■スポンサードリンク


少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語の評価: 4.00/5点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

小説家と編集者の関係

一肇(にのまえはじめ)というペンネーム自体に変な方向にこだわっている特徴が現れている。「一」を「にのまえ」と読んでいるが、「一」を「はじめ」とも読む読み方もあるのである。だとすれば、この読み方で「一一」と書いても構わないわけだ。また、2014年の刊行らしいが、偶然にもイニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が米国公開された年である。書名も内容も実は、既に話題となっていたその作品へのオマージュとも見れなくはないのである。要は、この新人作家の性癖は、「変な方向に拘る」というものだということがわかる。

イニャリトゥ監督は「BIUTIFUL ビューティフル」も「レヴェナント蘇えりし者」も、その年のマイベスト3に入れるほど私は大好きだった監督(私は年間100作以上は観る映画ファンである)だけど、アカデミー賞三冠に輝いた「バードマン」だけは頂けなかった。表現者の苦しみを描こうとしたこの作品、しかしその肝心の苦しみの中味は、台詞的にも映像的にも、私にはほとんど伝わらなかった。むしろ、これはあらすじが先にあって、それに合わせていろんな凝りに凝った映像と台詞を「創った」気がした。

という、全く同じ感想を、この一肇氏の作品にも与えたい。
 
それなのに、なぜこの本を手にとって最後まで読み通したのか?それは一つは編集者の文庫本の裏表紙にある紹介文「映画と、少女と、青春と。」という文句に惹かれたから。三つとも私の好きな言葉なのだ。それにもうひとつ、文庫の帯の「煽り」にやられた。そういう意味では、小説を創るのは作家ではあるが、本を創るのは編集者であることがわかる。実は、マアこれも 監督と制作の関係であり、映画的世界ではある。

あ、ちなみに「バードマン」のエマ・ストーンと「少女キネマ」の黒坂さちは良かった。

2017年3月14日読了
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)より
404105186X
No.2:
(4pt)

沈んでは浮かび,そして狂気の先に差し込む春の光

妄想癖の強い大学生と黒髪おかっぱの女子高生,オンボロ下宿にアクの強い友人たち.
そこへ奇妙な出来事や古めかしい言い回しと,その作風は森見登美彦さんに似たものが.

とはいえ,主人公がたぎらせる情熱と鬱屈は,氏のそれとはまた違う熱さを見せつけ,
親友の背中を追いかけ,沈んでは浮かびを繰り返し,それでも届かず,時に自分を責め,
ついには鬼神のごとく,『向こう』に手を掛ける姿には,ただただ圧倒されるばかりです.

また,少女が覗かせる小さな思い,そして大きな優しさは静かながらもじわりと響き,
かと思えば,一時の戯れとなる真夏の逃避行は,何とも言えない甘酸っぱさが漂います.
何より,なぜ彼女は彼の前へ現れたのか,胸の痛む『告白』とその訪れはあまりに突然で,
おおよそ予想通りではあったものの,目にした瞬間,体から力が抜けていくのを感じました.

そのため,結末は出来過ぎにも映り,素直に受け容れられない部分もあったのですが,
明るい光が差し込む『最後の言葉』は,春という季節を嫌っていた彼に再び希望を与え,
居場所を見失い,朽ちかけていたこれまでから,一気に開けていくような余韻を残します.

ただ,彼が探し求め,たどり着く真実の内,とある人物の背景にだけは違和感が拭えず,
あふれる青春の感情と幻想の儚さの中,ここだけがどうしてもズレて見えてしまいました.
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)より
404105186X
No.1:
(5pt)

裸の心の全力疾走に興奮した後、敬虔で温かな気持ちになる真摯な小説としてお薦め

2014年に1600円の単行本(電子書籍版)で本作を読んだ私です。ここのところで読んだ百数十冊の本の中で本作はベスト1か2だと思いますし、今もこの小説が大好きです。
ごく普通の大学生十倉君が、若者なりの衝動に動かされ、友人や不思議な乙女に支えられ、傍観者から主体へ変わっていき、映像作品を完成させることに挑む。その過程で、空想は妄想化し、暴走して暴想王になり、周りの皆とともに停滞を破って新たな世界へ歩み出す。
暴風雨の中をくぐり抜けていくようなこの小説の読後感は明るく、勇気をもらえた気がします。
最終段で十倉君も読者も落ち込みますが、そこに「エピローグ」が来る。これが優しくて良い。最後の一行には泣かされるので、絶対先に見てはいけませんよ。
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)より
404105186X

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!