■スポンサードリンク


バビロン空中庭園の殺人



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

バビロン空中庭園の殺人の評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

なんか理不尽を感じるが

さて最近ミステリ作家というよりもミステリ評論家としての活動の方が忙しい小森健太朗氏の作品を初めて読んだ。
曰くつきの作品『ローウェル城の密室』で史上最年少16歳での乱歩賞ノミネートのこの作家がどんな作品を書くのか、非常に興味があったわけだが、本作は私が呼ぶところのキヨスクミステリであり、出張中の車内で読み終わるような軽い内容である。

主人公は作者と同姓の小森で女性名を使った覆面ミステリ作家(?)である。その彼が出版社のパーティーでミステリアスな雰囲気を持った探偵星野君江と出逢い、溝畑という編集者に原稿の督促を受け、それがもとで殺人事件に巻き込まれるという物。
本作で扱われているバビロンの空中庭園から消失した王女の謎だが、これはこれで歴史上のミステリの真相を探る面白みがあるわけで、これに現代で起きた同様の事件を絡ませた着想は買えるが、やはり最後に明かされる作者の推理は読者の期待を裏切るほど小粒な内容だったと正直云わざるを得ない。

舞台を出版業界、大学(当時東大教育学部博士課程に在籍中とある)と、作者の周辺の環境を扱った内容であり、また本作のテーマとなっているバビロンの空中庭園及びセミラミス王女の消失事件も作者自身の趣味で調べている内容であろうことから、なんともやっつけ仕事のような気がせんでもない。作中、主人公の言葉を借りて書下ろしと雑誌連載では原稿料も違い、連載の方がはるかに実入りがいいとの記述があるが、これなぞ本作が書下ろし作品である事からも作者が自分が元々知っている内容とトリックのストックを1つ使って1本仕上げました、そんなお手軽感が拭えないのだ。

御大島田荘司氏も云っていたが、やはり作家という物は押並べて文筆業一本で生計を立てられているわけではなく、裕福な暮らしをしているのはほんの一握りの作家に過ぎなく、売れるためには量産を強いられるのは止むを得ない。島田氏も路線を変更して吉敷シリーズといった日頃ミステリを読まない人が手に取りやすいトラベルミステリにも手を出したわけだが、それでも彼の作品には単なる謎解きパズル小説に終わらないケレン味があり、登場人物たちには血肉が通っていたように思う。だからこそ吉敷竹史という主人公は御手洗潔と双璧を成すキャラクターになったのだと思う。

まあ、ともあれこれ1作で小森氏の作家としての本質を判断するのは早計であると私も認める。これから彼の諸作を読むことで見極めていこう。


▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!