ロード・エルメロイII世の事件簿 case.魔眼蒐集列車
評判
ロード・エルメロイII世の事件簿 case.魔眼蒐集列車の評価:
4.71/5点 レビュー 7件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1〜12 1/1ページ
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ロード・エルメロイII世の事件簿 case.魔眼蒐集列車の評価:
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もちろん、魔術師たちが綺羅星のごとく登場し、その活躍は別のエピソードとして本編の聖杯戦争などにつながっているが、実際のところ、ロード・エルメロイ2世は二流の魔術師でしかなく、仮に再びイスカンダルを召喚して聖杯戦争に参戦しても、彼のいうところのマスターが二流だから最高の英霊であるイスカンダルは勝利できなかったという事実をもう一度再現するに過ぎない。彼の韜晦は自身がすでにマスターとして終わった存在であることを認めている。認めていながら認めたくないという心象を乗り越えるのがこのエピソードと言えよう。
物語として細かく読んでいくとアニメとの違いが目立つ。あらすじも結末も変わらないが、テーマの扱いに大きな差がある。これは良し悪しではなく違いだ。アニメでは聖遺物を盗まれたロード・エルメロイ2世が第5次聖杯戦争への参戦を果たすためにも真犯人を見つけ出し聖遺物を奪還するということがテーマになっている。だからこそ、エピローグでのおそらくは夢の中での邂逅が必要になった。
小説ではもう一つ重要なテーマがあり、魔術と魔術師にとって見るということ自体の重要性を語っている。まず、見るということ自体が最古の魔術であり、神秘として固定したのが魔術師の始まりとなる。当然のことながら、登場する魔術師たちは皆、見ることにある種の十字架を背負わされている。トリシャとカラボーは魔眼の持ち主であり、へファイスティオンも同じく魔眼を持つ。グレイは質は違うが墓守として死者を見る。ロード・エルメロイ2世が見ているのはイスカンダルとの臣従の場面であろうし、へファイスティオンにとってイスカンダルが目指した彼方の海は百の感情をないまぜにしたままだろう。カウレスにとって消えた姉の影は目から離れることはないし、物証を届けたライネスも魔眼に悩まされながらエルメエロイ派の再建を目指す。
そして何より、これはアニメでは語られなかったが、魔眼蒐集列車のスタッフたちの見る景色は旅立った支配人の姿をひたすら追うものだ。その有様は忠節というしかなく、彼らの本質はロボットや使い魔なのかと思わせるほどだ。死徒という魔術師たちとも一線を画す存在だけに、その行動原理は謎が多い。当然、魔術師たちとの共闘など本来は難しい。実は彼らこそロード・エルメロイ2世がイスカンダルの影を追うのと似た生き方をしている。
似ているからこそ、アニメでは省かざるを得なかったのだろう。魔眼大投射はレールツェッペリンの切り札だが、死徒との闘いという彼ら自身の敵以外に向けられるものではない。共闘に見えて利害も一致はしていない。極端に言えば魔眼大投射で乗客が犠牲になっても構わないだろう。しかしそのあたりはアニメではうまく隠されている。つまり同じテーマで主人公と話の上で絡んでいくには彼らの立場は隔絶しており、絵にすれば対立する背景に触れざるを得なくなる。1クールの限界に直面しての取捨選択だったのだろう。それがアニメのあの感動のエピローグを生んだともいえる。これは構成と脚本担当の手腕だ。
一方で小説はこうしたそれぞれの登場人物達の見るものを丁寧に綴ることで、最後の戦闘シーンを格別なものとしている。何より、見る事によって攻撃を封じられたへファイスティオンと、見る事から解放されたカラボー神父の激突はこの物語の本質を象徴している。
周知のこととして、ロード・エルメロイ2世は第五次聖杯戦争には参戦しなかった。できなかったのではない。いかに借金まみれでも面白いことにはお金を出す、自称ひとでなしのメルヴィンはスポンサーとなることを辞することはないだろう。しかし今回、ロード・エルメロイ2世は第5次聖杯戦争に参加しないことを選択できた。
これは、第4次聖杯戦争で生き残った、自意識過剰で未熟で臆病なウェイバー・ベルベットが、かつて征服王から覇道の芽生えを指摘され、英雄王にその忠節を賞された過去から、自らの覇道を自覚し王への忠節を形にするべく、ロード・エルメロイ2世として改めて未来に一歩を踏み出す物語である。
さて、一つだけわからないことがある。真犯人は一体、何を見たのか。これがロード・エルメロイ2世のいうところの事件の続きなのだろう。