ミステリの感想 新着順

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全74件 51〜74 2/2ページ
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誰も幸せには生きていない、ディープ・サウスの町の悲劇

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デビュー作でありながら、2024年度のMWA賞最優秀新人賞を受賞した作品。バージニア州の忘れられた田舎町で起きた殺人・放火事件を巡るドロドロの人間関係を描いたノワール警察小説である。バージニア州の大都会リッチモンドから10年ぶりに故郷に戻り保安官補になったウィルは火災現場に遭遇し、焼け跡から旧友のトムの焼死体を発見した。その場で、現場から逃げようとした古い知り合いのジークを逮捕した。しかし、解剖によりトムが刺殺された後で証拠隠滅のために放火されたことが判明し、旧知のジークの仕業とは考えられなかったのだが、ミルズ保安官はジーク犯人説を譲らなかった。ジークの妻ばかりかトムの母親もジークの犯行を信じず、私立探偵のベニコに調査を依頼した。ジークを信じるウィルも保安官に逆らい、ベニコと共に独自の捜査を進めることにした…。近代化が進むバージニア州で見捨てられたような町に住む人々は、町を覆う閉塞感に苛まれ息苦しい人生を送っていて、その矛盾や葛藤が事件として噴出したのである。この設定、舞台装置は南部ノワールの基本型で目新しくはないが、主役を勤めるウィルとベニコの設定が上手い。二人は互いに話したくない過去を引きずり、重苦しく、出口がないような町でドロドロの人間関係を悩み、傷つき、それでも何とか正義感を持ち続けようとする。暴力の力とそれでは解決されない人の苦悩が、本書の読みどころである。ノワール、警察小説のファンにオススメする。

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怪奇ホラーの手前で踏みとどまっているのが良い。

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デイリーミラー紙の新人賞とCWA新人賞で最終候補になり、いくつかの賞を受賞したイギリス女性作家のデビュー作。犯罪史や生物学、解剖学に没頭する13歳の少女が同級生の死体を発見したことから街を震撼させた猟奇殺人の謎を解くダーククライム・ミステリーである。交通事故で死んだ動物を収集した死体置き場を作り、死がもたらす変化を冷静に観察・記録するエイヴァが見つけたのは同級生でいじめっ子のミッキーの死体だった。放置して置けないと思ったエイヴァは大人の声色を使って警察に通報する。デライエ刑事部長が指揮するチームが捜査に乗り出したのだが、ほどなく行方不明だった少年の死体が見つかった。さらに奇妙なことに、どちらの死体にも首に深い咬み傷がつけられていた。その後も同様の事件が発生し連続猟奇殺人事件の様相を呈してきた。さらに街では人間とも獣ともつかぬ怪物の目撃情報が相次ぎ…。自分の知識だけを武器に真相解明に乗り出すエイヴァの存在が際立つ。従順な親友のジョンを助手に独自の調査と推理を展開し、ときにデライエ刑事部長に的確なアドバイスを送るだけでなく、いざとなると自ら渦中に飛び込んでいく。それでいながら、時折は思春期の少女らしさも垣間見せる。これまでのミステリーにはなかった特異なキャラクターで強烈な印象を残す。さらに怪物としか言えない犯人の性格が形作られる過程の解明も、また考えさせられるものがあった。怪奇ホラーに堕することなく、社会派ミステリーの味わいもあるエンタメ作品として、自信を持ってオススメしたい。

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人はそれぞれの過去を背負って生きていく

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「元刑事コーク・オコナー」シリーズで人気のクルーガーのシリーズ外作品。ミネソタの森林地帯の田舎町を舞台に、まだ戦争の傷が癒えていない人々のドラマを描いたヒューマン・ミステリーである。1958年、ミネソタの田舎町の川で大地主であるジミーの射殺死体が発見された。ジミーは町一番の悪名高い男で、その死を残念がる人はいなかったのだが、ジミーの農場で働いていた先住民のノアが容疑者に浮上すると人々は一転し、町は一気に憎悪に包まれた。保安官・ブロディの調べにノアは一切応えようとはせず、無実を主張することもなかった。状況証拠は圧倒的にノアの有罪を示しているのだがブロディは納得できず、事件を起こした要因を丁寧に掘り起こして行く…。まだ戦争の記憶が生々しく残る時代、ミネソタの田舎町でも人々はそれぞれの傷跡、葛藤を抱えつつ必死で生きようとしていた。そこで生まれる緊張や憎悪、軋轢、あるいは情愛を作者はドラマチックに描き出し、静かながらも奥深いストーリーが展開される。物語の基調には社会的不公平、不正義、戦争への強い怒りが窺える、骨太の社会派ミステリーである。読み終わった後、さまざまな思いが生まれる傑作であり、多くの人にオススメしたい。

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26年ぶりに復活!

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久しく邦訳が途切れていた「マイロン・ポライター」シリーズの第12作。日本では第7作「ウィニング・ラン」以来の復活で、オールド・ファンには懐かしく、シリーズ未読の人にも違和感なくその世界に入っていける極上ミステリーである。スポーツエージェント兼探偵であるマイロンの事務所に来たFBI捜査官が「グレグ・ダウニングの居場所を教えろ」と言ってきた。グレグは三年前に東南アジアで死亡し、マイロンは追悼式に出ている。戸惑うマイロンに、FBI捜査官はグレグは元スーパーモデル殺害の容疑者で、現場には彼のDNAが残されていたと告げた。やむを得ずマイロンはグレグが死を偽装して身を隠したのか否か、共同経営者のウィン、元同僚で弁護士のエスペランサの手を借りながら真相を探り始める…。学生時代からバスケットのライバルで私生活でもさまざまな因縁があるグレグは、なぜ姿を消したのか? 同時に元スーパーモデル殺害から徐々に明らかになってくる連続殺人の犯人は誰か? 二つの真相解明ストーリーが絡み合いながらテンポ良く繰り広げられ、先が読めない展開にワクワクさせられる。さらにマイロン個人やグレグの家族関係・人間関係が話の奥行きを広げ、物語性を深めている。シリーズ未読でも戸惑うことはない。P.I.もの王道を行くエンターテイメント作品であり、多くの人にオススメしたい。

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