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神のはらわた



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【この小説が収録されている参考書籍】
神のはらわた (ハヤカワ・ミステリ文庫)

神のはらわたの評価: 3.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

結局この趣向は趣向どまりなのか?

<前作のネタバレ注意>

 前作『死の仕立て屋』と本作のこのシリーズ二冊には、特にシリーズ名やそれを想起させる定型の題名もないので、前作を読まずに本作をたまたま手に取ってしまった人もいるのでは?
 実はわたしも危ないところだったw
 もしそうなっていたら、冒頭近く、女刑事ローラの頭の奥底に云々(その視点は太字で表記)がされ始めて、かなり戸惑うことになってしまうw
 これ、なんと前作の最後に射殺されたシリアルキラーの精神である……。

 彼はローラの行動や精神に干渉することはできず、描写の端々からは、神/天/不可知の存在に与えられた罰であるようだ。
 前作同様に、本作もシリアルキラーを含む多視点を頻繁にドリブルしながら進行していくが、ローラ内の彼も立派に主要キャラのひとりであるw
 そのほとんどが、なんというか俗物に塗れた身も蓋もない内面描写に終始している。
 主要キャラの中では、前作から引き続き登場のマルセル巡査が最も捜査官として有能で、考え方も安定しているように感じるが、その彼にしたところで、前作で妻があんなことになったというのに、その一年後にはナジャと再婚しているという……。しかもよく考えると、二つの男女関係は一部重なっている。フランス人(とマリ人)の間ではごく自然なのか?
 捜査主任のジャン=ジャン(だったっけ)なんて、女と一発やることしか考えていないTHE俗物だが、しかしまぁなんだ、そういった俗物揃いの捜査チームは、まったく有能とは云えないものの、犯人確保に身体を張ることには、十分前向きなのが救いだw

 一方、シリアルキラーにターゲットとして認知されたホームレスは、その風貌からイエスと渾名される男で、シリアルキラーの狂った理由に見合うものかは不明だが、実際にある程度の超常知の能力を持つことが点描されている。
 こうなると、元々映画的な演出の著者の筆致もあって、これらの設定が結末に向けてどう動くのかが、半ば懸念、半ば期待となってリーダビリティにもなる。

 ところが……見事になにも起こらないのである。
 決してつまらないというわけでもない。
 三人称多人数による視点の切替も、きちんとスリルやサスペンスの盛り上げに機能している。
 しかし、思わせぶった不可知の設定だけでなく、主要キャラたちの俗垢塗れの心情も相まって、なんとも不安定な落ち着きのなさが印象として前に来てしまう。

 著者としては何をやりたかったのだろう?
 前作は、後のデクスターシリーズでのような作品を目指していたのかもしれないが、本作は――というか、前作末の予告から――不可知設定もブッコみながら、あえて(だろう)伏線として回収もせずに放置しているわけで、この混沌をまるごとブラック・ユーモアにしてごった煮感を楽しむべしといったところか?
 少なくともわたしには、その実験的な手法はうまくいったようには見えないなぁ。
神のはらわた (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:神のはらわた (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151708103
No.1:
(3pt)

コント?コメディ?パロディ?

テレビ映画の脚本のような小説です。現在の南仏の様子や社会の雰囲気、「羊たちの沈黙」以降(「サイコ」以降?「ブラック・ダリア」以降?)のミステリの風潮を風刺しています。読んでいると、フランスという国の不可解さ、不可思議さに戸惑いを感じます。近頃の社会の風潮や、ミステリの傾向を風刺するなら、日本では川柳が適切でしょう。ところが、フランスでは小説にしてしまう。しかも、云いたい事をありったけ詰め込んだようなかたちで。だから脚本のような文体なのでしょうか?これがコントというのでしょうか。それともコメディ?パロディであることは間違いないでしょう。いずれにせよフランス文学の伝統を受け継いでいるのでしょうね。一読の価値はあります。ただ、純粋にミステリを楽しみたいときには、避けた方が良いでしょう。翻訳者の苦労が偲ばれます。
神のはらわた (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:神のはらわた (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151708103

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