さまよう刃
評判
さまよう刃の評価:
3.82/5点 レビュー 350件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全539件 221〜240 12/27ページ
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さまよう刃の評価:
3.82/5点 レビュー 350件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
未成年の少年3人組(いずれも高校中退してつるんでいる仲間)に
拉致されレイプ被害に遭った上、殺害され死体を遺棄され…
主人公はこの娘の父親で、被害者の親となり
娘を失った苦しみと怒りと絶望に苛まれていきます。
そして、遂に復讐へと行動に移っていきます。
あまりにも生々しい設定と、生々しい描写。
特に、性犯罪を受ける描写シーンの残酷さは容赦なく、
ある程度の覚悟をもって読まないと酷いショックを受けると思います。
ただ、実際の犯罪の場面は、こんな生易しいものではないでしょう。
被害者の人相が解らないほどに殴られたり蹴られたり
引きずり回されたり、多人数による暴行や罵倒…もっともっと悲惨です。
発見された遺体は、暴行の凄惨さを物語っています。
身体の一部が欠損していることも少なくありません。
もちろん、詳細が報道されることはありません。
精神衛生上の配慮をされ、上辺のみが報道されるのみです。
現実は、もっと恐ろしいのです。
ですから、「この描写は酷すぎる」というご意見もありますが、
むしろ、東野氏は抑えて書いたと思われます。
このような題材を扱う以上、事前の取材や資料は膨大だったと思いますが
そこから読者への配慮をし、ある程度フィルターをかけて限界まで抑え、
その上での描写だと察します。
非常に怖いことですが、これが現実で起きている事件であり
決して目をそらしてはいけない現実です。
これほど残忍な犯罪をおかしても、少年法で加害者が守られることを
筆者は切に訴えたかったのでしょう。
現実よりもソフトな、ドラマに出てくるような強姦シーンを書いただけでは、
いまひとつ加害者たちの残忍性や異常性は伝わりにくく、
読者に「更生の機会があるのでは」と、誤解を与える恐れがあります。
それを避けたかったのだと思います。
現実は、更生の余地がないほど人間性を欠いた犯罪が多いのです。
未成年であっても、もう救いがないほどに。
ただ、もう少し掘り下げて描いて欲しかったのが
犯罪に遭う前の親子関係や、娘さんの様子ですね。
もっと幼い頃から娘を大切に育ててきた場面、
妻の死後、男手ひとつで必死に娘を見守り育ててきた場面、
そういう部分が少ないので、被害者の性格も嗜好も解らないし、
娘さんが、単なる性犯罪の被害者としてしかイメージが湧かないのは
とても惜しいところ。
もっと、生前の娘さんの人物像や、
愛情あふれる親子関係が解るエピソードを丁寧に設けてあれば、
読者は、より身近で親しい人を失った悲しみを強く感じられ
もっと深く悲しみに共感できたのではないかと思います。
同時に、加害者の幼少期にも触れて欲しかったです。
ここまで残忍な犯行をおかすには、原因と前触れがあります。
劣悪な家庭環境、親の育児放棄と良識の逸脱など。
おそらく、中学時代にも散々悪いことをしてきたし
人を傷めつけることなど何とも思わないエピソードがあるはず。
色々な要因が重なって人格が歪む過程を描ききってあれば、
事件後の加害者の親たちの態度にも、より説得力があり、
読者が腑に落ちやすかったでしょう。
そのあたりが残念でしたが、テンポもよく最後まで一気に読めました。
途中で、何度も涙しました。
ただただ虚しく悲しい。
復讐をしてもしなくても、犯罪に巻き込まれた時点で
もうどうにもならない地獄に落とされるのが現実で、
遺族は、その苦しみから解放されることはありません。
その持っていき場のない葛藤や怒りが最後まで続きます。
だからこそ、正解はいつまで経っても見つからない。
やりきれない思いでいっぱいになります。
この絶望感こそ、子供を犯罪で失うことの現実であり
生き地獄にひとしい、筆舌に尽くしがたい苦しみなのです。
この小説に登場する、もう一人の被害者の父親…
この人が、最も現実の被害者遺族に近いのではないでしょうか。
主人公は、いささか理想化された被害者遺族の姿ですし
実際は復讐の機会など与えられないのが殆どだからです。
この父親の苦しみや怒りこそ、私には最もリアリティがありました。
被害者遺族、刑事、マスコミ、加害者、加害者家族…
色々な観点から描かれているので、より深く考えさせられる内容です。
映画の内容とはかなりかけ離れており、原作のほうが深く凄い。
また、心理的描写が見事なので映画しか知らない方は
原作を一度読まれることをお勧めします。
きつい描写も多いですが、これが現在の日本の現実。
実際に、いくらでもこういうことが起こりうるのが現実です。
事実、起きています。
危機管理意識が薄かったり、「私は大丈夫」「うちの子に限ってまさか」
と、どこか他人事に構えていたりする人にこそ
ぜひ読んでいただきたいと思うのです。
少年法のおかしさ、加害者ばかりが守られる裁きについても
折につけ、この本で何度も触れられています。
大変遺憾なことであり、怒りさえ湧きます。
けれども、すぐに少年法が改定されることはないでしょうし
そうこうしている間も犯罪は後を絶ちません。
夜道をひとりで歩かない、世の中にはおかしい人間がたくさんいる。
そういう危機管理意識や自覚をもって自衛をする大切さも、
同時に痛感した一冊です。