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osod さんのレビュー一覧
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良くも悪くも、島荘らしい大胆な作品で、トリックは圧巻である。
ミステリ(特に本格)で起きる事件には、大きく分けて2パターンある。1つ目が、一見その場にいた誰にでも犯行が可能そうで、そこから様々な条件を使って犯人を割り出していくパターン。もう1つが、事件自体が不可能性を孕んでおり、普通に考えるとその場にいた誰にも犯行ができそうにないパターンである。ただ、前者であれ、後者であれ、一番注目されるべきは「フーダニット」であり、「ハウダニット」や「ホワイダニット」は、あくまでそれを支える存在でなければならない、というのが私のスタンスである。 それでいくと、この作品は、他の島田荘司作品宜しく、後者の不可能性を孕んだ事件が主体で、その不可能性・トリックの面白さともに素晴らしいのだが、全体を通して「ハウダニット」に偏重しすぎており、「フーダニット」がどうでもいい感じになっているのが、残念な点ではある。 また、御手洗登場までが長すぎるためにやや中盤ダれる印象がある。というのも、御手洗登場までの探偵役が、本格ものによくいるタイプの典型的な「できない刑事」で、口を開けば「もう駄目だ」だの「お手上げだ」だの推理がほとんど進展しない。そのため、事件は起こるが推理はずっと平行線、という何とももどかしい状況が続いてしまう。ただその分、御手洗登場後のテンポが凄まじく、御手洗の天才性もより一層強調されるというメリットもあるのだが……。 このあたりは、天才すぎる探偵が持つ1つのジレンマだと思う。かのメルカトル鮎が自分のことを「長編には向かない探偵」と称していたが、御手洗潔もメル同様に長編(特にクローズドサークルもの)には向かない探偵であることは間違いない。この作品でも、御手洗がはじめから流氷館に行っていれば、恐らく第一の事件の時点で犯人を突き止め、そこで話が終わってしまうことになる。第2、第3の殺人が起きるのを許してしまっては、御手洗潔のイメージを大きく損ねることになりかねない。つまりは、筆者にとって、探偵の圧倒的天才性は、大きな武器であると同時に、大きな枷、泣き所でもあるのだ。 そう考えると、この作品の演出は、御手洗潔という天才を登場させるためには致し方ないもので、御手洗登場までのテンポの悪さは云わばその代償のようなものであろう。 ただ、そういう面を差し引いても、本作が十分面白い作品であることは間違いない。トリックはもちろんのこと、そのトリックを必要とする事件の不可能性、御手洗のキャラクター、石岡くんとのイチャイチャ等、楽しい要素は盛りだくさんで、読んで損することはないだろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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