夜の闇を待ちながら
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
夜の闇を待ちながらの評価:
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夜の闇を待ちながらの総合評価:
8.50/10点 レビュー 4件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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奥付には、2001年と記してあるから評者が読んだのは14年前になる。
再読し始めても記憶になく毎度のことながら初めて読むように楽しく読むことができた。
評者は、著者のレニー・エアースの本はこの一冊のみを読んだ記憶である。
話の粗筋はありきたりな狂気の連続殺人事件であるが、この猟奇的な殺人事件の舞台であるイングランドの美しい田園地方の情景や登場する人物描写など著者の筆致が優れていて読ませてくれた。
この物語の主人公は第一次世界大戦後、九死に一生を得て帰還したジョン・マッデン警部補であるが、いまだ塹壕陣地での記憶が癒されることもなく毎夜悪夢に襲われている。
著者が、そのマッデン警部補が戦場を思い出しながらその心情を吐露するくだりがなかなか秀逸であるから下の・・・内に転載したい。
・・・マッデンはいまも亡霊とともに生きていた。亡霊たちは夢のなかに出没する。みんな前線で顔なじみになった連中だ。親しかった友もいれば、もう顔さえさだかに思い出せない人たちもいる。
ほとんどが時を同じくして兵役にとられた、店員やら、服地商人、シティの事務職員、見習い職人といった若者たちだった。おたがい肩を並べて吹奏楽隊のがなりたてる調べに足並みを揃え、民間人の服装でロンドンの街路を威風堂々と行進した。やがてはドイツ軍の機関銃という仮の姿で待ち受けている運命などつゆ知らず、誇りと勇気に胸ふくらませ、旗をちぎれるほど振って見送る群衆にとって一日だけの英雄を演じた。誇りと勇気はソンムの地で夏の一昼夜だけであえなく消えてしまった。
所属大隊の数少ない生き残りとして、マッデンはつぎつぎ死んでゆく戦友を葬送してきた。最初のうち、友を失うことは癒しようのない傷のように思われたが、戦闘が長びくにつれ、死者たちのことはしだいに考えなくなった。まわりで兵士たちがばたなた斃れてゆくのだ。あいつぐ死。また死はやがて意味を失い、みずから生きながらえる望みもなく、感情は鈍麻し、ついにはなにひとつ感じなくなった。・・・
訳者の田中靖氏が、あとがきで多くの賞にノミネートされながら、本書が選ばれなかったことを訝っていたが、たしかに優れた作品であることは間違いないだろう。
「往古の大戦への神魂の書ともなっている」と、訳者あとがきで述べていたが、本書がたんなるミステリではない域を超えたところにあり、読み応えのある作品にしているのは、戦争の惨禍を色濃く背景にしていたからであろう。