君の膵臓をたべたい
評判
君の膵臓をたべたいの評価:
3.62/5点 レビュー 1,110件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1,153件 961〜980 49/58ページ
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君の膵臓をたべたいの評価:
3.62/5点 レビュー 1,110件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
余命1年を宣告された少女と、他人との関わりを断って生きてきた少年の、瑞々しい成長物語。
始めに断っておきます。
この作品は純愛小説ではありません。
ラノベでもありません。
純文学でもありません。
「いずれ必ず訪れる死」というものをキーにした、少年少女の『成長』物語というのが私の中では一番しっくりきます。
なので、上記のいずれかの類型作品を想定して読んでしまうと、期待外れとか、思ってたのと違うとか、そういう感想を持ってしまう可能性もあります。
この作品の根っ子は、何度も言うように『成長』だと私は考えます。
誰しも、青少年期の人間関係は自分の価値観の形成あるいは変化と直結します。
人間関係がきっかけで自分が成長する、ということは誰もが経験のあることでしょう。
この作品は、まさにこの点について、鮮烈な言語表現と緻密な心理描写で描き切った著者の力作です。
だから、この作品の対象年齢というか、読んで欲しい年齢層としては10代前半〜後半の若者になるかと。
その年代の人たちに、こういう人間関係を築くことによって、また、「必ず訪れる死」を見つめることによって、人間的な(つまりは精神的な)成長や価値観の変化を遂げて欲しいという、著者の思惑が伝わってきます。
しかし、対象年齢を10代としながらも、その描写の隅々までを理解するには、文章に真摯に向き合うことが必要です。
例えば、P215。
”そうか、今、気がついた。誰も、僕すらも本当は草舟なんかじゃない。流されるのも流されないのも、僕らは選べる”
この表現には、今まで自分のことを「流れに身をまかせる草舟」だと散々言ってきた主人公が、それまでの自己の価値観を否定して新たな価値観の世界へ漕ぎ出していく様がこれでもかと詰め込まれていて、初めて読んだ時には鳥肌が立ちました。
これに気づくためには、それまでの主人公の心理をしっかりと把握しておく必要があります。
また、Amazonやそれ以外のレビューで度々目にする『【?????】くん』について。
この表現について、「この書き方の理由がわからない」「本文内で何の説明もなかった」といった批判的な評価が大多数です。
ですが、実際はこの表現も主人公の成長と直結しています。
まず、これは主人公が「相手が自分のことをどんな人物だと思っているのか想像するのが趣味」という価値観に基づいて、自分の名前を呼ばれる際に、「相手が自分に対して思っている人物像」を当てはめているわけです。
いわゆる、全ての人間関係を自己完結させる主人公ならではの、超自己完結型の表現です。
だから、咲良に襲いかかった後に、咲良が主人公のことを【ひどいクラスメイト】くんと呼んでいるのは、咲良が実際にそう思っているわけではなく、主人公が「きっと咲良はそう思っているだろう」というのを当てはめているわけです。
終盤の【?????】くんについては、咲良が自分のことをどう思っているのかわからない、主人公の心のブレなわけです。これが成長の1ステップ。
そして、最後の最後、恭子とお墓まいりに行くシーンで恭子が「◯◯くん」としっかり主人公の名前を呼んでいます。(さすがに本名は伏字にさせていただきます)
これは、主人公が人間関係を自己完結させることを辞め、きちんと他人と向き合っていくことを誓ったからこその表現の変化、すなわち成長です。この成長も咲良という女の子と出会ったからこそもたらされたものであり、文章をきちんと読み解けば感動を持って迎え入れることができます。
「わかりにくい!」という方もいるかもしれません。が、この本は終始主人公の一人称(視点)によって描かれています。つまり、主人公が相手の言葉をどのように受け止めたか、それそのものが文章に描かれるべきです。だから、【ひどいクラスメイト】くんも、【?????】くんも、◯◯くんも、一般的な文章のルールとしてはきっちり守られた上で描かれています。
このように、細かい文章の仕掛けを読み解くには受け手側の読解力も要求されます。その点において、仮にこの作品を10代以下で読んだ方は、20代、30代になって読むとまた新たな発見があることでしょう。
また、いい大人の皆様は、わからないものを安易に批判するレビューは、自分の受信用アンテナの低さをひけらかしてしまう上に無粋なので、やめましょう。
私個人の感覚としては、この作品は全体を通して素晴らしいと思います。
ただ一点残念だったのが、通り魔の話が出てきた最初の時点で、咲良の死の理由が読めてしまったこと。
自分が著者だとして、彼女の死にリアリティを保ちつつ意外性をもたせるならどういう展開にするかと考えた時に、出てきた一番安直なパターンと合致してしまいました。
なので星4。
ですが、上記の通り、主人公の心の移り変わりを表現した文章の鮮烈さ、瑞々しさは目を瞠るものがあり、オチがわかっていてももう一度読み直したいと思える作品です。