マンモスの抜け殻
評判
マンモスの抜け殻の評価:
3.83/5点 レビュー 12件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1〜3 1/1ページ
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マンモスの抜け殻の評価:
3.83/5点 レビュー 12件。 C ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
・ケアクラークの資格を取得しないと介護給付費の請求業務ができないような記述がある(85~86頁)。実際は取得しなくてもできる。生活相談員の要件を満たした職員が行ったりする。
・泊まり付きデイサービスを舞台としているようだが、「介護老人福祉施設」と表現しているのが誤解を招きやすい(101頁)。正式名称は「通所介護」。宿泊は介護保険外サービスとして、全額実費負担で提供される。「介護老人福祉施設」は、特別養護老人ホーム(略称「特養」)の正式名称。特養が通所介護を併設している場合もあるが、私が知る限り、「泊まり付き」ではない。
・介護保険制度のスタートと同時に「一般企業へと委譲」され、「それ以前は社会福祉法人など公的な機関が担ってい」たことを前提に話が展開しているが(163頁~164頁)、スタート後は社会福祉法人が運営することはなくなり、一般企業だけしか運営することができなくなったと受け取られかねない表現だ。ご存知の方も多いかと思うが、介護保険制度以前は、措置制度で介護サービスが提供されていた。当時は、原則として行政による直営か、委託された社会福祉法人が運営主体だった。社会福祉法人は民間団体なので、「公的な機関」という表現は適切だろうか。介護保険制度スタート後は、民間のサービス主体を拡大させた。非営利団体は従来の社会福祉法人だけでなくNPOなども、それ以外では民間営利企業も一定の基準を満たせば介護事業者になることができるようになった、というのが正確な説明だろう。
・随所で介護職員のことを「ヘルパー」と表現しているが、業界内でそう呼ばれるのは、訪問介護に従事する介護職員のことである。その他は「介護職」などと呼ばれる。
・介護保険では、利用者の自立支援について「自律」という表現はしない(310頁など)。「自立」と表現するのが一般的である。
本作品は、中村淳彦というライターが協力しているが、その結果、偏見を招きかねない内容になっている。彼が「解説」で告発しているエピソードは、彼が経験した某民間企業が運営する泊まり付きデイサービスのフランチャイズがそうだった、と考えるのが適当だろうと思う。私もいくつかの介護会社を経験しているが、当てはまったのは、深刻な人手不足、紙の書類負担やファックスの使用、同系列の店舗で経験した過剰な長時間労働などくらいである。勿論、耳目を集めた事件への言及は事実である。構造的な問題の指摘も確かだろう。
しかし、私が経験する限り、介護従事者は「ポエム」みたいなことは見抜いているし、洗脳などされていない。むしろ、冷めた目で見ている。「不正請求は常識」という実態や、不正請求のために「シフト表が二重にあるのは常識」ということは経験したことがない。一つのシフト表しかなかったし、不正な請求などしたことも見たこともない。彼の著書を読んだりYouTubeの動画配信を視聴したりしたこともあるが、ある程度の取材経験はあっても、客観的な統計や調査をしたことはないようだ。あくまで、個人的経験に基づく情報発信といった印象である。介護業界をネタにライター稼業の売名行為をしているのか、とさえ言いたくなる。彼のエピソードは本編にも反映されており、偏見を助長するのではないかと憂慮している。
なお、エピローグの爽やかな結末は、一種、介護業界へのエールを感じた。本編に一貫しているが、社会的評価の低い介護業界の重要性やリスペクトを感じさせる。登場人物の発案により、「希望」を見出せる内容となっている。架空の物語ではあるが、介護業界の現実に疲弊している人々にとって、かりそめの慰めにはなるだろう。現実を変える力になることを祈りたい。