大地の牙 満州国演義 六
評判
大地の牙 満州国演義 六の評価:
4.53/5点 レビュー 15件。 A ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全14件 1〜14 1/1ページ
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大地の牙 満州国演義 六の評価:
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こうした時代背景の中を、満州と中国に根を下ろした敷島家の四兄弟はどう生きていたのだろう。満州国自体が傀儡国家なのだから、太郎は外交部のトップだと言っても何も出来ることは無い。国内外の激動に対し、自身の見解を持っている様には見えない。新設の満州建国大学の友人を訪ねたり、青少年義勇軍の訓練所を訪れたり、ハルビン郊外の豊満ダムの建設現場に動員されている苦力を見たりしているが、彼が何らかの意図をもって行動している様には見えない。恐らく、後に問題となる石井部隊、ソ連参戦で悲劇的な運命を辿る青少年達のストーリーの布石を打っておこうとする著者に「操られて」動いている様にしか見えない。なお悪いことに太郎は、中国人の住み込みの女中の一人のために家を建ててやり妾として囲う。馬賊を止め軍の特務機関の仕事を請け負って来た次郎は、祖国の独立を目指すインド人やナチスの迫害を受けているユダヤ人の満州への受け入れを画策するユダヤ系の記者と交流し、彼らの為に「よごれ役」を引き受ける。ただ、これまで四郎と会ったことのなかった彼が、特務の間垣の言いなりになって記者を止め、慰安婦の検黴(けんばい)に従事させられている四郎を苦境から救う場面は感動的だった。
この巻での三郎の活動は、満州と朝鮮の国境に近い通化から入った山岳地帯に展開する共産ゲリラ抗日連軍によって誘拐された日本人技師の救出と掃討を中心とする。その戦闘で部下を失い本人も捕虜となるが、日本軍を脱走し共産軍に加わった昔の部下に救けられる。この掃討作戦中にノモンハンでの衝突を聞かされ現場に向かう。日本軍5万9、000が出兵しながら近代化されたソ連軍の能力を見誤ったために、7、300の戦死、8、000の負傷、1、100の行方不明という大損害を蒙る。この無謀な戦が関東軍の一参謀辻政信少佐が計画し、陸軍の中央にこれを止めるものが居なかったという著者の批判は、戦後、常識となった解釈に従っている。しかし、著者は、これを三郎ではなく、一緒に現場を目撃した特務中尉床波の口を通じて言わせている。三郎の見解は、太郎の場合と同じように隠されている。四郎は兄次郎の尽力で、新京にあって甘粕正彦を理事長に迎えたばかりの満映に入社する。若い頃、無政府主義に傾倒していた彼が、満州まで来て、主義者の大杉栄一家を殺した甘粕の下で働くというのは皮肉な運命だ。しかし、彼だけではない。同じ劇団に所属した昔の友人達も満映に転がり込んでいて、11年ぶりに出会った松平映子と同棲する。
この巻の冒頭で、著者が同盟通信の記者香月の口を藉りて、世論や新聞が軍部をも押し切る怖さを強調するところ(p.13)、従軍文士の作品に、火野葦平以外は「軍部へのおもねり」があると感ずる太郎(pp.262-3){太郎としては珍しい}を描いたところ、慰安所を開こうと乗り込んできた業者の鯨岡の言い分等が面白かった。