泥の銃弾
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難民の全面受け入れを開始した 2020 年に日本を舞台に、東京都知事狙撃事件の真相にフリージャーナリストの天宮が迫っていくというストーリーです。現実の日本でも在留外国人の数は過去最高を更新しつづけており(法務省統計に拠ると、2019 年 6 月現在の在留外国人数は 282 万 9416 人)、コンビニや居酒屋などで外国人(留学生も含む)と思しき店員の姿をを見かけることも珍しくありません。業種に依っては外国人労働者にすでに依存しているようなケースも見られます。それと同時に、技能実習生制度の歪な現状なども明らかになってきました。 こうした背景もあり、本作は「移民問題」をエンタメ作品に昇華しようという作者の志が感じられるものなのですが、それが作品として面白いかというと、ちょっと微妙でした。 まず、主人公の天宮の取材がトントン拍子に進みすぎて、ご都合主義に見えかねない場面がいくつもあります。都知事狙撃事件の再調査のきっかけとなるのが〈アル・ブラク〉なる男から送られてきたスマートフォンなのですが、スマホの方が主人公より活躍してんじゃない? 電話の向こうで〈アル・ブラク〉がそれとなくヒントを仄めかしたり、天宮がピンチの時に着信が入ってそれで窮地を脱したり、狙撃事件の凶器発見までお電話一本。おいおい、そういう意味で「スマート」な電話なのかよ…。 その上、取材をしたいと言えば現役の警察官も警察 OB も協力してくれて、公安の人間まで自分から天宮に接触してきて、さらっと重要情報を話す。さらには狙撃された都知事もアポ無し取材にやたらと好意的で、あげくに天宮が配信しているネットニュースの拡散までしてくれるんですよ。出会う人間がみんな重要情報を持っていて、なんか分からんけど「君は見どころのある人間だ」とか言って主人公にいろいろ喋ってくれる。 しかし一番の問題は、ジャーナリストなのに喋られた内容が正しいか否かも検証しないところです。「ガセネタ掴まされてるかも」とか素人でも考えそうなものですが、何にせよ、手がかりに足が生えてこっちに歩いてきてくれるような楽な「取材」があるもんかい。記者の仕事を作者が理解しているとは思えないんですね。あとまあ、すっごい細かいことなんですけど、主人公はいい歳なのに、相手が誰であっても一人称が「俺」というのも気になりました。社会人……。 それに、情報提供者の〈アル・ブラク〉という男の行動も慎重なのか間抜けなのかよく分からない。公安にマークされていると分かっている天宮に携帯で重要情報を伝えたりするかな? 監視カメラの遠隔操作はできるが盗聴とか尾行とかは考えないらしい。そもそもの話なんですけど、この〈アル・ブラク〉は難民コミュニティにものすごく顔がきくので、面識もない記者を手駒にするよりも信頼できる仲間に証拠集めをさせて、まとめて日本のマスコミに流したりしたほうがはやいのでは…? つまり、彼がわざわざ後ろ盾のないフリージャーナリストと繋がりを持つことのメリットが今ひとつ分からないんですね。 時事問題を題材としているだけに、こういう描写の甘さはかなり致命的に思います。ともすれば「話題狙いで時事問題に飛びついた」とも取られかねないものですから。確かに、移民問題は日本がこれから避けて通れない課題であるにも拘わらず、大多数の日本人は真摯に考えようとしていないのが実際のところです。そこに小説を通じて切り込んでいった作者の志は素晴らしいと思いますし、入念な下調べもされたのでしょう。この作品は上下巻で 800 ページを超えるもので、いい加減な気持ちでこれだけの分量を書くことはできません。それは重々分かるのですが……。ただ、一般人の「知っている」と小説家の「知っている」では、もとより期待されるレベルが違いすぎます。素人に「よく頑張った作品」なんて評価されるのはプロとしてまったく嬉しくないと思うんですよ。いずれにせよ、描き方次第ではポリティカル・フィクションの傑作にもなりえた題材だけに、非常にもったいないと感じました。 | ||||
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「テロ」「難民」「メディア」を軸に、近々未来の日本を描いた野心作。面白かった。 | ||||
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元新聞記者を主人公に、サスペンス的な展開だった上巻に対し、話が大きくなった分、「おや?」と思う流れがちらほらと。しかし、大作であり労作であることは間違いなく、一気読みでした。 | ||||
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上巻かあまりにもな出来だったのでなんだかなーと思いつつ下巻も読みましたが…やっぱり駄作でした。全ての考え方が浅くて薄っぺらい、あと文章が単純に読みづらいです。わざわざこれを選ばなくても良質な犯罪小説は他にたくさんありますよ。 | ||||
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上下巻を一気読み!!!!めちゃくちゃ面白かった!!!!!!!!!! まさに超弩級のハードボイルド・アクション・ミステリー・エンターテインメントの傑作! 舞台は2020年の東京オリンピックを間近にした、ごくごく近未来の東京。移民・難民受け入れを決定した日本は、移民大国としての道を進むが、そこに冷や水をぶっかけるような事件が発生する。 クルド人難民が東京都知事を狙撃したのだ。幸い、東京都知事は一命を取り留め、犯人も早急に逮捕される。取材で狙撃現場に居合わせた大手新聞社の記者天宮理宇は、犯人がクルド人難民であることに違和感を覚え、調査を開始するが、上層部から圧力がかかり、新聞社を去ることになる。 天宮はフリージャーナリストとなり、独自に都知事狙撃事件の調査を継続する。天宮は、調査を進めるうち、逮捕された犯人が真犯人でないことを確信する。そこへ「アル・ブラク」と名乗る謎のクルド人から真犯人の手がかりがもたらされる。天宮が事件の核心に近づけば近づくほど、この狙撃事件の裏にはさら大きな事実が隠されていることに突き当たるのだった。 警視庁公安部の暗躍、絶大な権力を握る大手新聞社の社主、狙撃されたことで不死身の英雄として担ぎ出された若き政治家・火神東京都知事、そしてクルド人で元傭兵のアル・ブラク、そして在日難民組織「シリア、トウキョウ」。 いくつもの大きな渦に巻き込まれながら天宮は「本当の真実」にたどり着けるのか? ストーリーもラストも完璧。登場人物達もみなキャラクターが立っていて非常に魅力的だ。特に天宮の行動をつかず離れず監視する警視庁公安部の謎の女性刑事・刈谷。彼女の存在が、このハードボイルド小説の中で、ふと気持ちを緩ませてくれ、良い味を出している。 そしてなんと言ってもド迫力なのが、クルド人で元傭兵のアル・ブラクの回想シーンで描かれるシリア内戦でのエピソード。あまりに壮絶かつリアリティ溢れており、この回想シーンだけでハリウッド映画一本作れるんじゃないかというくらいの迫力がある。 著者・吉上亮の作品はアニメ『PSYCHO-PASS(サイコパス)』のスピンオフ小説『PSYCHO-PASS ASYLUM』と『PSYCHO-PASS GENESIS』シリーズは全部読んだが、本書のようなSFではない本格的エンターテインメントミステリーを読むのは初めてだ。 「ユートピアに最も近いディストピア」な近未来・日本を描いたPSYCHO-PASSシリーズも無骨で読み応えあったが、現実世界を描いた本作は、難民問題というテーマにもしっかり切り込んでおり、単なるエンターテインメントだけに止まらない社会派小説という一面も持っている。 巻末の参考文献の数からも著者がシリア情勢やクルド人の状況、最近の難民問題を相当研究したことを伺うことができる。 一点だけ、ちょっと気になったのは、著者は日本の司法手続きや警察の取調べのことをもうちょっとだけ勉強してもらったら良いのかなとは思う。 例えば警視庁の刑事による取調べのシーンで、被疑者が取調室の机に鎖で固定されている手錠をかけられて取調べを受けていたり、警察が被疑者を起訴する・起訴しないを判断するような描写があるのだが(実際は、逮捕・送致された被疑者の起訴・不起訴の判断は検察官がする。この小説では検察官の存在がすっぽり抜けてしまっている)このあたりは現実とかけ離れている。 目の肥えた多くのミステリー・ファンは、こういった方面の知識を豊富に持っているので、このような描写を読まされてしまうと一気に興ざめしてしまうことが往々にしてある。筆者の得意なSFだったら「未来の警察はこうなっているんだ!」と逃げることができるが、本書はあくまで2019年から2020年というリアルに現在の話なので、そこはもう少し慎重に書いていただければ幸い。 ただ、筆者がこの作品を書くためにシリアの状況や難民問題について相当の研究をされて、これだけの作品を完成させることができる能力をお持ちなので、日本の司法手続きなどは、その方面のモノの本を2、3冊読んでいただければ、すぐにご自分のものにしてしまうだろうから全く心配はしていない。次回作は本格的な警察ものを読んでみたい。 最後につまらないことを書いてしまったが、こういった点でこの本の価値が下がるということは1ミリも無いので安心して欲しい。 最初にも書いたが本書はハードボイルド・アクション・ミステリー・エンターテインメント小説の傑作になることは間違いない。 | ||||
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