(アンソロジー)

犯罪は詩人の楽しみ



    ※タグの編集はログイン後行えます

    【この小説が収録されている参考書籍】
    オスダメ平均点

    5.00pt (10max) / 1件

    5.00pt (10max) / 1件

    Amazon平均点

    4.00pt ( 5max) / 1件

    みんなの オススメpt
      自由に投票してください!!
    0pt
    サイト内ランク []D
    ミステリ成分 []
      この作品はミステリ?
      自由に投票してください!!

    0.00pt

    42.00pt

    0.00pt

    19.00pt

    ←非ミステリ

    ミステリ→

    ↑現実的

    ↓幻想的

    初公開日(参考)1980年12月
    分類

    アンソロジー

    閲覧回数762回
    お気に入りにされた回数0
    読書済みに登録された回数1

    ■このページのURL

    ■報告関係
    ※気になる点がありましたらお知らせください。

    犯罪は詩人の楽しみ―詩人ミステリ集成 (創元推理文庫)

    1980年12月01日 犯罪は詩人の楽しみ―詩人ミステリ集成 (創元推理文庫)

    チョーサー、スコット、ロード・バイロン、イエーツ、エイケン、ベネ…これらの名高い詩人たちにはなにか共通するものがあるのだろうか?そう、彼らはみな、犯罪もの、あるいは探偵もの、あるいはサスペンスの短編を書いているのだ。名アンソロジストのエラリー・クイーンが、ポエティック・ミステリの粋を集めた。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt

    犯罪は詩人の楽しみの総合評価:6.50/10点レビュー 2件。Dランク


    ■スポンサードリンク


    サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (5pt)

    詩人の超越した視座

    エラリー・クイーンは数多のアンソロジーを編んでいるが、本書は詩人が書いたミステリ短編を集めた物。

    本書は作者の生年順に作品が収録されており、冒頭を飾るのは『カンタベリー物語』で有名なジェフリー・チョーサーの「免罪符売りの話」だ。
    本編は『免罪符売り』という作品からの抜粋だが、非常に上手く抜き取られており、確かに1編の短編のように読める。

    2作目はオリヴァー・ゴールドスミスの代表作『ウェイクフィールドの牧師』からの抜粋。書かれたのはなんと1766年!
    同書を読んでいないので詳細は解らないが、題名からして詐欺に遭った牧師は恐らく本書の主人公なのだろう。その後の彼らの運命が流転していく余韻を残して物語は閉じられる。年代は18世紀だが、読み物としては21世紀の今読んでも遜色ない。

    サー・ウォルター・スコットは「歴史小説の父」として名を馳せているようだ。本書に収められた「ふたりの牛追い」はハイランド人のロビン・オイグとイングランド人ハリー・ウェイクフィールド2人の牛追いたちの友情が崩れる物語。
    イングランド人とハイランド人、つまりスコットランド人の人種間の深き溝を感じさせる一編だ。わずかなボタンのかけ違いで悲劇が生まれる。物語冒頭の老婆の予言がスパイスとして効いている。

    ジョージ・ゴードン、ロード・バイロンによる「ダーヴェル」はたった9ページの小編。
    正直よく解らない話。

    次はまさに巨匠、ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの「ペリゴーの公証人」はミステリと云うよりも喜劇だ。
    医者が教える猩紅熱の症状、「右脇腹に鋭く焼けるような痛み」の正体が笑える。伏線もあるし、やはりこれもミステリ…かな?

    次も巨匠ウォールト・ホイットマンの作品「一度きりの邪な衝動!」は亡き父の財産を管理し、それを盾に妹エスターに結婚を迫る悪徳弁護士を殺す兄フィリップの話。話はこのたった一文で済むが、最後の結末が非常に奇妙な味わいを残す。老境に差し掛かって改訂されたらしい本編は作者の達観を示しているようでもある。

    W・S・ギルバートはオペラの台本作家とのこと。彼の作品「弁護士初舞台」はなんだか奇妙な話である。
    敵は味方にありとはまさにこのこと。何とも不思議なお話である。

    トマス・ハーディは詩人というよりも小説家として知られていると思うが、後年はもっぱら詩の制作に勤しんだようだ。彼の「三人のよそ者」は雨天の最中、次女の誕生祝と命名式のパーティを人里離れた一軒家で祝う羊飼いの所へ3人の来客が訪れるというもの。
    チェスタトンの短編のような味わいを残す1編。真相を知った上で読み返すと2人目の男が現れた後の彼の振る舞いと旅人の反応がまた違った風に読めるから面白い。実にミステリらしい作品だ。

    次はノーベル賞作家のウィリアム・バトラー・イエーツの初期の作品「宿無しの磔刑」だが、これは何とも奇妙な味わいだ。
    さすらいの歌人が一夜の宿として立ち寄った大修道院でのもてなしの酷さは確かに同情すべき物がある。パンは黴ており、水は悪臭がして飲めやしない。おまけに布団には蚤が蔓延っていると散々だ。しかしそのために修道士たちに迷惑をかけるというのはいささか子供じみている。磔刑にさせられる道中で色々な小細工をする歌人と取り巻きのようについてくる乞食が布石のように見えるが真相は意外。実に皮肉な結末。

    『ジャングル・ブック』は私が小学生の頃、自宅にあった少年少女文学全集に収録されていた作品の一つだったが、その作者ラドヤード・キプリングの作が「インレイの帰還」だ。
    ミステリとして比較的定型を成しているのがこの作品。一人の男の失踪が殺人事件へと発展する。しかしトリックの意外性があるわけではなく、あくまでキプリングは未開の地インドの風習と風土ゆえに起こった現地人と白人の価値観の相違が事件を起こしたことをテーマにしている。

    ジョン・メイスフィールドの「レインズ法」はいわゆる世間の渡り方を扱った作品。
    一行で済む内容だが、これを当事者が成した事を細かに書いたことが新しいか。

    ジョイス・キルマーの「恐喝の倫理」は新聞社で働く男の告白の物語。
    これはラストが効いている。

    コンラッド・エイケンの「スミスとジョーンズ」は奇妙な味わいを残す。なんとも奇妙でちょっと背筋が寒くなるお話だ。こういった普通に振舞っていた関係からふと殺意を抱き、行為に至るというのは唐突過ぎて何とも云えない怖さがある。

    マーク・ヴァン・ドーレンの「死後の証言」とオグデン・ナッシュの「三無クラブ」はちょっと理解に苦しむ物語だ。
    それぞれの作品は理解できるものの、結末が腑に落ちない。いずれも何かもう一つ上の次元で語られている話と云った理解を超えた展開であり、呆然としてしまった。

    ロバート・グレイブズの「シュタインピルツ方式」は何とも珍妙な話ながらも好きな話。
    とにかく盲目的に博士の指示に従い、肥料の材料を集めまくる夫婦と云うのが滑稽。しかも材料はおよそ誰もが手を出さないゴミやら動物の死骸やら、とても想像をしたくない物ばかり。最後の結末も効いている。

    スティーヴン・ヴィンセント・ベネの「いかさま師」は引退したいかさま師が老人ホームを抜け出して世間のいかさまを暴いていくお話。祭りの夜、花火を見たいがために抜け出した老人がその一夜で遭遇する事件を解決するという老練さに満ちた一編。

    最後のミュリエル・ルーカイサーの「仲間」も『世にも奇妙な物語』向けの奇妙な作品。
    殺人を過去に犯した者は特別な連鎖に取り込まれてしまうというちょっとオカルト風味でもある。


    エラリー・クイーンが詩人たちの創作したミステリ短編を集めたアンソロジー。
    最も古いのがチョーサーの作品でなんと1300年代の作品!日本の歴史で云えば鎌倉時代の頃で中国では明王朝の頃と、まさに隔世の感がある。

    そのチョーサーの作品「免罪符売りの話」は死神と呼ばれているこれまで千人は人を殺している泥棒を3人の放蕩者が退治してしまおうと乗り出す話から一変して金貨の奪い合いに転じるというお話。同題の長編からの抜粋のため、本筋が解らないきらいはあるものの、たった7~8ページの分量で目的がガラッと変わるというには何とも奇妙な味わいがあった。

    続くオリヴァー・ゴールドスミスの作品も彼の代表作『ウェイクフィールドの牧師』からの抜粋で牧師が詐欺に遭う話を書いている。これも1766年の話で日本はその頃徳川幕府で田沼意次が老中だった頃。その頃イギリスは産業革命の真っただ中という激動の時代。

    18世紀の詩人はこの次のウォルター・スコットやジョージ・ゴードン・バイロン、ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー、ウォールト・ホイットマン、W・S・ギルバート、トマス・ハーディと並ぶ。まさしく錚々たる面々である。

    その後もノーベル賞作家イエーツ、『ジャングル・ブック』のキプリングといった大家の作品が並ぶ。

    とにかく最初は読みにくいことこの上なく、また見開き2ページに小さなフォントでぎっしりと文字が詰まった体裁を久しぶりに読んだのでかなり時間を要した。先に進むにつれて、時代が下ってくるので読みやすくはなったが、久々に古典を読んでいるという気分にさせられた。
    個人的にはこの古式ゆかしい体裁は大好き。

    しかし詩人と云うのはどこか通常の作家と視座が違うのか、収録されている作品は奇妙な後味が残る物が多く、いわゆるミステリと呼べる作品はそれほどあるわけではない。何か事件が起こってその不可解事を解決する、といった定型を取る作品はほとんどといって無い。意外な結末という意味合いでクイーンは有名詩人諸氏の作品を集めたのではないだろうか。

    また先だって読んだ『犯罪文学傑作選』もそうだったが、クイーンの他ジャンル作家の手によるミステリ作品のアンソロジーは文学史の勉強になる。今回もウィキペディアを参考にしながら各著者の代表作を知ることが出来た。
    逆に云うと自身の不勉強さを露呈することになったわけだが。

    さて本書の序文でクイーンはこのアンソロジーが不作為の犯行を犯していると述べている。
    この不作為の犯行とは編者曰く、編者としてはアンソロジーとしては完璧を臨んで作品を集めたが編者の目が行き届かずに埋もれた詩人の手によるミステリ短編の傑作が選から漏れていることを指す。それをあらかじめ認めており、そして本書が「決して完成しない」アンソロジーであると述べている。
    なるほどある意味これは自分のアンソロジーが不興を買った時に備えての保険のようにも取れるが、編者として潔さを感じる話だ。つまりアンソロジーは編者の権威を恐れず更新されなければならないと説いているのだ。

    この詩人たちが書いた小説の意味が全て理解できたかとは云えないが、雰囲気はどこか通ずるものがあった。
    先にも書いたがどこか超越した視座で綴られた諸作品。これらを集めたクイーンの偉業をこのたび復刊して確認することが出来た。
    東京創元社の志の高さに改めて拍手を贈りたい。


    ▼以下、ネタバレ感想

    ※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

    Tetchy
    WHOKS60S
    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
    未読の方はご注意ください

    No.1:
    (4pt)

    詩人の正義

    クイーンお得意のテーマ別アンソロジー
    今回は有名な詩人のクライムストーリを集めています
    しかし、東京創元社の方針から
    東京創元社が出している本に掲載されている小説は割愛されているので
    ポーやチェスタトンといった純粋な推理小説は省かれています
    犯罪は詩人の楽しみ―詩人ミステリ集成 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:犯罪は詩人の楽しみ―詩人ミステリ集成 (創元推理文庫)より
    4488104304



    その他、Amazon書評・レビューが 1件あります。
    Amazon書評・レビューを見る     


    スポンサードリンク