(短編集)
幻を追う男
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本書は、BBC(英国国営放送)によって、1939年~1941年に放送されたカーのラジオドラマ3作品をまとめたもの。初めの2作(①「だれがマシュー・コービンを殺したか」(104頁)、②「あずまやの悪魔」(55頁))にフェル博士が登場し、③「幻を追う男」(144頁)は1816年の摂政時代の英国を舞台にした作品になっています。カーのラジオドラマは、小説のややもすると口説いともいえる記述の部分がなく、その性質上、セリフと聴覚的な状況説明(ト書)に絞られていることが逆に、謎や雰囲気を明確にしてくれて、私は好き。①は、読んでいるうちに、「これって刑事コロンボの時に出てきた、あの・・・」と思い始め、それを念頭に読んでいったら、とても楽しめました。しかも、被疑者の首に刻々と縄が絞められていく手に汗にぎるサスペンスと予想だにしない結末には脱帽でした。②は、事件発生時の登場人物の動きが不自然で私にはちょっと理解しがたい作品。2回読んでみましたが、印象は変わりませんでした。③は、ロマンティックな冒険とミステリーを上手くミックスした秀作。読んでいるうちに一部謎は分かってきますが、それ以上に登場人物に感情移入できるので、とても面白かったです。 全ての作品がお気に入りという訳ではありませんが、読んで損はない一冊だと思います。(2006年初版、2100円) | ||||
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フェル博士ものの短編二編と、歴史ミステリの中編一編のシナリオを収録。 用いられているトリックはシンプルあるいは牧歌的なものばかりです が、手がかり(伏線)の提示に、カーらしい工夫が凝らされています。 ■「誰がマシュー・コービンを殺したか?」 南アフリカから、二年ぶりに帰国したジョン・コービン。 帰りの船で知り合ったメアリーとすぐに婚約したジョンは、 二人の兄――マシューとアーノルド――と、いとこのヘレン が暮らす屋敷に、メアリーとともに向かう。 しかし、二人が屋敷に到着すると、マシューが何者かに射殺されていた。 容疑者はジョン、メアリー、アーノルド、ヘレンの四人に絞られるのだが……。 かなり単純な事件であるにもかかわらず、解決までの道行きがやや冗長。 とはいえ、最重要な手がかりを大胆に提示しながらも、その意味を読者に 気取らせないテクニックが巧妙ですし、予想外のところから、犯人を登場 させる趣向もしゃれています。 ■「あずまやの悪魔」(オリジナル版) 1916年、自宅のあずまやに一人でいたバーナム大尉は至近距離から 左のひたいを撃ち抜かれて――火薬の焦げあとがある――殺された。 当初は大尉の不倫に嫉妬を募らせた妻の犯行のようにも思われたが、 彼女は犯行時、あずまやから離れた母屋に友人とともにいたという アリバイがあった。ほかに犯行可能な容疑者も見つからず、事件は 迷宮入りしてしまう。それから、25年の月日が流れ……。 ストレートなハウダニット(アリバイ崩し)。なお『黒い塔の恐怖 』に 収録された同名タイトルの作品とは、内容がかなり異なっています。 ■「幻を追う男」 ウォータールーの会戦から一年経った1816年の英国。戦争で頭に傷を負った オースティン大尉は、戦争が始まる三日前に、リッチモンドの舞踏会で、一度 会っただけの女性のことを片時も忘れることができなかった。 出会いの後、彼女は名前も告げずに姿を消し、その後彼女の“守護者”だという 黒衣の男が現れ、「あの女性を見たことなど忘れてしまいたまえ」といった警告 を残す。 大尉は、彼女が落としたミニアチュールを 頼りに、彼女を捜し求めていたのだが……。 “幻の女性”を探求する歴史ミステリ。アクロバティック、もしくは 牧歌的なあるトリックが可笑しい(きっちり伏線は張られていますが)。 | ||||
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不可能犯罪の巨匠カーの生誕100周年を記念して初期ラジオドラマの秀作3本を収録した日本オリジナル企画出版集です。未訳長編も全て翻訳が完了した現在、こういった眠っている作品の発掘はファンにとって、とても喜ばしい驚きです。 『だれがマシュー・コービンを殺したか?』名探偵フェル博士にインタビューする形で進む記念すべき初ラジオ・ドラマ作品です。語り=騙りを実践するような非常に大胆な叙述トリックが見られます。善良そうな女性が罪を宣告され、視聴者をハラハラドキドキさせる人間ドラマとしても優れています。最後に展開する意外な演出も見事です。『あずまやの悪魔』再びフェル博士が登場して、あまりにも明白過ぎて、却って解り難くなった謎に挑みます。犯人の冒した不自然な失敗が墓穴を掘ります。『幻を追う男』カーお得意のロマンチシズム溢れる時代ミステリーです。ナポレオン戦争時代の1816年を舞台に主人公の大尉が、絞首刑に処された筈の女性を追い求める物語です。皆から白昼夢を見たのではないかと馬鹿にされながら、大尉は信念をもって追い続けて遂に幸せを手にします。分量的にもドラマチックな面白さにおいても本書中では、やはり一番の出来栄えの作品といえるでしょう。 全体的にはトリックは小説に比べると構成における制約を受けざるを得ず、最良の物とはいえませんが、著者がとても楽しんで書いている様子が伝わってくる意欲満々の完成度の高い作品集だと思います。 | ||||
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カーの書いたラジオドラマ3本を集めた作品 「あずまやの悪魔」は1回ですが 「誰がマシュー・コービンを殺したか」は3回 「幻を追う男」は8回のラジオドラマで 次回につなげるために毎回の終わりは 続きがきにかかる手に汗握る展開が待ち受けているという優れもの。 「誰がマシュー・コービンを殺したか」のラジオドラマならではの意外な犯人 「幻を追う男」の歴史活劇と調和した、 不可能犯罪物(しかも、死者が甦るという怪奇趣味も)をあわせた 意外なドラマ集になっています。 | ||||
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