パラドックス13
登録されているタグ
※タグの編集はログイン後行えます
7.00pt
7.00pt
Amazon平均点
3.52pt
楽天平均点
3.79pt
みんなの オススメpt 自由に投票してください!!
39pt
↑現実的
0.00pt
0.00pt
←非ミステリ
28.00pt
ミステリ→
66.25pt
↓幻想的
初版刊行(参考)
種別
長編
閲覧回数
13,949回
お気に入りにされた回数
14回
読書済み登録回数
230回
- このページのURL
あらすじ
外部リンク
評判
パラドックス13の評価:
7.00/10点 レビュー 11件。 B ランク
パラドックス13の総合評価:
7.04/10点 レビュー 307件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全6件 1〜6 1/1ページ
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 296件あります。
Amazon書評・レビューを見る
東野圭吾氏によるSFサスペンス長編。3月13日13時13分13秒に起きたP-13現象なる超常現象で世界中の人々が一部を除いて一瞬にして消失するパニック長編である。
まず驚いたのはP-13現象が起きた後の世界ではほとんど全ての人間が消失し、運転していた車がところどころで衝突し、事故の山を築き、飛んでいた飛行機もまた墜落している、まさに地獄絵図のような状況が繰り広げられることだ。
私は最初この情景描写を読んだ時にアメリカドラマの『フラッシュフォワード』を想起したが、その後度重なる巨大地震と集中豪雨で川が決壊し、地震と重なった起きた津波の描写で東日本大震災を想起した。
しかし本書は2009年4月に刊行された作品で東日本大震災は2年後の3.11なのだ。まさに本書で描かれた状況は当時の被災地の人間が体験したそれのように思えるのだ。
『天空の蜂』もまた3.11で起きた原発事故を予見するような内容だったが、それに加えて被災地の状況をも予見した作品として読むと驚愕に値する。
そしてほんの十数人を残して消え去った人々の世界を東野圭吾氏は持ち前の想像力とシミュレーション力で克明に描いていく。食糧危機にライフラインの根絶、あまり小説で描かれない登場人物たちのトイレ事情なども忘れずにきちんと書くところがこの作家が他の作家とは一線を画した存在であると云えよう。実にリアルである。
最も印象に残るのは度重なる危難の際に集団のリーダーとして皆を先導する久我誠哉の冷静な判断だ。
翻って腹違いの弟冬樹は感情に任せた判断をしては兄の誠哉に諌められる。しかし冬樹の判断こそが通常我々が陥る一般常識だ。
しかし有事の時はその常識が役に立たなくなる。
例えば1人の死にかけた人間が出れば、可能性がある限り、一命を取り留める措置を全力でするのが常時だが、未曽有の災害が起きた時では助かるか解らない1人のために全員を犠牲にするわけにはいかないから、見殺しにすることが求められる。
これまで自分が絶対だと信じていたものが、次々と壊れていくのを彼は感じていた。
これは冬樹の心情を表した作中の一文だが、実に正鵠を射ている。
もはや国家と云う拠り所が無くなった状態では今までの道徳や決まりごとが無意味となり、彼らが最大数で合致する価値観に添って物事が決められる世界になることを節目節目で語っていく。
ただ一方で冷静に判断を下していた誠哉も理性や論理だけでは全てが解決しないことを知らされる。
皆がインフルエンザに次々に感染していく中、冬樹はタミフルを飲ませるために嵐の中、病院に取りに行くという一か八かの賭けに出る。幸いにして満身創痍になりながらもその試みは成功するが、それは常に皆の安全を考えて消極的に行動する誠哉にはできない事だった。
つまり常に安全圏にいては何も変わらず、ただ死を待つだけであり、時にはリスクを抱えて行動しなければならない事、そして人間はその意志の強さで思いも寄らない成果を挙げることを誠哉は目の当たりにするのだ。
そして次第に誠哉の論理的思考はエスカレートしていく。
極限状態の中、もはや生存者が彼らだけとなった事実を突き付けられた後、誠哉は残された人類だけで繁栄する方法を披露する。それは皆がアダムとイヴとなって子孫を増やしていくという選択だった。流石に好きでもない相手とセックスは出来ないと女性陣は皆、強い拒絶反応を示し、それが仲間たちの団結に亀裂を生じさせてしまう。
皆がそれぞれの考えで生き方、死に方を選ぶようになるのだ。つまり論理的思考が全てではなく、理屈では割り切れない物が人間にはあるのだ。
論理的思考型人間の久我誠哉と感情的行動型人間の弟冬樹の2人を対照的に描くことで物語に起伏を、そして読者の思考に揺さぶってページを繰る手を止めさせない東野氏の筆致に改めて感心した。
『プラチナデータ』の時も思ったが東野氏のSF物は結末が正直に云ってカタルシスに欠ける結末が多い。
本書でもP-13現象によって図らずも並行世界に取り残された面々は再び起こるP-13現象で救われるわけではない。いや並行世界で死んだ者は揺り戻しによって再び亡くなり、生き長らえた者たちのみ死を免れるのだ。このドライさが何とも云えない苦さを後味として残す。
本書のキーワードは一同のリーダー格である久我誠哉が苦難に見舞われた時に呪文のように唱えるのが「天は自ら助くる者を助く」だ。
これがもしクーンツ作品ならばP-13現象というパラドックス現象を逆手にとって彼らの苦難を全てリセットされたかのように全員生還する、もしくは生まれ変わりになって新しい人生を歩むと云った何らかの救いを設けるのだが、東野氏は敢えてそんな安易な道を選ばず、生と死のシビアな二者択一のカードを切り、犠牲者を容赦なく切り捨てる。
これをどう捉えるかは読者次第なのだが、私はやはりパラドックスを成り立たせた上のハッピーエンドが欲しかった。確かに本書の結末もハッピーエンドではあるのだが、あまりにもドライすぎると感じるのは私の甘さだろうか。
ただ本書は単にSF的興味やクライシス小説として読むには勿体ない。大災害が発生した時に生存するためにいかに行動し、どのような選択をしてくかを示した一種の指南書にもなり得るからだ。
絶望的状況に見舞われた老若男女たちがそれまでの人生の中で培った価値観によってどのような選択をしていくかもまた読み処だ。それぞれが己の人生観に添った選択をするため、それぞれに一理ある。
刑事、会社の重役とその部下、老夫婦、やくざ、女子高生、看護婦、主婦とその子供、ニートの若者とメンバーは実にヴァラエティに富んでいる。
そのどれに自分を重ねるか。そんな風に自分と照らし合わせて読むのもまた一興だろう。
▼以下、ネタバレ感想