祓い師笹目とウツログサ
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この作家の小説は『紙屋ふじさき記念館』から読み始めて電子書籍で読めるものはほとんど読んだ。 主要なシリーズは、時系列で『ものだま探偵団』、『活版印刷三日月堂』、『菓子屋横丁月光荘』、『紙屋ふじさき記念館』、『言葉の園のお菓子番』といったものがあり、児童文学も含まれる。『言葉の園のお菓子番』がとても良かったので、新作を楽しみにしていた。 この本は、表紙とタイトルから児童文学の流れなのかなと思って買ってから少し横に置いていたのだが、読んでみれば子供向けの本ではなかった。ウツログサという妖怪めいたものが登場するのだが、それは虚な心のメタファーであって主題ではない。 短編集だが登場人物は『一度夢を見たから諦めなきゃならなくなった』と言って夢は見ないと決めてしまうような人たちだ。宿主の心のバランスが崩れるとウツログサは大きくなって宿主を飲み込んでしまうというのだが、飲み込まれて無くなってしまうことにも誘惑を感じている死に至る病に蝕まれた人たちの物語だろうか。 この作家の今までの小説でも喪失感や疎外感を抱えた主人公が多く登場したが、それでも人との関わりの中で自分の居場所を見つけていくような救いのある話が多かった。でも、この小説ではそのような解決は示されない。 そういえばLou Reedの"Dirty Blvd"という曲にも、3つ数えたら自分が消えてなくなりますように、と願う少年の話があった。普段目を背けてはいるが、世の中にはどうしようもなく報われない人生というものが、きっとあるのだと思う。 何もいいことがないのに、なんで生きていなきゃいけないんだろう、という問いに返すべき言葉が見つからない。たとえささやかであったとしても生きていれば何かしら良いことがあるものだ、と思うのも本当の気持ちなのだが、でも相手の事情も考えずに、相手の重荷を共に背負うこともしないのに、気休めのような言葉をかけることになんの意味があるのだろう。 ほしおさなえも同じ気持ちだったのかもしれない。だからこの小説では幸せな展開を描くことをしなかったのだろう。いやできなかったのか。でも、それでもがんばってほしいと伝えたい。僕には最後の話に登場する"司書"が作家と重なって見えるのだが、司書が手紙で伝えようとしたことが、ほしおさなえが言いたかったことなのではないかと思う。 ほしおさなえにはどこか教育者然と若い人たちの幸せを願っているような雰囲気があって、そういうところも好きなのだが、今回、救いを提示できなかったところに作家の誠実さを感じるようにも思う。 悪い本ではないが少し毛色が違うので、ほしおさなえのファーストチョイスとしてはおすすめしづらい。この作家の本を読み始めるなら、『活版印刷三日月堂』あたりから順番に読んで行くのが良いと思う。 | ||||
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