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姫は、三十一
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姫は、三十一の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.19pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 21~21 2/2ページ
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| あのロマンティックな『妻は、くノ一』の姉妹編シリーズ始動です。主人公は、くノ一織江の異母姉、静湖。 作者が予告していただけあり、わくわくと書き進めている心弾みが伝わってきます。 新機軸として目につくのはまず、風野真知雄小説でおそらく初めて、ヒーローではなく、女性がメインの主人公であること。ヒロイン静湖姫は、落としだねの織江とは違い、平戸藩の松浦静山公の嫡子のお姫さまです。美貌なのに、なぜか求婚者がつぎつぎと不慮の死をとげ、縁遠くなって、三十一才の春を迎え、自分も市井の人に負けずに「働かねば」と思いつき、たまたま出会った殺人事件の解決に乗りだします。 父の「甲子夜話」などもひもときますし、傑物である父と自由に親子の語らいもできる、恵まれた立場のお姫さまです。おっとりとしてスケールが大きく、また父ゆずりの勘とユーモアに恵まれ、護身術に長けている半面、和歌などの教養にはうといアンバランスぶりがほほえましい。 しかもなんと占いで、三十八万四千年に一度という「モテ年」に当たってしまったと言われ、この巻だけで、歌人、同心、瓦版屋、発明家、豪商、戯作者など六人の美男やいい男たちに惚れられてしまいます! 女性読者にとってはまことに楽しいシリーズの幕明けです。 もうひとつの見どころは、歴史小説的考証にこだわらない、「ネオ時代小説」ともいうべき自由な趣向やアイデアが持ち込まれていることです。『女だてら』のシリーズもそうでしたが、現代の風俗や考え方をなにげなく(いや、堂々と)織り込み、せりふはますます現代語の、ちょっと不思議な江戸時代になっています。 冒頭、静湖姫は、広小路のおかま居酒屋で飲みながら、新年を迎えますが、なにげにゲイバーに出入りするお姫さまとおかまたちの交流、そして新たにつけられた警護役の若侍、たよりなさそうなくせに、佐々木小次郎の秘伝書から「燕渡り」を開発したという岡田博之助との漫才道中など、のっけから、心地よく暖かい風野真知雄世界が展開します。もちろん『くノ一』シリーズに出てきた彦馬その他の面々の思い出も語られますし、風野真知雄本の真髄ともいえる、天然のユーモアは冴えまくり。 この本は大丈夫だろうと思い、車中で読み出したのですが、最初のほうで静湖姫が初めて三十一文字を習いに出かけ、凄い美貌の歌人の師匠の前で、必死に57577をひねっているところへ、殺人の報が。無我の境地の姫君は、そのことまで歌に織りこみ・・・そのあたりで、あまりのおかしさに吹いてしまいました。 ほかにもいろいろ「和歌」のはずのものが出てきますが、ほぼ口語の現代短歌です。なのにまったく違和感がありません。ひとつの作品世界をつくりだす腕にぶれやゆらぎがなく、確信をもって語られているため、リアリティの強度が高く、安心して読みすすめられます。これが作者の人気の秘密だなと改めて感じました。 彦馬のような男性とすばらしい恋をしてみたい、と夢見る静湖姫はこれからも父ゆずりの才覚で、あちこちの謎に首をつっこんでゆくのでしょうが、その謎解きとともに、いったいだれが姫の心を射止めるのか。そちらの興味も尽きません。 どのキャラクターも肩の力が抜けた自在な動きぶりが心地よく、一番好きなシリーズになりそうな予感がします。 | ||||
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