古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします
- 映画館 (16)
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ボーイミーツマニアックガール! 人の死なない専門知識ミステリーの作り方 材料 ある方面の専門知識を持つ美人女性ホームズ 読者の目となる凡人初心者男性ワトソン 脇を固める個性的な仲間達 皆の集うお仕事空間 各話のゲストキャラクター&必要なら犯人 読者の知らないだろう濃い知識 レシピ 1.ワトソンとホームズを出会わせ&知り合わせます。ワトソンの持参した謎を、ホームズが解いてあげる形が最も手軽でしょう。 2.美人ホームズに惚れたワトソンが、ホームズのいるお仕事空間で働き始めます(常連客になる形や、ワトソンの職場にホームズが通う形、というアレンジも可能です)。 3.仲間やゲストキャラの持ち込む謎を、ホームズが解決していきます。なるべくコアな知識を交えて、読者の知的好奇心を刺激しましょう。 4.場は大体完成しました、あとは3を心行くまで繰り返しましょう。徐々にワトソンの恋を進展させてあげると、味が変わって良いかもしれません。作品全体を貫く大きな謎を用意しておくと、シリーズ物として長く楽しめるでしょう。 5.適当なタイミングで終わらせます。が、この形ならいつでも再開可能でしょう。一話完結型シリーズミステリーは、作り手にとって非常に便利なのです。 6.……あんまりこのスタイルに頼ると、作者の腕と持ち味を殺してしまうかもしれません。今作『古書街シネマの案内人』のように。 と、前置きが少々長くなったがそういうことである。 今作、ボーイミーツマニアックガール型の部分は全然面白くなかった。映画の案内人である美人女性ホームズも、就職を控えた大学生ワトソンも、彼らの集う神保町の名画座も、一緒に働く人々も、お客様達も概ね平凡だった。平凡な変人の寄せ集めで、別にこの場とこの人達じゃなくても話が成り立つなぁと思うことしきりだった。 けれども決して、つまらない作品とは感じなかった。どうしようもないテンプレスタイルを差し引いても、映画を絡めた謎と、オチのつけ方はなかなかに素敵だった。そこまで深みのない、伏線小技積み上げ型の2話目もオチは意外で笑えた。ありふれた配置と構成の中に、この作者ならではの光るものがあった。……だからこそ、冒頭で述べたボーイミーツマニアックガール型の作りが邪魔に思えた。戦時中の日本映画史に迫る4話目など、これだけを単品で長編小説に仕立てても味わい深いだろうに。既存のスタイルの連作短編中の一話として、埋もれてしまっているのが惜しい。 売れ筋のレシピに従って作れば、大失敗は避けられるのかもしれない。冒険資金のない出版社や編集者、とりあえず当てたい作家にはいい方法なのだろう。けれどもその先には、テンプレの成功以上のものはない。 あなた方はいつまで、同じ映画を見せるおつもりか。 そういえば、2話目でこの名画座の売店では「ポップコーンは扱っていない」とあるのに、1話目の名画座の風景描写で普通にポップコーンが登場しているのは何故だろう。著者の中でイメージが固まっていなかったのだろうか。 また、257ページ3行目が「おあいこ」ではなく「あおいこ」となっていた。 細かなことだが、気になったので追記しておく。 | ||||
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まず気になったのが伯父を叔父と表記したこと、つぎがE.T.を宇宙人の子ども、としたこと(実際は植物学者です)。「トラトラトラ」に関しては戦争映画に関する用語に違和感を覚えました。オチに使われた作品も納得がいきません。 設定として映画探偵はおもしろそうなんですが、印象としては「ちょっと安い」。 | ||||
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ビブリア古書堂の事件手帖や純喫茶タレーランの事件簿を思わせるタイトル。 映画館で起こる小さな事件は、他2作品とは似て非なる非日常感があってなかなか楽しめた。 その分、残念に思ったのは第一話。 叔父は親の弟、兄なら伯父だ。 第一話の違和感が強く減点。 | ||||
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ガガガ文庫で傑作「我がヒーローのための絶対悪」を刊行してから個人的に要注目作家としてチェックさせて頂いている大泉貴の宝島文庫での新作 紹介文からはメディアワークス文庫のミリオンセラー「ビブリア古書堂の事件手帖」のエピゴーネン的な匂いもするけど、予断をもって本を読むのは レビュアーの御法度だと反省しつつ拝読 物語は主人公の大学生・平比良龍司が靖国通り沿いにある映画関連専門の古書店「レガシー」を叔父の遺品を処分する為に訪れている場面から始まる 査定を待っていた龍司の目に留まったのは「E.T.」と「ジョーズ」というスピルバーグの代表作のGW限定上映を告知する神保町オデヲンという映画館の ポスターだった。やがて査定が終了し店員からは値段が付かなかった商品として映劇シアターという劇場名の入った「E.T.」の前売り券が龍司に返される 処分するのも忍びないと判断した龍司は前売り券を持って帰る事にするが、そのついでに「E.T.」のグッズに指輪が無かったかを訪ねるが店員は 怪訝な顔をして心当たりが無い旨を龍司に告げる。仕方なく家路に付いた龍司だったが、その道すがら先刻目にした神保町オデヲンが気になり、路地裏へ 入ってみる事に。巨大な箱の様な直方体型の映画館に辿りついた龍司はロビーに入るがスタッフの姿が見えない。ロビーの奥に入った龍司だったが、 受付の隣にある小部屋から物音がしている事に気付く。小部屋を覗いた龍司が目にしたのは膨大な映画関連の古書とそれを整理する長身で黒髪の美女 首から「神保町オデヲン・案内人 六浦すばる」と書かれたタグをぶら下げたその女性が龍司に気付き声を掛けてきた事で龍司はレガシーに買い取って 貰えなかった前売り券を取りだし、これで「E.T.」を鑑賞できないか尋ねるが、表記されている劇場以外では使用できないと告げられてしまう。落ち込む 龍司をよそに、すばるは龍司が持っていた前売り券が「ローカル館」の前売り券であり、そんな物が残っているのは非常に珍しいと興奮した様子で語り始める すばるは龍司が直前に前売り券をレガシーで売ろうとしていた事を見抜き、その洞察力に驚いた龍司が探偵みたいだと褒めそやすと自分は探偵では無く 案内人、映画の解説から劇場への要望、映画に纏わるお客様の悩み相談まで承るのが自分の役目であると言い放ち 特定ジャンルにやたらと詳しい美女がそのジャンルに纏わる謎解きに挑むミステリ、という意味では「ビブリア古書堂みたいだ」という恐らく多くの読者が 本作を手に取る前に受け取る印象、それ自体は間違ってはいない。多分に版元もビブリア人気を見越して出したのだろうと予想される。ただ、だからと言って 本作がエピゴーネン的な、もっと有態に言えば単なる尻馬に乗った作品と断じて「ビブリアの二番煎じ」と片付けてしまうには余りに惜しい。本作は大人向けの ライトノベル、俗に「ライト文芸」あるいは「キャラノベル」と呼ばれるジャンルの作品としては非常に高い完成度に達しているのである 本作は基本的に短編連作形式で、短編四本から構成されている(各章のタイトルが「サンセット古書街通り」など古典映画のパロディなのは心憎い演出) 主人公の龍司は癌で亡くなった叔父の形見を処分する為に訪れた神保町で買取を拒否された「E.T.」の前売り券と古ぼけた指輪に纏わる叔父の人生と かつて両親の離婚協議の場から龍司を連れ出して「E.T.」を見せに連れて行った映画館で叔父が見せた涙から地方のローカル館の劇場主との秘めた恋の 真相を見事に解き明かした六裏すばるに一目惚れ、映画の知識もろくにないまま、すばるが案内人を務める神保町オデヲンでアルバイトとして働き始めるが、 そこに集うシネフィル(cinéphile=「cinéma」(映画)と「phil」(「愛する」という意味の接尾辞)をもとにした造語)たちや廃れて行く一方のフィルム文化を支える 名画座スタッフ、そして彼らが抱えている問題をズバ抜けた知識と洞察力で解き明かす六浦すばると関わる中で映画と共に歩んできた人々の人生の一片を 垣間見るというのが主な流れ すばるが挑む事件は上に挙げた「E.T.」の一件以外にも映研を立ち上げた学生時代から40年以上付き合いが続いている初老のシネフィル三人組が 上映中に無くしたとある映画フィルム探し、都内の名画座を荒らし回っている映画泥棒(頭がカメラになった背広姿のアレでは無い!)退治、死を目前にした 老婦人が要望した「可憐な歌女」と「紅い夕日」という言葉のみを手掛かりとした謎のミュージカル映画の上映とバラエティ豊かだが、どの話にも共通するのは 各話が単なる謎解きに留まらず、謎解きとモチーフとなっている映画作品を通じてかつて映画が娯楽の王様だった時代を過ごした人々の悲喜こもごもの 人生が色彩豊かに描かれている点にある。それは恋した劇場主の為に地方の映画館に「E.T.」の上映を実現させた一人の地方振興コンサルタントの 悲恋であったり、長い人生の間で仲間内で立てた誓いを守れなかった男たちの後悔と青春の一ページとして見たちょっぴり恥ずかしい映画の記憶であったり、 戦時を大陸で過ごし、大切な家族を失った女性声楽家の悲しみであったりするのだけど、あくまで中心となるのはすばるの推理でも無く、銀幕に映し出される かつて時代を風靡した名作映画でも無く、その銀幕を眺めている観客や裏方としてフィルムを回しているスタッフなのである 個人的にはこの「市井の人々の人生」を描き出す点がライトノベルとライト文芸の最大の違いだと考えている。ライトノベルが一人のヒーローの物語だと すれば、ライト文芸は社会の片隅に住む「普通の人々」の人生が如何に豊かな物であるかを描き出すジャンルだと思う。ライト文芸の草分けである メディアワークス文庫にもかつては美奈川護や山口幸三郎といった作家がこの手の「市井の人々」の物語を紡いでいたのだけど(件のビブリアも初期は この手の話が多かった!)今ではちょっと路線が変わって来た事で寂しい思いをしていたのだが、そんな所にこの名画座を舞台に映画と共に歩んできた 人々の人生を丁寧に描く作品が登場したのはまことに僥倖。ヒロインで探偵役のすばるもスーパーヒーローでは無く、限りある存在として、全てを ハッピーエンドに導く事は出来ない一人の人間として描いてあり、時には相談者の願いを果たせず苦い思いを味わったり、捜査が難航している時に 素人である龍司が出しゃばり過ぎた時には苛立ちを見せたりと妙に人間くさく描いてある点も個人的には非常に気に入って点である ヒロインの六裏すばるが映画の興行史を研究する大学院生であり、作中でも触れられている様に映画は観客が見る時点で初めて完成を迎える、興行の 対象として観客の存在込みで映画は語られねばならないと繰り返し訴えてくる本作のテーマは色々と考えさせてくれる物があった。娯楽という物が厳しい 生活の合間の僅かな慰めであったり、大切な人と過ごす掛け替えの無い時間の彩りであったりと長い人生の各章に分かちがたく結びついている物だと、 その記憶をあらゆる立場を超えて共有する暗闇の中での上映時間には人々を結びつける物がある、と読者に強く印象付ける何かが本作には間違いなく 存在する 確かにビブリアの人気に当て込んだ点は否定できないかもしれないけれども、市井の人々の人生とその記憶を豊かに彩る存在としての映画をミステリの 形でまとめ上げたライト文芸として非常に質の高い一冊であった | ||||
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