(短編集)
さすらいのキャンパー探偵 見知らぬ町で
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中編小説とは、長編でもなければ短編でもない。そうつくづく思わせるのが、このキャンパー探偵シリーズである。長編小説ほど人物に入れ込める時間は読者に与えられないものの、短編小説よりは人間の個性が印象深く刻まれ、凝結された個々の人生の長さや深さとが体感できる。長編小説に書き換えることができるのではないかと思えるほどに、複雑にすれ違ったり、交錯したりする人間たちの人生模様が、探偵・辰巳翔一の眼を通して、あたかも一時的に垣間見る風景みたいに、いともあっさりと通り過ぎてゆく。 その一瞬に込められた人生の悲喜劇を目撃しては去ってゆく、探偵そのものの存在すらも儚く思われ、一時的な幻の風景みたいに思えてしまう。だが辰巳は、その事件をこそ語れど、自分がどう影響を受けたのかは決して語らない。ただ風のように現れ、そして風のように去る。そこに関わり過ぎぬことが重要であるかのように。だからこそ、彼の感傷は彼の生きざまの一片となっていくつもの物語に寄り添い続けるのではないだろうか。 時間軸がわからなくなるほど永く編み上げられてきたはずの個人の人生を、中編という形でほんの数日を描くことのみで表現する技術、というべきものが、本シリーズではどの作品にも見られる。罪深き人たち。心優しき人たち。癒されし人たち。多くの彷徨える魂が、物語の中で、探偵の前で、100ページくらいの読書の間だけ立ち現われる。 そして物語の終わるところに残るのは、人間の生きざまのそれぞれの悲しみと、残された温もり、優しさなのである。物語ごとに、旅するワーゲンバスに乗った辰巳翔一が、異なる場所に降り立っては、事件と関わってゆく。そして解決するのは事件でありながら、もっと大事なのは、彼のような立場のさすらい人が、にっちもさっちもゆかなくなり立ち止まったままの人々の心のもつれを、丁寧に解きほぐし、次なる選択肢を見せてあげることなのだろう。 愚かだったり、愛情と憎悪をうまく扱えなかった人間たち。彼らの葛藤によって生じる悲劇は、どの作品の中でも張り詰めた導火線のように見える。語られる人の行動の不思議さや、運命の悪戯など、その多様さには限りがないかに思われる。このシリーズは、きっともっと書き継がれてゆくのだろう。辰巳翔一は探偵技術こそ経験上有してはいるものの、特段のスーパーマンではなく、ぼくらの周りにもいそうな、心優しい、酒と旅の好きな、読者等身大の主人公である。自分のことのように物事を観て生きるその姿勢は、扱われる事件や物語を通して、きっとこれからも多くの読者の共感を得てゆくことだろう。 | ||||
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※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります 経緯はどうあれ,事件に関わることになり,最後は解決にまでたどり着くのですが, 本当の解決は当事者たちで為されるものであり,決して描かれることのないそのあと, 探偵が町を離れる一方で,そこに残る人々に複雑な思いを抱かせられるのが印象的です. その去り際も,独特の間とふと漏れる言葉,さらにはコーヒーや音楽といったものが, じわりと寂しさを漂わせ,知らない場所のはずなのに,その景色を浮かび上がらせます. また,前巻では薄れていたキャンパー描写が,本巻で少し戻っていたのには思わずにやり. 反面,これはシリーズを通してなのですが,人間関係がやたらと複雑で理解しづらく, 親兄弟に親戚,しかもそれが複数となるため,肝心なところで戸惑うことがたびたび…. なお,三ヶ月連続刊行の最後の巻でしたが,シリーズとしてはこれからも続く模様です. | ||||
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