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神の子の密室(イエス・キリストの密室)



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神の子の密室(イエス・キリストの密室)の評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

謎は謎のままの方がいい時もある

本書は前書きにも書かれているように小森氏が調査に携わっている1945年にエジプトのナグ・ハマディで見つかった古文書群のうち、イエス・キリストについて書かれた雑記を基に物語形式にされたものだ。小森氏によれば、他の記録に関しては公表されているのに、このイエスに関する記録については50年経った今(1997年当時)も公開される模様がないので彼はミステリという体裁を取って公表しようとしたのが本書に当るとのことだ。

したがって本作は厳密な意味ではミステリではないだろう。
前の『ネヌウェンラーの密室』でも書いたが“ミステリ”というよりは“ミステリー”に近い。すなわちキリスト復活という非常に有名な奇跡の謎について書かれたものだ。

本作で語り手を務めるエジプトの通商隊の通訳兼雑用係の私はそのまま件の古文書の記録者であるらしく、この物語で書かれた彼がイエスについて様々な人々から聴取した内容は事実であるらしい。
その内容は商売の理解者、東方思想の伝達者、医者、弱者の味方、神に愛される者という賛美の意見から、手品師、臆病者、夢見人、詐欺師と卑下する意見がほぼ同数であり、それぞれの属する立場による己の規範での評価で見方が変わる人物像であったようだ。

そして物語の主眼は磔刑によって死刑にイエスがどのように復活したのかに移っていく。これが本書の謎のメインなのだが、これがどうも魅力的とは映らなかった。
キリストの復活とは西暦の始まり頃の話である。この悠久の時を超えて明かされる謎にしてはいささかチープな印象を受けるのだ。

確かに書かれている内容は当時の各宗教の習慣や常識が詳細に記され、それに基づいた考察がなされ、理論的であり興味深いのだが、それが逆に仇にもなっているように感じてならない。
そして物語はその後、移送されたイエスが閉じ込められた安置所から如何にして消え失せたのかという謎へ移る。これこそ本書の題名となっている密室の謎なのだが、これも解ってしまえばなんともチープ。

さて小森氏が冒頭で述べたいつまでも公表されないイエスの復活についての記述だが、私はこれは関係者同様、公表は控えた方がいいと思う。謎は謎である方が魅力的だというが、まさしくこのイエスの復活の謎についてはそれが当てはまる。もしこれが事実だとして世界に公表されれば、世界中のキリスト教徒の猛反発を受けるのではないか。
明るいところで観るお化け屋敷ほど陳腐なものはない。まさしくこの謎はそっとすべき謎だと私は云いたい。
学者は歴史の謎を明らかにするのが仕事なのは解るが、その逆もまた学者の仕事なのではないか。小森氏が崇高なる使命感で小説という形で発表したこの謎は、その意気込みとは全く逆に、蛇足を連ねただけのように感じてしまった。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
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