用心棒日月抄
評判
用心棒日月抄の評価:
4.66/5点 レビュー 71件。 S ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1〜4 1/1ページ
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4.66/5点 レビュー 71件。 S ランク
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最初から、意外な感を与えてくれる。作品の流れに力が抜けているのだ。いい意味で切迫感や凝縮感の畳み掛けるような流れがないのだ。主人公の江戸出立の経緯は相当に陰惨な話なのだが、それを忘れさせてしまうほどのユーモラスなトーンでの始まりなのだ。
有名なシリーズなので、今さら僕が構成がどうのこうの書いても屋上に屋根をかける話になってしまうのだが、このシリーズの構成には相当な工夫が払われている。
三重ともいっていい仕掛けが埋め込まれているのだ。主人公が脱藩した武士であることから、本筋は「剣客物」の基本型を押さえているのは言うまでもない。ところが、主人公の江戸での生活は浪人として底辺を彷徨うものであるため、主人公の日常生活と生活の糧は商人や庶民との接触を伴うものとなり、作品自体も必然的に「市井もの」の色彩を色濃くする。
脱藩したとはいえ、その旧藩から継続して主人公の下へ刺客が送られてくるため、この日常と危機との交錯が作品の基本型となる。ところが、それだけでなく、ここに「忠臣蔵」という歴史的な事件との関わりが加えられるのだ。本作品のストーリー自体は、実は忠臣蔵という歴史的な事件の発端と締めくくりとクロスし、同時代の出来事として進行するのだ。時代が同じだけではなく、次々に請け負う用心棒稼業の日銭稼ぎの仕事がこの「忠臣蔵」のプロットの展開に深くリンクしてくるのだ。
はたしてこれは意図した通りの効果を上げたのだろうか。私見だが、この追加の仕掛けは、作品自体の面白さの深化に貢献したかどうかは、疑問。とはいえ、歴史的な事件の始まりと終わりとリンクさせたため、本作品の締めくくりは無理なく起床展開の流れをたどり、2年という枠組みの中に収めることが出来たといえる。また主人公の出身が、明示されることはないものの、「海坂藩」と想定できる点も、作者の故郷への深い愛着の残照をのぞくこともできる。
さて、この用心棒シリーズ、この後も続くこととなる。それを見込んで、様々な個性的な脇役が登場している。