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陰獣 さんのレビュー一覧

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レビュー数2

全2件 1~2 1/1ページ

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No.2: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

記号を喰う魔女 FOOD CHAINの感想

ここのところ、浦賀和宏の安藤直樹シリーズを一から精読している。
本書はシリーズ作品の中でも一線を画す毒気とタブーとに満ちた内容であり、
あまりの凄惨且つ陰鬱な描写は読んでいて気分が悪くなる程である。
その点において賛否は分かれる内容であることは間違いないが、
安藤直樹シリーズとして読めば、ある種平常運転であるとして割り切れると思う。
また、本書は安藤直樹シリーズと言いつつも、実は安藤直樹の姉・裕子の物語であり、
同じく裕子の物語である『時の鳥籠』がシリーズ内で最も好きな作品である私にとって、
最後まで高揚したまま読み進めることができた。

本書は、カニバリズムとクローズドサークルとを包含したホラーミステリであるが、
その体裁は青春小説の体裁を取っている。
また、本シリーズはミッシングリンクしているため、
以前のシリーズ作品から通読している読者にとっては、
本書に散りばめられた様々な要点に嬉々とすること間違いないだろう。
そして、食人文化についての民俗学的知識が衒学的すぎるほどに盛りだくさんなので、
ある種その方面の研究書のような側面もあり為になった。
記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)
浦賀和宏記号を喰う魔女 FOOD CHAIN についてのレビュー
No.1: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

まとめ読み一冊目

コロナ禍ということで、前々から気になっていた飛鳥部作品を一気読み。
一冊目は、まずはデビュー作から。
総評としては、図像学(イコノグラフィー)とミステリーを組み合わせた作品ということで、
当時の鮎川哲也賞では審査員満場一致で入選したと聞く。
当時からしてもこの試みは画期的であっただろうし、今読んでみても色あせない魅力を感じる。
また、図像学を抜きにしてもミステリー小説として完成度が高く、物語終盤に至って真相が二転三転するさまは見事。最後の真相には正直驚いた。
(氏の他の作品もいくつか読んでみたが、多重解決とどんでん返しが終盤に盛り込まれた作品が多いようで、氏がミステリーを書く上での一つの手法になっているのかもしれない)

また、飛鳥部作品ならではの「退廃した世界」と「薄幸の少女」も健在。後の作品では幻想的な雰囲気やより崩壊した世界感の要素が強まっていくが、デビュー作である本作の段階では、まだその辺りは抑え気味であり、少なくともある程度のミステリーファンにはオススメできそうな作品である。
核となるトリック自体は、ややバカミス寄りではあるものの、近年の本格ものにみられる「単調なストーリー」「書き分けの出来ていない登場人物」といったマイナス点は一切無く、
むしろ個性的なキャラクターと、ミステリーを抜きにしても面白い純文学的な文章が体現されている。名作。
殉教カテリナ車輪 (創元推理文庫)
飛鳥部勝則殉教カテリナ車輪 についてのレビュー