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驚愕冬彦 さんのレビュー一覧
驚愕冬彦さんのページへレビュー数6件
全6件 1~6 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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4作とも独立した物語であり、主人公の立場も全く異なる。警務官、前科のある男、地方新聞の事件記者、裁判官・・・不意に彼らの足場が揺らぐところから各々の物語が始まる。
人間とは誘惑に弱い生き物だなぁとしみじみ思ってしまった。それは他者から与えられる甘い言葉だけでなく、己の心の中にもあるもの。つい安易な方向へと行きたがる、己に都合の良いように考える、悪いのは自分じゃない○○だ・・・などなど。なんでも自分に擬えるのは気色ワルイ読み方かも知れないが、やはり身につまされる部分は多い。 そして、主人公たちは、それぞれが何かを失くす。失うのは組織への(もしくは個人への)信頼であったり、野心だったり・・・安寧だったり、希望だったりするのだが、最後に失ったものの代わりに何かを手に入れる・・・と言ってしまうと綺麗事にすぎるかも知れない。失わなかったもの、手の中に残ったものに気づく。それは、救いとすら言えないほど、ささやかなものだったりする。明日は今日と変わらず苛立ちやら失望に満ちているだろうが、それでも「人生まだ捨てたもんじゃない」と思わせ、何かしら噛みしめるものを与えてくれる佳作ぞろいである。特に表題作のぴりりとした緊張感と、ラストの清涼感は秀逸。 |
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【ネタバレかも!?】
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初読である。「作家アリス」シリーズは殆ど読破しているのに「学生アリス」シリーズは手に取ったことがなかった。非常に楽しかった・・・久しぶりに純粋な意味でのロジック・ミステリの長編を堪能した。有栖川有栖氏の簡潔にして明快な文体は、すらすらと頭に入ってきて・・・奇態な世界観を呈することもなく、マニアックな薀蓄に走ることもない。全てが「ミステリ」のために設えられている、と感じる。嵐のせいで孤立した山奥の芸術家コミュニティ・・・鍾乳洞の奥の異様な殺人現場・・・断絶した河の反対側で起こった別の殺人・・・「読者への挑戦」など、さらりと読み飛ばしてしまう自分が情けないが・・・精巧で繊細なパズル・・・というよりも積み木の塔のように、ロジックが組みあがっていくのを呆けたように眺める歓びは快感ですらある。
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素晴らしい落としは「お見事!」の一言。久しぶりの爽快感だった。物語の結末は悲惨としか言いようがないのだが。惜しむらくは、犯人視点での殺人の描写も、今となっては斬新とは言い難くなってしまったこと・・・もっと早く読んでおけばよかった。「狂気」というものに何かしら強烈なイメージを持つのは先入観かも知れないが・・・本作の犯人にはどこかしら醒めたような、乾いたようなものを感じてしまう。ただ単に自分が掴みきれてないだけなのか。それよりも、主要な登場人物全てに感じた、他者との関係性の希薄さ・・・「愛している」と言いながら、好意を抱く異性を意識しながらも・・・誰もが己だけの世界から出てこようとはしないような気がするのは穿ちすぎだろうか。殺戮にいたった犯人の心情よりも、そちらに薄ら寒いものを感じてしまった。
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【ネタバレかも!?】
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作者のデビュー作でもある本作は、後にシリーズとして続く他作品よりも、シンプルで読みやすい。シリーズ未読の方は、本作から読まれることをお勧めする。「母」の物語、である。過去に在りし「母」、現在を生きる「母」、在るはずだった「母」、在るはずのない「母」・・・「母」に対する憎悪はもちろん、愛情すら歪んで悲劇を招いてしまった。そんな感想を得たのは再読だからだろう。初読の時には装飾的に散りばめられた薀蓄と、猟奇的な謎と、ケレン味たっぷりの『憑き物落とし』の演出に夢中で読み進めていたように思う。発表当時は物議を醸したらしいメイントリックも、現在となって目くじらを立てる読者も少ないのではないか。このトリックが暴かれた時、度肝を抜かれたというか、顎がかくんと落ちたというか・・・その感覚をまた味わいたくて、今もなお作者の新作を待ち続けている。物語が終焉を迎える場面(小説のラストという意味でなく)は実に儚く美しく・・・失われてしまった諸諸のものに思いを馳せずにはいられない。
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タイムリミット・サスペンス! あれよあれよと言う間に4人の人間が殺される。それも、トンデモなく残虐な方法で。その重要参考人として追われるアンチヒーロー型の主人公・八神は詐欺だの恐喝だのは日常茶飯事の小悪党だが、一念発起の末に骨髄移植のドナーとなり、明朝に骨髄を採取する手術を控えている身・・・とにかく明日の朝まで逃げ切らなければレシピエントの命に関わる、という設定で一気に主人公に感情移入できてしまう。ハリウッド映画ばりのノンストップの逃亡劇と同時進行で、トンデモ連続殺人の捜査が展開していく。現実離れした殺害現場の描写とは裏腹に、被害者の背後関係はきな臭さアリアリ。どう着地させるのか楽しみで、ついついページを繰ってしまう。闇に葬られてしまう部分もあるが、それはこの小説が担うところではないのだろう。とにかくスピード感が心地よく、読後感もすっきりと気持ちが良い。
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この手のジャンルは読み慣れていないが、かなりの長編にもかかわらず面白く読めた。作中、時期はズレているものの5件の殺人、1件の心中、自殺が2件、傷害(殺人未遂か?)が2件・・・様々の事件が錯綜して、登場人物の多さとも相まってちょっと頭が混乱するが、途中でそれらの関係性は単純な意味でなら読む側には見えてくる。後半まで残るのは「なぜ?」という部分。「なぜ彼が/なぜ彼らを」。ミステリというからには、それを知りたいがためにページを繰ることになる。国家権力のドロドロとした思惑と、対比するかのようなマークスと名乗る殺人者の清冽さが鮮やか。彼のために用意された美しくも美しいラストに息を呑んだ。
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