泥の銃弾
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
泥の銃弾の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 C ランク
泥の銃弾の総合評価:
6.67/10点 レビュー 9件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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こうした背景もあり、本作は「移民問題」をエンタメ作品に昇華しようという作者の志が感じられるものなのですが、それが作品として面白いかというと、ちょっと微妙でした。
まず、主人公の天宮の取材がトントン拍子に進みすぎて、ご都合主義に見えかねない場面がいくつもあります。都知事狙撃事件の再調査のきっかけとなるのが〈アル・ブラク〉なる男から送られてきたスマートフォンなのですが、スマホの方が主人公より活躍してんじゃない? 電話の向こうで〈アル・ブラク〉がそれとなくヒントを仄めかしたり、天宮がピンチの時に着信が入ってそれで窮地を脱したり、狙撃事件の凶器発見までお電話一本。おいおい、そういう意味で「スマート」な電話なのかよ…。
その上、取材をしたいと言えば現役の警察官も警察 OB も協力してくれて、公安の人間まで自分から天宮に接触してきて、さらっと重要情報を話す。さらには狙撃された都知事もアポ無し取材にやたらと好意的で、あげくに天宮が配信しているネットニュースの拡散までしてくれるんですよ。出会う人間がみんな重要情報を持っていて、なんか分からんけど「君は見どころのある人間だ」とか言って主人公にいろいろ喋ってくれる。
しかし一番の問題は、ジャーナリストなのに喋られた内容が正しいか否かも検証しないところです。「ガセネタ掴まされてるかも」とか素人でも考えそうなものですが、何にせよ、手がかりに足が生えてこっちに歩いてきてくれるような楽な「取材」があるもんかい。記者の仕事を作者が理解しているとは思えないんですね。あとまあ、すっごい細かいことなんですけど、主人公はいい歳なのに、相手が誰であっても一人称が「俺」というのも気になりました。社会人……。
それに、情報提供者の〈アル・ブラク〉という男の行動も慎重なのか間抜けなのかよく分からない。公安にマークされていると分かっている天宮に携帯で重要情報を伝えたりするかな? 監視カメラの遠隔操作はできるが盗聴とか尾行とかは考えないらしい。そもそもの話なんですけど、この〈アル・ブラク〉は難民コミュニティにものすごく顔がきくので、面識もない記者を手駒にするよりも信頼できる仲間に証拠集めをさせて、まとめて日本のマスコミに流したりしたほうがはやいのでは…? つまり、彼がわざわざ後ろ盾のないフリージャーナリストと繋がりを持つことのメリットが今ひとつ分からないんですね。
時事問題を題材としているだけに、こういう描写の甘さはかなり致命的に思います。ともすれば「話題狙いで時事問題に飛びついた」とも取られかねないものですから。確かに、移民問題は日本がこれから避けて通れない課題であるにも拘わらず、大多数の日本人は真摯に考えようとしていないのが実際のところです。そこに小説を通じて切り込んでいった作者の志は素晴らしいと思いますし、入念な下調べもされたのでしょう。この作品は上下巻で 800 ページを超えるもので、いい加減な気持ちでこれだけの分量を書くことはできません。それは重々分かるのですが……。ただ、一般人の「知っている」と小説家の「知っている」では、もとより期待されるレベルが違いすぎます。素人に「よく頑張った作品」なんて評価されるのはプロとしてまったく嬉しくないと思うんですよ。いずれにせよ、描き方次第ではポリティカル・フィクションの傑作にもなりえた題材だけに、非常にもったいないと感じました。