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金環食の影飾り



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【この小説が収録されている参考書籍】
金環食の影飾り (1975年)
金環食の影飾り (角川文庫)

金環食の影飾りの評価: 5.00/5点 レビュー 1件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(5pt)

その年の直木賞候補ともなった75年作

頁数こそ抑えめながら、描き出される妖しい闇模様には、覗き込めば思わずゾクリとするような深みを感じる・・・息を詰めて読み進め、読後にはもう、感嘆の溜息しか出てこなかった。

一冊の舞台本を残し、人知れず死の淵を下った姉。姉の死後、その「遺作」である新作歌舞伎を上演する運びとなった、妹であり新劇女優の綾野曙子の視点から物語は描かれている。そもそも、歌舞伎などとはまるでかけ離れた世界に居たはずの姉が、何故このような台本を書けたのか?春雷の轟く三宅坂で、また舞台初日を迎えた劇場で、姉の「幻影」を視た曙子は、それをきっかけに死の直前に姉が記した足跡を辿り始める・・・

かかるミステリ調の展開と並列し、今作では先の新作歌舞伎『大内御所花闇菱』の舞台が描かれていく。蠢く謀略、裏切り、乱れ咲く悲運、そして憤激、、、ありとあらゆる人間の「情」が激しく、生々しく渦巻く舞台模様が作品全体に言い難く不穏な雰囲気を投げ掛けていく。見事なのは、この虚構の舞台がそうした「劇的」な効果をもたらすにとどまらず、現実世界における一人の人間の死を巡っての「真相」にもクロスしていくところ。虚と実が入り交わる上で暴かれる事の次第は、そのためか異常なほど妖しく深い業や情を纏うに至っている。日本古来の芸能と鮮やかな結末を翻すストーリーの融合という、赤江瀑の真骨頂が見事に表現されている芸術的作品。村上昴のイラストによる装丁は個人的な好みとは外れているが、昨今の書籍ではそうそうお眼にかかれないインパクトを持った刺激的なモノだと思う。
金環食の影飾り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:金環食の影飾り (角川文庫)より
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