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聖女聖戦 大罪勇者と思い出の魔女



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【この小説が収録されている参考書籍】
聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)

聖女聖戦 大罪勇者と思い出の魔女の評価: 4.25/5点 レビュー 4件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.25pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(5pt)

面白かった

生前の悪行に由来する「十三人殺し」の異能とともに、魔女として追われる聖女アデルの元に召喚された主人公。この世界では、魔王の残した呪いに対抗できる能力を持った十三人の聖女が相争う「聖女聖戦」が行われている最中で、主人公は既に寄る辺を喪って敗退寸前だったアデルに協力することに…と始まるダークファンタジー。著者の別シリーズである、異世界拷問姫や悪逆大戦を好きな方なら刺さるであろう作品だと思う。聖女たちの能力を一つにしなければ真に魔王を倒すことができないのに、そのためには別の聖女を殺して能力を奪わなければならないという、人間の醜悪さを愉しんでいるかのような悪辣な舞台設定。これぞ綾里けいし作品だと言わんばかりで、非常に楽しませてもらった。そんな世界観なのに、間違え続けてきた少年が紡いでいくアデルとの関係がきらきらと輝いて見えて、読後感としては寧ろ爽やか。敵味方、どちらの陣営にも人死にが大量に出ている、特に後半はより顕著になっているにも関わらず、そう思えてしまうのがこの作品の一番凄いところだと思う。2巻まで確約されているとのことなので、ここからどう物語をまとめるのか期待している。
聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)Amazon書評・レビュー:聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)より
4086316099
No.3:
(5pt)

魔王退治のその先の、聖女たちの政治劇。

魔王がいる、わかる。
勇者もいる、わかる。
では聖女とはなんなのか?

本作『聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女―』は“聖女”をメインテーマに据えました。
まず聖女とはなにかといえば、近年のRPG的な「勇者と魔王」の対立を物語の主軸に据えたファンタジーにおいて、勇者の仲間の一員として数えられることが多い称号、もしくはその称号を付与された個人のことを指します。

また、勇者は異世界から召喚された一般人や市井から出てきた庶民だったり、はたまた王侯貴族の出だったりとさまざまな出自を持ちます。出どころからもわかるように、王道に限らない幅広いキャラクター性を追求できました。

対する魔王は、魔族や悪魔を統括する為政者であることが多いようです。
異種族の王として別陣営と妥協が可能な余地があったりします。対話不能な災害じみた絶対悪だったりもします。あるいは、人類などと和解が成った後に友愛を籠めたパートナーシップを築ける魅力的な個人だったりと多様に扱われます。
勇者にも増して、魔王の解釈の余地は作風や世界観によって大いに分かれると言っても過言ではないでしょう。

そこで聖女に話題を戻すと、勇者のパートナーに定められて共に旅をすることになります。
ただし聖女は同じく選ばれし者といっても、既存の宗教権威と結びつき認定されることが多いようです。
自由を旨とすることが多い勇者とは異なり、神に仕えることを前提とし、立場の制約が強いのが特徴かもしれません。

悪意を持った言い方をすれば勇者が天意が定めた英雄なら、聖女は権力者がそれに番(つが)わせるために産み出した人為の産物という言い換えまでできてしまいます。
さて、前置きがいささか長くなってしまいました。ダークファンタジーや猟奇ミステリーを得意とされる「綾里けいし」先生の新作は、神の命により十三人の聖女がひとりになるまで殺し合いを強いられる「バトル・ロワイヤル」形式です。

先述の前置きから引用させていただくと、主人公の「倉敷斗真(以下:斗真)」は勇者として異世界へ召喚された現代人というパターンでした。
彼は聖女のひとり「アデル」を仕える相手と定め、彼女への献身を誓います。ちなみに斗真は現代日本の裏社会で利用され尽くされたあげく、ただ一人守りたいと願った少女すらも失ったことで自ら死を選んだ哀れで孤独な少年でした。

しかし、斗真は理知的で良識はもちろん悪徳とも慣れ親しんでいます。神や教会に殺し合えと言われても「はい、そうですか」とうなづくことはしません。その辺のバランスがアデルと合致したのが組む理由のひとつにもなりました。
悲惨な境遇の果てに死を迎えた少年と言えば、同じく綾里作品でも『異世界拷問姫』の瀬名櫂人と共通しますが、わりとふてぶてしくたくましく主に遠慮しない櫂人と斗真は異なります。斗真は自罰的で献身的な少年だったりしました。

反面、欺瞞には人一倍敏感なのか、神そのものやその威を借る者の言葉の矛盾にはいち早く気づきます。
というか、綾里先生の描くダークファンタジーで一番ヤバいのは神であることが多いので、斗真の分析が無くてもなにか嫌な予感を感じた綾里ファンもかなり多いことでしょう。

ただし、この世界の神がどうであれ、一巻ではひとまず主と仰ぐアデルともどもに生き延びてより多くの聖女が生き残るプランを練る。その中で降りかかる火の粉を振り払うことには躊躇しない形で斗真たちの方針は明確です。
神が狂気に冒されているのか、それとも単に悪趣味なだけのどちらかは続刊で明らかになる事象と言えるでしょう。

ところで、アデルはかなりフレンドリーかつ丁寧に異世界の現状を斗真に説明してくれる親切な案内人でした。
読者としてはわかりやすく親身な説明を行ってくれます。地味に好感度を高めてくれてこの人なら信頼できるなと思えました。なお、試し読みの範囲でもわかることなので本レビューでも記しますが、斗真の視点から展開される異世界の物語は魔王討伐(厳密にはトドメを刺す直前からの)後からスタートします。

追いつめられた魔王は性質の悪い呪いを世界規模で撒き散らす災害の根源に変化し、聖女はその呪いを一人一種類浄化する能力を神から与えられたとされています。
つまり人類(※便宜上の表現)の危機はほぼ去り、戦後の後始末の段階でした。今後の主導権を人間に妖精や竜といったどの種族が握るかといった問題が浮上するほか、聖女を旗頭に据えた人類側勢力間での抗争が話の背景に鎮座します。

聖女たちを(表向きの)トップに据えた陣営間での世論戦という趣があるのが面白いですね。
冒頭で行った話にかかるのですが、聖女とは政治的な存在であり世俗権力との付き合いが欠かせないという傾向を上手くとらえてのストーリーラインの構築だと考えられます。
すべてが終わった後に権力から背を向けて荒野に去ることは、勇者にはできても聖女にはできないのでしょう。

ほか、本作のファンタジー世界観では一般的な魔法もあるのですが、神のもたらす聖女の奇跡は人心への影響力では一線を画すというのがポイントです。
単純なバトルというよりは、聖女とそのおつきの聖騎士たちの能力を活かした駆け引き光るコン・ゲームとしての性質の方が強いでしょうね。一見使えない能力でも相性差を突けば有用というのも能力バトルの文脈では定番です。

斗真個人も、異世界に呼ばれるにあたって恐るべき能力が神から付与されるのですがどのタイミングで行使すべきか頭を悩ませることになります。なんでしたら斗真の固有能力は政治的駆け引きと非常に相性が良かったりしました。

また、聖女がもたらす浄化の奇跡は最終的にはほかの全員を殺して奪って集約しろと言われています。
しかし、過程では頭数が必要となるので時が来るまで泳がせるのも現実的に考えれば政治の選択肢のひとつに入ります。
作中で明示されていますが、普通のバトルロワイヤルとはその点で大いに異なりました。単純に聖女を殺して終わりでなく、時と場所が重要になります。そこは斗真の反則的能力の運用とも関わるので、案外彼も無双できなかったりします。

ここまでは勇者と魔王と聖女についての前提、続いてこの世界の聖女の性質と頭脳バトルとしての側面について語らせていただきました。
続いて、一巻において絶対に打倒しなければいけない聖女「ミーシア」について言及していこうと思います。
ミーシアは純白で無垢と評されるある意味聖女らしい聖女であり、バックにいるのは人間種の強国である宗教国家です。
現時点での最大勢力である彼女らは冒頭で捕らえた四人の聖女を処刑することで、一気に人心を集めようとしました。

しかし、ミーシアの心中にあるのは政治的な合理性ではなく、ただ一人自分のみが神に認められた聖女であり絶対の正義という歪みきった認知です。無垢で純真ですが、歯止めの利かない狂気の体現者と言い換えてもいいでしょう。
彼女の、思考停止した者にとって最高の聖女と思わせるペラッペラっぷりが本当に強烈でした。
「正義」を掲げた時こそ人はもっとも残酷になれるという金言をこれ以上に体現した聖女はいないかもしれません。

イラストレーター「Genyaky」先生の筆による扉絵もさることながら、あの挿絵はしばらく忘れられる気がしません。
ミーシアには人間的な厚みはまったくないけどただ綺麗なので、遠巻きに見る信者にとっては悪くないんでしょうね。
中近世を彷彿とさせるダークファンタジーですが、そういった意味ではかなり現実的な「アイコン(偶像)」だったのかもしれません。戯画化は綾里先生が得意とされる手法なこともあり、ミーシアは間違いなくこの巻の主役でした。

以上。
ミーシアお付きの聖騎士「ドミニク」の献身に支えられた鉄壁の防御態勢、しかも彼の忠誠は理知と狂気の使い分けから成り立つので精神的に隙がない。支援する国の盤石さも相まって彼女をどう倒すのかは頭を悩ませる問題です。
しかしそこは、ミステリー作家でもある綾里先生のこと。
ミーシアという怪物に根差す本質的な悲劇と向き合いながら、華麗かつ残酷で腑に落ちる形で鮮やかに決着をつけてくれました。犠牲は払ったものの、十三名といういささか多すぎた競争相手はここでかなり整理されます。

主人公・斗真のキャラはまだまだ掴みづらいですが、状況分析力と読者向けの説明力がとみに優れているので私としては文句をつけるつもりはありません。
過去を振り切るにせよ、改めて向き合う羽目になるにせよ、パートナーのアデルと共に幸せになって欲しいですね。

どうも異世界転生というと綾里先生の代表作でもある前述の『異世界拷問姫』を思い出しがちですが、異世界の案内人であるアデルが誠実で一生懸命で茶目っ気ある女性なのでたぶん大丈夫でしょう。
斗真の自分のことを大事にしない危うさでは頑丈という前提のある櫂人の比ではなさそうですが、バトルの方向性の違いがあるのでひとまずはインフレしてからの地獄はないと信じたいところですね。

二巻が出ることが確約されている作品なので、一応の決着は次の巻で付くんだと思われます。
そこから先、第二幕の幕が上がるかどうかと世界観の掘り下げはあとがきで作者ご本人が売上次第ということで。
聖女と魔王の呪いをめぐる駆け引きに現状話の焦点が向かいがちですが、先の展開が気になるところです。

思うこととしましては、同月にガガガブックスから発刊された『悪役令嬢について』の「悪役令嬢」と合わせて、綾里先生、なんとなく最近のライト文芸の愛好者の間で共有されている概念に切り込むか―って驚きでした。
作風をある程度一貫させつつ。チャレンジャーに題材を選ぶ姿勢は大いに見習いたいところです。

おそらく今回のテーマは天真爛漫な笑顔を振りまく「聖女(偶像)」の背後にいる顔の見えない組織の有形無形の身勝手なのかなって思ってもみますが、その辺も込みで二巻の展開に期待です。
全体の主人公はアデルと斗真の主従としても、この巻が主役はミーシアであることは多くの方が認めることだと信じます。主役を演じさせられる恐ろしさ、天敵はどこにでもいるという盲点、そしてロジックのみで動く人間は狂気と親和性が高い。さまざまな示唆が正義を掲げる宗教国家から浮き彫りにされ、最後は言葉にできない苦い思いがやってきます。

この巻でアデルたちと共同歩調を取った聖女はほかに四名、ミーシアに紙幅を取り過ぎたので軽く触れる形に抑えてしまいましたが、個人的には妖精の聖女「ザザ」が好きです。世論戦を気にしないマイペースな妖精娘っていいですよね。

――このように、アデルたち個性豊かな聖女たちと、無個性も過ぎれば個性になるんだと震撼させられたミーシアの対比、堪能させていただきました。死とは人生における最後にして最大の魅せ場です。
ゆえに、きっと聖女に火刑台が一番似合うとは限らないと綾里先生は二巻で我々に教えてくれるのでしょう。
さぁ、生き残るのは誰でしょう? 死にざまはどうでしょう? 生き残るのは何人だ?
聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)Amazon書評・レビュー:聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)より
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No.2:
(2pt)

全体的にキャラの扱いが雑に感じた

異世界転生で呼ばれた先は魔王の呪いに対抗するための加護を集めるために聖女たちが殺し合う世界という世界観は良かったです。
ただ、最初から捕まってた4人の聖女がまとめて処刑されたり、一番勢力を持ってた聖女の倒し方など全体的にキャラの扱いに雑さを感じました。
聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)Amazon書評・レビュー:聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)より
4086316099
No.1:
(5pt)

バトル要素満載のダークファンタジー

かなり面白いです。この巻でかなり伏線を回収したと思いきや、考えれば考えるほど続きが気になる要素が出てきます。ヒロイン・アデルは大人びた外見に対し少女性があるというところが個人的に好きになりました。二巻が確約されているとのことで、また斗真とアデルに会えるのが非常に楽しみです。
聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)Amazon書評・レビュー:聖女聖戦 ―大罪勇者と思い出の魔女― (ダッシュエックス文庫)より
4086316099

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