ニューカルマ
評判
ニューカルマの評価:
3.94/5点 レビュー 35件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全70件 21〜40 2/4ページ
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ニューカルマの評価:
3.94/5点 レビュー 35件。 B ランク
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(おもな登場人物・組織)
●ユウキ(竹田優希)
一人称の語り手。大手総合電機メーカーの子会社で、
電子部品の製造を主力とする某メーカーに勤務していたが、
ネットワークビジネス
(口コミによって健康食品等の商品を流通させる会員制の製造販売業)業界に転身する。
●タケシ
生まれつき片腕を欠損している障害を持つユウキの幼馴染。東大卒業後、
市議会議員を経て市長へと昇りつめた人物。
正義感が強くユウキをネットワークビジネスから引き離そうとする。
●ウルトリア
全世界に展開する米国資本のネットワークビジネスの組織。
途上国等に対して病院建設等の為の巨額の経済的供与を継続的に行っている旨を
パンフレットで謳っている。
●石黒
ウルトリアに於けるユウキの上司。金村良子をユウキに紹介した。
●金村良子
オーナー企業の社長夫人。ユウキの直下の子会員となって大規模な拡販に成功し、
ユウキに大きな利益をもたらした。
嗜虐的な性的嗜好を持ち、のちにユウキに縄を用いた性行為を強要した。
その後同業他社の引き抜きによってウルトリアから離脱した。
●ニューカルマ
ウルトリアを辞めた後にユウキが会員となったネットワークビジネスの組織の名称。
子供の貧困を解決するために設立されたNPOに資金供与。
社長をはじめ会員の多くがNPOを通じボランティアに参加。
●木村社長
ニューカルマの経営者。
(あらすじ)
業績不振に喘ぐメーカー勤務の職を捨ててネットワークビジネスに転身したユウキは、
一時的に成功するものの、強引な勧誘活動等によって債務者に転落し、ウルトリアを辞める。
その後、派遣の仕事を経て参加したニューカルマに於いて、傘下の会員数を急拡大させ、
社長から重用されるほどに出世する。
しかし、商品の一つである美容液がアレルギー被害を発生させた不祥事に関し、
会員に向けて独断で全面謝罪を行った事が原因で、ニューカルマを追放される。
更にその一年後、自身を代表としたネットワークビジネスの組織を起ち上げる。
(感想)
本作は、時流に沿った題材を扱いつつも、大元に据えられたテーマは
「モラル」(倫理・道徳)であると言えるのかもしれない。
それも、
社会的モラル・法的な意味合いにおける狭義の善悪を問題にしているというよりはむしろ、
「一個の人間存在としていかに善く生きるか」
という、よりパーソナルな視点に立って書き上げられた小説であるように読めた。
過去の所業が現世の運命に影響を及ぼすとした
「カルマ」という仏教概念をタイトルに冠したのは示唆的だ。
カルマ(業)には善も悪も両方含まれとされるが、
それが清濁併せ持つネットワークビジネスの業態と被っている感じがする。
語り手が、最初に参加したネットワークビジネスの組織を辞めた後に、
性懲りもなく同業他社に参加する流れはリアルで、
また、物語に厚みを与えていると思う。
終盤、木村社長が自社の詐欺的商法について
「奇麗事じゃ人なんて救えない」とユウキに対して詭弁を弄する。
倒錯した理屈だが、行動が伴っている為ある種の迫力がある。
悪事に手を染めつつも稚気も併せ持つこの男の人物造形には、
やや類型的ながら面白みを感じた。
「身体的なハンデ」を題材の一つとして取り上げている点についても興味深く読んだ。
ネットワークビジネスでユウキの上司であった石黒は、美容整形を
施すことによって手に入れた奇麗な外見を会員獲得のための武器にする。
このこと自体は「ありがち」な挿話にも映るが、
タケシが腕の欠損を自身の社会的な弱点であるとは捉えずに、敢えて義手を隠すこともせず、
結果論的には腕の欠損を市長選に勝ち抜くための強みとさせた(そのことをタケシ本人ではなく
ネットワークビジネスの会員に言及させている)
という別の物語とを『「ハンディキャップ」という共通のキーワードによって生み出された二人の強者』
を扱った一対のエピソードとして見れば、
これらが本書にある種の重みを与えていることは確かなことだろうと思う。
容姿や身体的な差異をハンディキャップと捉えるかそうでないかの判断は
個人差が大きく、人の人生に非常に大きな影響を及ぼす。
ただ、そうした問題に対処する際の個々の主体的な判断の中身を
善悪で測ることはできない。
「善か悪か?」という二元論には決して収斂され得ないデリケートな事柄が
物語の中に入り込み、絡みついている設定に面白みを感じた。
ニューカルマでのユウキの仕事ぶりが好調過ぎる点や、
小学生時代のタケシに対するイジメに加担した記憶がフラッシュバックして
ニューカルマに於けるトラブルへの謝罪と被る場面など、
若干の違和感を覚えた箇所が幾つかあった。
また、全体的に見ると人物造形がやや類型的で、そこに若干の物足りなさを感じた。
文章に関しては、描写を始めとして丁寧であるという印象を持った。
最終的に、ユウキは中国から仕入れた「白い粉末」を販売するために自身を代表とする
ネットワークビジネスの組織を起ち上げることになるが、この事業が違法性のあるものであるのか
どうかは明らかにされない。人並の規範意識を備えた人物として描かれてきたユウキが、
最終的にどのような人間となったのかを読者に想像させる余地を敢えて残したようにも読める。
だが、逆の言い方をすれば、その点を明確に描き切らなかった事が本書の弱点であるとも言える。