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陰獣 さんのレビュー一覧

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レビュー数4

全4件 1~4 1/1ページ

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No.4:
(10pt)

生まれ来る子供たちのために But,we are not a mistakeの感想

考えうるなかで最も醜悪な結末を迎えたシリーズ最終作。上記の評点は、シリーズを通しての点数である。主人公とヒロインごとにマルチエンディングが設けられているが、何れもシリーズを通読してきた者であれば、目を蔽いたくなるような帰結へと向かっていく。どこで間違えたのか、どのようにすればこの結末を避けることができたのか。本巻の末章を読んだ読者は、必ずその疑問に向き合うことになるであろう。そして再度このシリーズ全体に向き合い、立ち返り考え直す必要性が希求されるのである。そして思うであろう、「本シリーズは『復讐』の是非について度々論じられていたが、彼ら彼女らが決断した『復讐』とは、果たして正しい行為であったのか」。様々な視点から描かれる登場人物の行為を問題として提起し、それを我々が生きる現実へと反映させることができる、或いはそれを目的としていたようにも思われるが、兎も角、浦賀作品の集大成ともいえるシリーズであったことは間違いない。
ただし、過激な表現、易々とタブーに触れる姿勢など、無辜の万人に勧めることのできる作品ではないが、できるならば若い感性が新鮮なうちに読んでいただきたいシリーズである。早期の復刊を望む。
生まれ来る子供たちのために (講談社ノベルス)
No.3: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

記号を喰う魔女 FOOD CHAINの感想

ここのところ、浦賀和宏の安藤直樹シリーズを一から精読している。
本書はシリーズ作品の中でも一線を画す毒気とタブーとに満ちた内容であり、
あまりの凄惨且つ陰鬱な描写は読んでいて気分が悪くなる程である。
その点において賛否は分かれる内容であることは間違いないが、
安藤直樹シリーズとして読めば、ある種平常運転であるとして割り切れると思う。
また、本書は安藤直樹シリーズと言いつつも、実は安藤直樹の姉・裕子の物語であり、
同じく裕子の物語である『時の鳥籠』がシリーズ内で最も好きな作品である私にとって、
最後まで高揚したまま読み進めることができた。

本書は、カニバリズムとクローズドサークルとを包含したホラーミステリであるが、
その体裁は青春小説の体裁を取っている。
また、本シリーズはミッシングリンクしているため、
以前のシリーズ作品から通読している読者にとっては、
本書に散りばめられた様々な要点に嬉々とすること間違いないだろう。
そして、食人文化についての民俗学的知識が衒学的すぎるほどに盛りだくさんなので、
ある種その方面の研究書のような側面もあり為になった。
記号を喰う魔女 (講談社ノベルス)
浦賀和宏記号を喰う魔女 FOOD CHAIN についてのレビュー
No.2: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

まとめ読み一冊目

コロナ禍ということで、前々から気になっていた飛鳥部作品を一気読み。
一冊目は、まずはデビュー作から。
総評としては、図像学(イコノグラフィー)とミステリーを組み合わせた作品ということで、
当時の鮎川哲也賞では審査員満場一致で入選したと聞く。
当時からしてもこの試みは画期的であっただろうし、今読んでみても色あせない魅力を感じる。
また、図像学を抜きにしてもミステリー小説として完成度が高く、物語終盤に至って真相が二転三転するさまは見事。最後の真相には正直驚いた。
(氏の他の作品もいくつか読んでみたが、多重解決とどんでん返しが終盤に盛り込まれた作品が多いようで、氏がミステリーを書く上での一つの手法になっているのかもしれない)

また、飛鳥部作品ならではの「退廃した世界」と「薄幸の少女」も健在。後の作品では幻想的な雰囲気やより崩壊した世界感の要素が強まっていくが、デビュー作である本作の段階では、まだその辺りは抑え気味であり、少なくともある程度のミステリーファンにはオススメできそうな作品である。
核となるトリック自体は、ややバカミス寄りではあるものの、近年の本格ものにみられる「単調なストーリー」「書き分けの出来ていない登場人物」といったマイナス点は一切無く、
むしろ個性的なキャラクターと、ミステリーを抜きにしても面白い純文学的な文章が体現されている。名作。
殉教カテリナ車輪 (創元推理文庫)
飛鳥部勝則殉教カテリナ車輪 についてのレビュー
No.1: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

いやあ、笑った

よくまあこんな本を書き上げたものですね…
著者の苦労が伝わりました。
三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)