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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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ルーマニアの独裁政権下の国家の中だけに閉じ込められて、 イタリアとか好きな外国へ出ていけない不自由、 国家逃亡未遂事件を起こしてから、執拗でいやらしい軍人の呼び出しが続く。 それに神経を尖らせている女性が描かれています。 本書タイトルの「呼び出し」とは、 ルーマニア独裁政権の監視者「アルブ少佐」からの出頭呼び出しです。 「尋問」(26頁、49頁)するための出頭呼び出し。 著者は、ヘルタ・ミュラー。1953年、ルーマニアに生まれる。作家。 著者への尋問、脅迫、執筆禁止などが相次ぎ、遂に1987年に西ドイツ・ベルリンに出国、移住。 1991年、ソ連崩壊。2009年にノーベル文学賞を受賞する。 本書の物語の語り手は、「私」。 「お婆さん」(5頁)のような外見の女性。 「私は自分が年齢不詳に感じ」(207頁)ています。 「私」の名前は、最後まで出てきません。 「私」は著者自身と相当重なっているのでは、と感じました。 不思議なのは、ブラウスと友人リリー。 「だけどパウルが知っているのは、呼び出しを受けているときの私がいつもの緑のブラウスを着て、クルミを食べているのが見られているという事実。ブラウスはリリーの形見、だけど彼女の名前は私の形見。いまだ成長し続けているブラウスだ」(22頁) 「いまだ成長し続けている緑のブラウスを着ていたこと」(25頁) 「私はいまだ成長しているブラウスのボタンを回す」(48頁) 「木は成長するし、ブラウスはその名前を木からもらっている」(50頁) 「いまだ成長し続けているブラウスはここにあるのだ」(51頁) 「いまだ待っているブラウスを着て、私は台所に入り腰かける」(295頁) 小説の舞台は、ルーマニア。路面電車の中。 その時は、「1980年代」(304頁、訳者あとがき)の「今日」(3頁) 「チャウシェスク独裁政権下の『今日』」(305頁) 物語は、「朝の八時前」から「十時きっかり」までの「およそ二時間」(310頁) 「その道のりだとせいぜい一時間半だ。私は二時間かける」(23頁) 章立ても、区切りの数字も何もない、約300頁の長編小説。 一旦読み始めると息継ぎのタイミングがわからず、息苦しい読書でした。 内容のせいかも。 「ドイツ語原題の直訳『今日は自分に出会いたくなかったのに』」(304頁) 出会いたくない自分の姿って? 「呼び出し」という日本語訳は、好きではありません。直訳のほうが好きです。 「陰々滅々たる思い」(304頁)の「私」の独白。 「路面電車内で起こる出来事に/過去と現在のエピソードが絡み合」(本書の帯)う。 この物語の、最後の言葉は「狂いたくない」(296頁) 狂っている、と叫ぶ、読者の心の声。 執拗な「呼び出し」におびえる「私」。 監視下の恐怖で窒息しそうな「私」。 そういうとき、人間は、狂いたくないので、酒を飲む。 「私」の二番目の「連れ合い」パウルは言います。 「飲むのは絶望しているからではなくて、旨いからなんだ」(15頁) パウルも「私」も、絶望していると思いました。 でも、狂いたくはないのです。 だから「私」も昼から酒を飲む。 酒は、「シュナップス」(9頁) 「バイソングラスの黄色いシュナップス [訳者注 一般に『ズブロッカ バイソングラス』と称されるウォッカ] 」(263頁) 《備考》 <主な登場人物> 「アルブ少佐」 ルーマニアの独裁政権下での監視者。 国外逃亡の可能性のある「私」を呼び出して執拗に監視する。 頭じゅうから「アヴリル」(フランスの香水)の香りがする軍人。 「1951年にはすでにこの犬めは香水臭かった」(237頁) 「最初の夫」 二年半で「私は最初の夫と別れていた」(63頁) 「ネル」 「私がメモの件で捕まえられたとき」(63頁)の「彼」 「パウル」 「私」の二番目の夫(連れ合い)。飲酒癖。 「飲むのは絶望しているからではなくて、旨いからなんだ」(15頁) 「リリー」 「私」の友人。ハンガリーへの逃亡に失敗し「射殺された」(73頁) | ||||
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