十字架

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評判

十字架の評価:

4.07/5点 レビュー 75件。 B ランク

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平均点4.07pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全110件 61〜80 4/6ページ
No.50
(5pt)

いじめられた立場から

人間の生々しい本性の発現である「いじめ」が無くなることは、無いのだろうと思いますが、それでも「いじめは人権侵害であり、やってはいけない」と主張しなければならないと思います。

重松清さんの著書は「ビタミンF」「流星ワゴン」に続き3冊目になりますが、電車内の中吊り広告を見た瞬間に「読みたい」「読まなければならない」という思いを半分ずつもって、書店で購入しました。

いじめにより自殺したフジシュン、いじめっ子にいじめられることよりも、学校側が卒業アルバムにフジシュンの写真を掲載せず、フジシュンが最初から存在しないこととされた描写に、学校組織の冷酷さとフジシュンが踏みにじられたことに、深い憤りを覚えました。私にとっては、この「人間を消す」行為は、アウシュビッツのユダヤ人大虐殺と同じ残酷さを感じました。フジシュンにも当然に愛される価値があるのにもかかわらず。

いじめられた経験から、私はどうしてもフジシュンに感情移入してしまうのですが、フジシュンにとってユウくんとサユちゃんは最後でかつ人生最高の拠り所であり、大切な人であったと思うのです。たとえそれが一方的なものであっても。だからこそ、ユウくんとサユちゃんにとってはそれが「十字架」になるのですが、二人がそれぞれの人生において、「十字架」と格闘し、葛藤し、押しつぶされそうになり、共存していく過程が、繊細な筆致で描写されており、最後の章では涙が出ました。

まだ一読しただけでの感想ですが、もう一度読むつもりですし、私は、いじめによる心の傷はいまだ癒えずとも生き残った人間として、生きてこの苛烈な社会(大人社会にもいじめはありますから)で闘い、時代の証人のひとりとして、いじめはいけないということを主張し続けなければならないと決意を新たにしました。

日本人全員に読んで頂きたい本のひとつです。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.49
(5pt)

感想になってないかもしれないが・・・

読んでいる途中は、「このことをレビューに書こう」とか考えてたりもしたのだけれど、いざ各段階になって綺麗に忘れてしまっていた。
 これはその時にメモなどを取っていなかったからだと反省しているが、読み終えて一番最初に思ったことを書いておく。

 どんなに哀しいことも、嬉しいことも必ず過去になるし、多くのことは忘れてしまうか記憶の色はどんどん薄くなっていく。
 これは避けられないことだし、仕方のないことだ。
 でも、過去におきたその事実はなくならない。
 それを記憶から綺麗になくしてしまうことはよくないことだと、読み終えて強く感じている。

 だから自分はこれからも読んだり観た本や映画のレビューはもちろんのこと、さいきんまた書き始めた日記も書き続けていこうと思う。
 それは自分のためでもあるし、この本を読んだ人間の使命だと思う。

 誰とは言わず全ての人に読んでほしい。
 そして考えてほしい。
 自分がどの立場にいるのかということを。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.48
(5pt)

“僕”も、そして、誰もが自分のことだけしか考えていなかった。だから遺された者がそれに

1989年9月4日、フジシュンこと藤井俊介は自殺する。遺書に、彼をいじめた者とともに、「真田裕様。親友になってくれてありがとう」と名指して感謝された“僕”は戸惑う。“僕”にはフジシュンの親友であった覚えがないからである。いじめられているのを知りながら助けることもしなかった“僕”であるから。この小説は“僕”を語り手にして綴られる。もう1人「中川小百合さん。ご迷惑をおかけしまして、ごめんなさい。誕生日おめでとうございます」と書き残されたサユ。その言葉は、中学生の心に重すぎる“十字架”を背負わせる。悔恨、贖罪・・・鎮魂は・・・。“僕”、サユ、フジシュンの両親と弟。遺された者たちの20年間にわたる心の旅。作者の丁寧で迫真に満ちた鋭い記述には胸を打たれるであろう。
“僕”が最後に見いだすものは・・・ご自分でお読みになって感じてください。
Let’s feel it!
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.47
(5pt)

今、読むべき小説

中学二年でいじめを苦にして自殺した少年とその周りの人々の物語。となれば、どうしても、ここのところメディアによって連日報道されている、あの大津のいじめ自殺問題とオーバーラップしてくる。そうしたことからも、大いに今日的な意味を持った小説ではないかと思う。
著者にとっては久しぶりの書き下ろし作。それだけに、力の入れようも伝わってくる。著者らしい繊細な筆致で、同級生の視点、親の視点、マスコミの視点と、多角的な切り口から、登場人物達の心の中に切り込んでいくそのストーリー展開は実に見事で、ぐいぐいと小説の中に引き込まれていく。
辛さや重苦しさも漂う作品だが、目を背けずに最後まで読まなくならないと思わせる何かがある。それは、登場人物たちが、子供時代の自分を髣髴とさせるような、ごくありふれた普通の人々であることによるものではなかろうか。そこに等身大の自分がいるのだ。だからこそ、無視できない辛さも感じることにもなる。
辛い現実から逃避し、自分自身が負うべき責任から逃れようとする人間の性。それを、大人なるものになる過程の中で、どうとらえていくべきなのか。この点につき、深く考えさせられる作品だ。そして読者は、いつしか自分自身の過去を振り返り、忸怩たる思いにもなってしまう。
小説を読み、反省なる境地を呼び起こす。これは、小説というものに求められる大きな役割ではなかろうか。その点この小説は、十分にその目的を果たしている。
何か奇抜な仕掛けがあるわけでもないが、これぞ、読者に首肯と共感とを抱かせる、著者一流の文学手法なのであろう。
是非この小説は、いじめる側の子供達に読んでもらい、十字架という題名の意味をしっかりと噛みしめて欲しいと思う。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.46
(5pt)

最近のいじめ事件で思い出した小説

いじめは最低である。最近の痛ましいニュース。中学校で陰惨ないじめをうけ、13歳の少年が自殺した。どんな気持ちで死を選んだのか、考えると胸が張り裂けそうである。

そして思い出す、重松清の「十字架」。私が感じ取ったテーマは、「人はそれぞれの十字架を背負って歩む」。重い小説であった。にもかかわらず一気に読んでしまったのは、いじめのその後が知りたかったからであった。小学校のときのクラスメートがいじめられて自殺し、その遺書から、「親友」になってしまった少年と「ごめんなさい」と謝られた少女。彼らのその後が淡々と書かれたこの物語は、生きることとか、親にとっての子供とは、とは考えても考えても答えのでないことがらに満ちていた。
いじめる側の人に是非読んで欲しい。最近の事件でいじめの当事者となった少年たち。いまやインターネットのもとでさらし者になっている彼ら。この物語は、彼らにとっての罰ではない。それ以上に重い。彼らが、自分の背負う十字架の重さを感じるならば、だが。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.45
(4pt)

重松作品の王道、少年の成長を追う長編。

重松作品は少年を描いた作品、それも成長をしっかり追った長編がしっくり来ます。少年が大人びすぎているという批判もあるようですが、この作品に関していえば子供を持った親として回想している形式にすることで違和感を和らげています。

いじめで自殺した中学生。直接いじめを行った生徒ではなく、それをとめなかった傍観者に焦点を当てて、その後に背負って生きる日々の重みをコレでもかと描きます。

当時の中学生と雑誌記者がこんなにくっつくことがあるのか?という疑念はさておき、記者が生徒たちにぶつける言葉の数々が、この作品で著者が提起している問題そのものだろうと解釈しました。あえて言えば、主人公がオトナになってからの記述が、いかにも重松清的で、リピーターには先が見えてしまいそうなのが残念かも。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.44
(5pt)

重いけれど、読ませる

中学生がいじめに耐えかねて自殺。
遺書には、同級生4人の名前が書かれていました。
いじめの首謀者だった2人。親友。好きだった女の子。

親友の男の子が20年経って、
自分も父親になっている、その視点で描かれています。

凄い設定だなあ、と思ったのは、
この男の子、客観的には親友でもなんでもない、単なる幼馴染なのです。
だから、なぜ自殺した子が自分のことを親友と書いているのか、
よくわかっていません。
それでいて、自殺した子の父親には
「なぜ助けてくれなかったんだ」
と言われてしまう。かなり理不尽。

この、残された父親と主人公の交流が読みどころのひとつなのですが、
私も子供がいるので、ついつい父親に感情移入しながら読んでました。

主人公だけでなく、
同級生たちは皆、十字架を背負って生きていくしかない。
では、最後まで許されないのか。
それが、もうひとつの読みどころ(というと軽いなあ)なんですが、
ラスト、残された父親の行動と、
自殺した子が好きだった女の子の手紙に、
許される可能性が書かれていました。
ほっとしました。

最後の20ページほどは地下鉄の中で読んだのですが、
あやうく泣きそうでした。

重い話なのに最後まできちんと読ませるというのは、
著者である重松氏の、文章の上手さなんでしょうね
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.43
(4pt)

作者は少し子供を過大評価しすぎていないだろうか?

有名な「告白」と同時並行で読み終えた。どちらもいじめ描写がメインである。「十字架」との違いは、たった1つ。それは自責の念の有無だとおもう。「十字架」は誰もが自責の念に苦しんでおり、完全に性善説の立場をとっている。反対に「告白」は性悪説。

さて自責の念とは何か?それは自分を責める気持ちであり、そして罪を自覚していることを意味する。十字架とは「自責の念」と葛藤する登場人物を描いた物語だった。

作者は少し子供を過大評価しすぎていないだろうか?

いじめで生徒が死に、その傍観者の生徒が自責の念にかられることはまずないと思う。おそらくどの生徒たちも、携帯電話の画面を見ながら、机にかたひじをついて、「あのいじめられていた奴が自殺したんだって。やっぱりね(笑)」と笑いながら雑談するだけだとおもう。それが10代の普通の子供の姿だと思う。子供はそんなに大人ではないのだ。未完成ゆえに子供だと考える。その未完成を象徴するのが傷の少なさだ。10年足らずしか生きていないからまだ傷が少ない。憎みながらいじめる生徒などこの世にいない。笑いながらいじめるのがいじめの本質となる。子供の天性の明るさはまだ心の傷の少なさを意味し、だからこそ他人の傷みに鈍感になってしまう。しかしそれが成長するにつれて、痛みを覚え、その代償として、子供特有の天性の明るさは失われる。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.42
(4pt)

彼らが背負う十字架の重さとは

いじめにより一人の中学生が自ら命を絶った。物語は残された家族・クラスメートたちの葛藤を静かに描いていく。大きな物語上の起伏はあまりないかもしれないが、それでも読者を引き込んでいく作者の力量には感嘆せざるをえない。作品内のある人物が語る、記憶を波に例える表現は感心し、納得した。忘れたと思っていても、ふとしたきっかけで、突然それは胸に迫ってくる。波に満ち引きがあるように、人の記憶にも満ち引きがあるのだ。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.41
(5pt)

子どもが中学に上がる時に読ませたい良書

幼馴染だけど、中学に入ってそんなに遊ばなくなった同級生が自殺して、遺書には自分の名前が親友として書かれていた。

大人になってしまえば、親友 or not親友なんて考える必要がなく、それぞれに友情を持って接すればいいだけのことだけど、振り返れば僕も小学校のとき仲が良かった友達と中学ではいがみあったりしてしまったし、そのことに関しては大人になってからの同窓会で再会して打ち解けるまで心の片隅に引っかかっていた。だからとても心に染みた。

自分の子どもたちが中学に上がる前くらいに読ませたい。僕がしてしまった失敗を子どもたちにもさせてはいけない。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.40
(5pt)

子供に読ませるべき

いじめは、いけないことですよ。
 現在、子供たちが置かれている環境では、いつでも、誰でもが、被害者になり、加害者になる可能性があるように思えます。しかしながら、「いじめはいけません。」と子供に、教えても、まるでブラウン管の中のことのようで現実味がなく、いじめのその先にあるものを、親としてうまく伝えることができませんでした。
 この十字架は、私のような力なき親にとって、まさに、子供へのメッセージが凝縮されています。我が家の中学3年生女子と中学1年生男子に、今、あなた達に必要不可欠な良書だと言って薦めてみたところ、引き込まれるように二人とも読んでいます。
 この本に出会うことによって、出会う方たちによって、いじめという恐ろしい魔物を、この世からなくしてくれる気がします。私にとって、重松作品の中で、一番子供に読ませたい作品です。

  

十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.39
(4pt)

十字架

この物語では、そうともいえないのですが、
たとえ自分でもどうしようもなかったことでも、
責任を負わなくちゃならないことって、けっこうあるんだと思います。
ただ十字架の重たさにもいろいろあるとは思うのですが…。

いじめについてっていうよりは、
何かを背負って生きていくっていうことの
重たさを感じる本でした。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.38
(5pt)

日本的な十字架理解として、ハッとさせられた!

自殺。しかも、いじめによる自殺を取り上げた作品としては、秀逸なものだと思います。取り分け、誰をも恨むことができないけれど、余りの悲しみの中で、好対照な出し方をする「フジシュン」の両親の姿は、悔やんでも悔やみきれない思いを丁寧に表出していると思いました。
振り返って見ると、小学校から中学時代に同級生だった男の子が、16歳で自殺をしました。ひっそりと、葬式が営まれたので、何ヶ月も経ってから、風の便りに聞いたのでした。小学校時代は何度も足を運んだ友だち……だったと思います。でも、中学になってからは、いじめられていたのに、見て見ぬフリをした自分です。疎遠になって、高校1年の秋、静かに首を吊りました。
特に、マスコミに取り上げられることもなく時は流れました。内容を一読した時に、胸をグサッと刺されたような思いになったのです。何とも、人物描写が似通っていて、驚いた次第です。そして、ユウが感じていたことは、まさに同感、でした。
自殺の後、遺族には深い悲しみが渦巻きます。これは、事故死でも同じような事でしょう。どこかに、過失を求めたくなる心境は、これまた見事に描かれていました。思わず、教育委員会や学校長らに土下座させた北海道の事件を思い出します。
しかし、現実はその相手以上に、責めるのは自分自身であることが多いでしょう。精神を病む方も多いです。これも丁寧に描かれていて、どれも、これも、リアリティに溢れた作品だったと思います。

ただ、その中で、ハッとしたことがありました。「十字架を一生の間、背負い続けなくてはいけないのだ」というくだりです。幾度も繰り返されるフレーズです。確かに、十字架を背負う、という表現は日本語に定着しています。同時に、「背負い続けなくちゃならない」と結び付いているのです。これがキリストの受難を意味していることは分かります。そして、十字架にかけられて死に至りましたから、死ぬまで背負わなくてはならない、というのは、当たっているのです。
ところが、キリスト信仰のリアリティでは、それは半面でしかありません。つまり、死んで葬られ、3日目に復活する、というリアリティがあるからです。つまり、十字架はある一定期間背負うことがあっても、そこで成し遂げられるものがある。それは「赦し」ということです。十字架は赦しの「しるし」なのです。ということは、正確には、赦しを背負うことになるはずなのです。ですから、キリスト信仰では、十字架を背負うことは、神の前にも、人の前にも赦されたことを感謝する世界になるのです。

ところが、日本語のニュアンスにはまったくそれは表現されません。逆に、この小説では、日本語のニュアンスが上手に描かれています。
サユが泣きながら謝る場面がありました。ごめんなさい、と言えば、もう良いですよ、と赦すものです。でも、そういうことは、決して自然にできるものではありません。で、赦せないし、ユウまで積もり積もった憤りを爆発させてしまいます。そして、確かに、この二人の人生には、重荷としての十字架が、深くのしかかってしまうのです。
しかし、それでも憎むのはしんどいから、やめる。辛すぎるので、それでは生きていけない。でも、「赦さない」のです。取り分け、「あの人」は赦しません。赦さないので、13回忌にもちゃんと話ができません。会釈する程度で終わります。もう一人、お母さんという犠牲を出すまでは、心を開くこともできないのです。もっと言えば、ユウに「森の墓地へ一緒に行ってくれないか?」とも誘えないのです。悲しい限りです。

赦しのない十字架とは、本来は、痛みのない腹痛、に似た矛盾表現なのですが、この作品においては、その矛盾はどうもまったく意識されていないようです。確かに著者は、ラストで、白い十字架に、救いの意味合いを多少なりとも託しているのかもしれないのですが、余りにも、赦しのない十字架を背負わされた人生は、長すぎるし、辛すぎるでしょう。切なくて、涙が出ました。

そうです。ハッとしたのは、この十字架理解こそ、人生は苦と喝破した、仏教的世界観そのものだ、ということです。十字架を仏教的に理解すると、こういう理解になるのだな、と改めて印象深く受け止めた次第です。
そして、20年以上経過して、やっと思いの丈を表現する機会を得るのです。ユウは34歳になっていました。余りに長すぎる。そういう思いを抱かずにはいられませんでした。しかし、これもまた、現実であり、リアリティあるものとして受け止めました。

人は赦すと自由になれますが、赦さないと、これ程までに、自他共に人生そのものを縛り上げてしまうことになるのか、と深く感じ入る作品でした。実に、日本的といいましょうか、日本語としての十字架の持つニュアンスについても、深く考えさせられる秀逸な作品でした。「初」重松体験は、上々でした。また折を見て、別の作品も読ませて頂きます。ありがとうございました。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.37
(5pt)

ずっと読みたかったので衝動買い

実は発売当初から読みたかったのですが、古本になるまで待ってました。
しかしどうにも古本市場に出ないので、待ちくたびれて新刊で買いました。

正直いじめをテーマにした作品は見るのがつらく、苛めた側が主人公でも苛められた側が主人公でも
嫌だなぁ、と拒否反応を示してしまうのですが、本作は「いじめられた側(フジシュン)に近いけど、当事者では無い同級生」が主人公というのが非常に興味深かったです。

ずっと読みたかっただけあって、午前10時に読み始めて午後1時には読了しました。お昼ご飯食べ忘れるぐらい没頭したのは久しぶりです。

安易に希望を綴られてもぴんとこないし、かといって救いようのない結末ってのもいたためれないので、
本作のような結末が一番胸にストンと落ち着いてきます。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.36
(5pt)

重松ファンであってもなくても一読して損はない作品。

作家がどうしても書きたかったテーマを得た時、
それが重く厳しいものであっても、読者は、
引きずりこまれるように、小説の深淵へおちてゆきます。
中断出来ずに一気に読みました。

読み進めていくうち『ナイフ』や『エイジ』を書いていた頃の
重松さんが戻ってきた!と思いました。
作家自身が、泣きながら、憤りながら書いたのではないか、
という場面がいくつかあり、心を揺さぶられます。

しかし、重いテーマのみで終わらないのは
最終章に進む過程で、心の中に、美しい緑の森と
抜けるような青空と、なだらかな丘に建つ十字架の輝きが
心象風景として生まれてくること。

その風景がこの作品の‘許し’と‘救い’を読み手に伝えてきます。
自死した少年への祈りとともに。
子を持つ親として、登場人物の懊悩は他人ごとではないですが、
重松ファンであってもなくても一読して損はない作品です。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.35
(4pt)

「ナイフ」の言葉と「十字架」の言葉

いじめを苦に自殺した同級生の遺書に親友として名前を書かれた真田が、その「死」を背負いながら悩み、苦しみ、ときには忘れながら生きていく物語。
本書に描かれている「ひとを責める言葉」の話が印象に残った。ひとを責める言葉には「ナイフ」の言葉と「十字架」の言葉がある。ナイフの言葉は胸に突き刺さる痛い言葉だが、痛いのは刺された瞬間。十字架の言葉は背負ったまま歩き続けなくてはいけない。生きている限りその言葉を背負い続けなければいけない。
「いじめ」というと子供がやる幼いものと考えてしまうのだが、ひとが死んでしまうほど大きな問題を幼い子供が犯す間違いで済ませられる話ではないという考え方も共感できた。一生背負って生きていかなければならないほど大きな問題だからこそ、間違いが起こる前に悩み、考え、励ましながら解決していかなければならないと思う。自分が親になったときに改めて読み返したい一冊である。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.34
(4pt)

子を思う親の気持ちが全編に流れる⇒泣けます

個人と社会のあり方を考えさせられ、かつ自分が未熟だったが故に
失敗が多い青春時代思い出し、胸がキューンとする内容で、
内容は暗いのですが、なぜか心の隙間を清涼感で埋めてくれるよう
なストーリーです、これは重松清さんの作品全般に言えることですが。

自殺した子供とその両親、遺書に書かれた悪者2人と良者2人
の関係性の中で、子を思う親の気持ち、またそれが社会(クラスメート・
親・新聞記者)の中でどう捉えられていくかという話。

物語の中で、色んな立場の人たちが出てきますが、自分はどう
だろうと考えさせられます。又、普遍的な子を思う親の気持ちが
随所に出てきて、泣けます。心が乾いているかたは是非お奨めです。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.33
(5pt)

辛い本だがみんな読むべき

前に読んだ「ヘヴン」がいじめの話で、この十字架もいじめの話なのだが、今までこのような視点で書かれた小説はあるのか?と言う感じの内容になっている。

ヘヴンに出てきたような凄惨ないじめのシーンはほとんどなく、そのいじめられた中2の遺書に残された4人の人生と残された家族がテーマになっている。

4人のうちの一人は勝手に親友と思われていて、「親友でいてくれてありがとう」とか書かれていたので、相手の親から「どうして親友なら止めてくれなかった」と逆恨みされる。

もう一人は、勝手に片思いされていて、「好きになってごめんなさい」とか書かれていたので、これまた後々ものすごい事になる。

あとの二人は、いじめていた奴。「絶対に許さない」などと書かれていたため、回りからマスコミからものすごい攻撃を受けて、これまたすごい人生を送ることになる。

しかもいじめていたのは3人で、遺書に書かれなかった男とその二人のいざこざとかもあり、目が離せない。

この自殺は当然マスコミも注目して報道し、新聞以外の今で言えば新潮45的な雑誌が毎回特集を組み、「いけにえ自殺」「見殺し学級」などの言葉でクラス全体も全国から非難される。

葬式の時のやり取り、卒業式のやり取り、高校に行ってから大学にいってから…と延々20年くらいの人生をそれぞれの遺書に書かれた人間が描かれていて、もうやりきれない思いでいっぱい。しかし実際にそのような事件が起きたら、それに変わった人間はこのように生きるしかないのだろうと納得させる淡々とした筆力と感情。

この本はまず子供を持つ親、学校の先生、教育委員会のお偉いさんなど子供に関わっている日とすべてが読んでもいい本だろう。あと実際に子供たちにも読んで欲しい。間違いを起こすとこんな風な人生になるのだよ…とわかって欲しい。

しかし辛い本でした。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.32
(4pt)

読み応えがありました!

中学二年でいじめを苦に自殺した「フジシュン」こと藤井俊介、
遺書には四人の同級生の名前が書かれていた。

その内の二人はイジメていた中心人物

一人は片思いしていた彼女、そしてもう一人がこの本の主人公となる「ユウ」こと真田裕、
「親友」とは認識していないのに関わらず遺書には親友と書かれてしまう…

「イジメ」がテーマだけあって終始丁寧な文章で綴られていました。
ノンフィクションかと思えるくらい人物描写が巧みで脳内映像と共に
感情移入しながら最後まで一気に読めます。

イジメに遭った本人、イジメていた仲間、見て見ぬ振りをした同級生達、彼女、親友と記されたユウ、
残された家族、それぞれの思いが正直な感情と共に切なく伝わって来ます。

特に母親と「あのひと」と表現される父親の苦悩は痛いほど伝わって来て胸が痛かったです。

いつの時代にもイジメは必ずありますが、基本根絶に向かう様に自分も含め
大人も子供も心に優しさや正義を持って生きて行きたいと思いました。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392
No.31
(5pt)

真摯に生きる人々の肖像

重松清さんの著作を読むのは「流星ワゴン」に続き2作目です。
前作同様、タイトルと帯に惹かれて、本作を手に取りました。

この作品の内容を一言で表現すると、「いじめを苦に自殺をした一人の少年」の周囲にいた人々(または、強制的に関わりをもたせられた人々)が、どのように死と生を背負っていくのかを、丁寧な心理描写で綴る物語、です。

本作を、暗いとか、重いとか、感じる方もいらっしゃるだろうと思いますが、私にとっては、生き続けてゆく人々の姿を、夢や希望で塗り込めて虚像にするのではなく、水平の目線で真摯に愛情を込めて描いた良作だと思えました。
また、最終的には、読み手が前向きに生きてゆく力を得られるように、配慮されている作品だとも思えました。

網のような人間関係のなかに、ぽっかりと空いた穴は、決して埋められることはないのだという事実を、改めて思いました。

小説を読んで涙することは時々ありますが、嗚咽が漏れて最後のページを閉じられなかった作品は、本作が初めてでした。

初めてレビューを書く気持ちにさせられた作品でもありました。
10代前半の頃に、読んでみたかったとも、思いました。
十字架 (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 十字架 (100周年書き下ろし)より
4062159392