくなってしまう。しかし、実際の作中の記述で、槍玉にあげられたのは登場人物の内の一人のみ。私には、その場面の少し前のページを読んだ読者の推理を妨害しておかないと犯人を当てられてしまうから、不自然な記述をせざるを得なかったという著者の都合が透けて見えるように感じられた。だから第三章の冒頭以降に登場している小道具は取り除いたほうが作品の完成度は高くなっただろう。しかし新装改訂版の出版のさいに著者がその小道具を消さなかったのは、ミスを認めたうえであえて改変しないという誠実さの表れだろう。
第九章のはじめより少し経過した場面での、ある登場人物の行動及び内面描写も著者から読者への妨害である。この箇所も書き直しておかないと叙述トリックが破綻してしまう箇所である。しかし、やはり綾辻行人は新装改訂版でも、その問題のある部分の書き直しはしていない。もちろん、それもあえて破綻部分を残すという決断だったのだろう。
私が見つけることができたのは、以上二つの問題点である。叙述トリックを用いているはずの『十角館の殺人』には、明らかな破綻がある。私には、それでもなお作品全体が台無しになっているとも思えなかった。『十角館の殺人』は一つの叙述トリックによってのみ成立している作品ではないのである。作中の十角館で現在進行している殺人事件、過去に起きた青屋敷での殺人事件、中村千織出生にまつわる秘密という複数の謎が解き明かされていくという物語の流れや構成に魅力があり、少々の破綻は打ち消されるのだろう。
中村千織出生にまつわる秘密の真相と青屋敷での殺人という二つの謎も、それぞれ個別にみれば陳腐な物語にすぎないとも言える。
だから複数の事件や謎にまつわる情報が探偵役の島田潔に行き着き謎が解けるという作品の流れそのものに魅力があるのだろう。『十角館の殺人』は一つの叙述トリックによってのみ成立している作品ではないのである。
視点を島田潔からの視点に固定し、島田潔からの内面描写を極力しないようにすれば、映像化も可能かもしれない。島や過去の出来事については伝聞という形式で映像にすればいい。
私は、館シリーズが、エドガー・アラン・ポー、エラリー・クイーン、ガストン・ルルー、S・S・ヴァン=ダイン、ジョン・ディクスン・カー、バロネス・オルツィ、アガサ・クリスティの作品へのオマージュになっているような気がした。しかし、私には探偵小説の教養がないので検証はできない。探偵小説の教養がある人なら最終作が誰の作品のオマージュであるか言い当てることも言い当てることもできるのかもしれない。