近くで女の悲鳴が聞こえた。「人殺し!人殺し!」と叫んでいた。

世界的に活躍中の天才ヴァイオリニスト・神尾八千代は、留学先で母・貴子の心中自殺の報せを受け、帰国することになった。

花城佐紀子の姉・由記子が、遺言を残し恋人の本多昭一と失踪した。

三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎。

独自の痩身美肌法で人気の美容師・環千之介が縊死を遂げた。後を追うように、娘のユキヨが足摺岬の絶壁から投身。

愛だけがオレを狂わせる 名作『招かれざる客』の大反転劇が再び！ 真夏の工場駐車場で絞殺された元女性歌手。

笹沢ミステリ史上、一二を争う大トリックに慄け! 空前絶後の〝不在証明〟 通過する急行列車の窓から父親の転落死を目撃した 小梶鮎子。

美貌の女優・西城富士子の花婿候補は二人にしぼら れた。

タクシードライバー・夜明日出夫。

白昼・銀座交差点のド真ん中で人間が消失した。 不思議な光景を目撃した翌日、食品衛生管理官の兄は神楽坂で墜死。

経営危機の大平製作所女社長・汐見ユカにかかる 二つの殺人容疑。

裏切り者を消せ! ――組合を崩壊に追い込んだスパ イとさらにその恋人に誤認された女性が相次いで 殺され、事件は容疑者の事故死で幕を閉じる。

「ねえ…思いきって、やったらどうなの」「何をだ」「わたしを、殺すのよ」…社の常務の姪と不倫の挙句、妊娠させ、結婚を迫られる夫。

突如、舞台上で『ハムレット』の原典にないアドリ ブを口にした役者。

幸福は泡のように消え去る。夏子は絶望感に包まれ ていた。

没後20年。「木枯し紋次郎」だけじゃない、ミステリ作家の面目躍如。

ペンの暴力か? それとも正義の報道か? 美 容業界のカリスマ・環千之介の悪徳商法を暴露 したフリーライター・天知昌二郎。

示談屋の池上啓介が、東国銀行課長岡本彰一の轢き逃げ事故死に首を突っ込んだ理由は、被害者の愛娘をかつて自分の過失によって死なせた、忌しい過去への贖罪の気持ちからだった。