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ジャージの二人



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【この小説が収録されている参考書籍】
ジャージの二人
ジャージの二人 (集英社文庫)

ジャージの二人の評価: 3.88/5点 レビュー 24件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.88pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全17件 1~17 1/1ページ
No.17:
(4pt)

”ちゃんとしていない二人”のまったりとした夏

北軽井沢の山荘へ避暑に出かけた「僕」と父。「僕」の妻には大好きな人ができてしまったし、父の三度目の結婚はうまくいっていない。古くてかび臭い別荘で過ごす”ちゃんとしていない二人”のまったりとした夏。

父の最初の妻の子が「僕」。高校生の頃に別れてしまった父と「僕」の会話は、親子というより気の置けない友達同志のようだ。理想的な親子関係に見えるけれど、そのように接するしかない微妙な距離感が、二人にはある。それぞれを気遣っていながらも、肝心なところで踏み込んでいけない。30代の息子と50代の父の、ゆるさの中にあるちょっとした意地の張り合いだ。

「僕」の抱えている問題は、苦悩をはるかに超えて悲惨というべきものである。妻が、浮気相手の子供を産みたいと切望しながら、相手にフラれてしまったのだ。世紀の大恋愛を告白された「僕」は、妻の行動を横目で見ながら、ジトジトするしかない。山荘のかびた布団のようだ。

小説家を目指して会社を辞めた「僕」。執筆活動にあてるはずの、初めて出かけた父との旅行は、流されるまま無為に過ぎていく。そもそも「僕」には、自分を見つめ直すとか、何かを解決しようとか、何かを成し遂げようとかいった強い意志があるわけではない。五右衛門風呂に入ったり、犬の散歩をしたり、ご近所さんと交流する毎日だけだ。ネガティブさを、まったり感に転換する そんな心地良さが長嶋さんの作品にはある。ぐだぐだゆるゆるな二人を象徴するのが、小学校から貰い受けたジャージだ。校章を胸につけたサイズLLのダサぽんジャージが、二人のまったりユニホームなのである。
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No.16:
(4pt)

ゆる〜い

ゆる〜い感じが好き

殺人事件が起こるわけでも、男女のドロドロな恋愛な話があるわけでもないけれど、ゆるい感じの親子2人のやりとりがうまい具合に書かれていておもしろかった。

夏の気だるいプールのあとの感じに似ている気がする・・・。
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No.15:
(5pt)

どんくさい感じがたまらない

「ああ、人間ってこんなもんだよな」
(いい意味で)
と、読みながら思う作品。

別に何が起こるわけでもなく、
ロクデナシでもないが、いい大人でもない登場人物たち。

「てきとう」とか、「いいかげん」とか、
そんな言葉が小説の世界にマッチする。

個人的にクライマックスは、
ジャージに刺繍された「和」の読み方が判明する場面…。

それくらい何も起こらないのだが、
そのどんくささがとてつもなくいい。

小説なのに微妙な「間」を感じる、
休日の夕暮れにビールでも飲みながら読みたい一冊。
ジャージの二人Amazon書評・レビュー:ジャージの二人より
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No.14:
(4pt)

父子のゆるーい避暑生活

失業し小説を書こうとしている息子と、かつては名のある写真家だった父親の二人が、夏も終わろうとする北軽井沢に「避暑」に行く話です。

結婚生活が破綻寸前の二人の、ある意味での逃避行です。
そこでの黴臭い蒲団にくるまったゆるーい生活振りが、淡々とユーモア混じりに展開されます。
大の大人が、小学校の名前の入った古いジャージ姿で過ごす生活を想像するだけで可笑しくなります。

この二人の関係は、父子の関係とも思えない関係です。
互いが互いを思いやっているのですが、深くは聞こうとしないし話そうともしません。

そんな二人のだらだらした生活振りは、目の前の問題を何も解決しませんが、それでいてこうした生活の中で、大げさに言えば、何かある悟りきった境地に入ってしまう様な感じです。

この続編である「ジャージの三人」も所収されています。
そこでは、前半で息子の妻も登場し、後半には父親の娘も登場します。

様々な人間関係が描かれる中で、夫婦も親子も完全には知り合えることはなく、それぞれが考えて行動し、互いに思いやって生活してゆくしかないと言っているようです。
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No.13:
(4pt)

映画鑑賞後に読みました

映画のスローな世界の原作が気になり読んでしまった。

とても、セリフの少ないお話で、
映画では、沈黙を考えるパワーが要求されたのだが、
小説には、その答えが書いてあって、なにやら、
「映画の回答集」を開いて、答えあわせをしているようであった。

「あっ、やっぱり、あの解釈でよかったんだ」とか、
「あれ、そこまで、意地悪なことを考えてたんだ」とか。

映画鑑賞後に読むと
「なるほどね〜」と頷くことが多いのですが、
「よく、映画化したな〜」とはじめて、そんな思いを抱きました。

それほど、
ゆったりとして、
感情の起伏が内面だけに収めている作品です。
人間関係の複雑さに疲れ果てている人にお奨めします。
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No.12:
(5pt)

シンクロする時間感覚

一般的な小説的技法が使われない。たとえば、心理描写や長い独白がない。描かれるのは断片的な思考の切れ端だけだ。また、登場人物に対する第三者視点からの説明描写がない。いわゆるト書きに当たる部分だ。これら説明的な描写がほとんど無い。
 畑の真ん中一カ所だけで携帯の柱が三本立つ…だーっそんなこと大の大人なら無視してしまう極小エピソードだ。しかも妻の不倫と父の三度目!の結婚生活の破綻と、学校生活に行き詰まっているらしい義妹と、重要モチーフは満載の小説なのだ。これをドラマチックに盛り上げることなど、幾通りも思いつく。
 だが「僕」は、ぼんやりとあせりながら、もらいもののトマトの使い道に悩んだりミロの散歩にうつつを抜かしたり、花輪和一の漫画を読んだりしている。重大な事項と些末な事項が、同じレベルで「僕」を取り巻き、現実と同じ速さで小説内の時間が進んでいく。
 今までこの作家の読み方がわからなかったが、少しわかったような気がしてきた。ゆるゆると面白い。映画化されるそうなので、そちらも楽しみだ。
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No.11:
(4pt)

巧みな文章で綴られる、少々切ない物語

軽井沢の別荘(といっても、そんなたいしたものではない)における、30歳くらいの息子と父親、それとプラス一人(その際は「ジャージの3人」となる)とのゆるいジャージ生活を描いた作品。
父親と息子、旦那と嫁、息子と娘など、いろいろな人間関係が交差して、物語を作り出している。

小説として面白いか、というとちょっと微妙ではあるが、風景や心理の描写はなかなか巧みで、笑わされたり、ちょっと心を揺さぶられたり、の連続だ。

著者の別名である「ブルボン小林」名義でのエッセイが好きなので本書も読んでみたのだが、エッセイ同様特筆すべきは、「固有名詞の使い方の巧みさ」だと思う。
本書の柱的に使われる「和小学校」を始め、たまに出てくる実在する商品名(ミロとか、アルフォートとか)が、作品を引き締めている感じだ。
もっとも、これは世代が違うなどで通じない人には通じないだろうから、諸刃の剣ではあるだろうが・・・。
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No.10:
(5pt)

切ない一品

登場人物のモデルと思われる人物を三人とも知っている身からすると「ジャージの三人」はどうしても普通の小説として読むことができず、自分の中で感情移入のゲージを割り引くのに苦労する。作者に近しい人であれば誰でもそうなのだろうが、私もまた例外ではない。レタス畑のくだりと最後の場面では不覚にも泣きそうになった。切ない一品。

この作者のスタイルは柴崎友香の解説にもあるとおりで「描写される対象物が単なる小道具でなく作者視点での登場人物が関心を持つ対象として語られる」のが大きな特徴だが、「ジャージの二人」「ジャージの三人」にも色濃く表れる。ジャイアントカプリコや熊手やイル・ポスティーノなど、主人公の関心につれ淡々と綴られるさまは胸に心地よい。

作者はどっかの対談で「得意分野がないので仕方なく純文学にした」みたいなことを言っていたが、純文学でもう十分得意分野になってるし周りの評価も固まってきた。だがそんな評価はどこ吹く風でマイペースに新作を綴っていただければと。
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No.9:
(4pt)

ゆる〜い時間

失業中で小説家を目指す息子が
写真家の父とひと夏を過ごすために別荘へやってきた。
二人とも現在の結婚生活がうまくいっておらず
現実から逃避するような意味合いもこめて
毎年来ている別荘へやってきた。
そこで二人は何をするでもなく
ノンビリと、もしくはだらしなく夏を過ごしていく。

息子の胸中には不倫をした妻への
怒りとも何ともつかない思いが渦巻いている。
父も現在の妻との間がどうも冷え切っているようで
他人との接触を断ちながら
それでも何らかの接触を保ち続けたいと願っているような
そんな二人の日々が淡々と描かれている。

なんとなくゆる〜い持間が流れていて
読んでいてなんだかこちらもゆる〜くなってしまうような
不思議な感覚を抱いた。

「ジャージの三人」では
次の年の夏の別荘での話。
はじめは息子と父と息子の妻と。
後半は息子と父とその娘の三人。
ここでもゆる〜い時間が流れていて
居心地悪い、でも逆にほっとできるような
そんな時間が流れているようで
こちらもわりと面白く読めた。
ジャージの二人 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ジャージの二人 (集英社文庫)より
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No.8:
(5pt)

どこがいいというのは難しいけれど

庶民が別荘を持つとこんなものだろう、と本筋とは関係のないところで感心してしまいました。

つまらない(主人公の精神的に)日常を綴った作品ですが、じんわりと染み入るものがあります。

つまらなそうに見える人にも、その人の哲学があって、はっきりしない悲しみがあって、時間がゆっくり流れていく、そんな感じを綴った作品と思いました。
ジャージの二人Amazon書評・レビュー:ジャージの二人より
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No.7:
(4pt)

分かり合うってどういうことだろう

都会生活と夏の暑さから逃れるため、北軽井沢の別荘へドロップアウトした父子のスローライフを描いた作品。

この作品に登場する、父子は互いの夫婦仲が上手くいってなくて、人間関係に疲れてしまっている。

生きていくうえで避けることはできない人との関わりだけど、どんなにがんばっても、万事良好ということにもできない。だから面倒だとか鬱陶しくなって気疲れしてしまうのだけれど、親子であってもそうなのだから、突き詰めれば他人の夫婦なら、なお分かり合えくて当然であるのかもしれない。でも、そんな少しの可能性だから、分かり合えたときには奇跡のようにうれしく思えるのだろうか。

この作品は、淡々とした別荘地での生活を描きながら、人と人とのつながりをゆっくりと描き出してゆく作品である。

なお、本作には、表題作のほか、その次の年に再び軽井沢を訪れるもようを描いた「ジャージの三人」が併録されている。
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No.6:
(4pt)

傷心の男ののんびりとした山荘での日々

妻ともうまくいかず、仕事もその為にやけになって辞めちゃって

実父の別荘(山荘のようなもの)で父と二人で過ごす夏の日々の話。

パラレルの主人公と同一人物かも。妻は不倫していて、

結局不倫相手が遊びでうまくいかなかったみたいけど、不倫した

という事実をどうしても許せない。話のはしばしに散らばる妻への

消せない恨み辛みが情けない感じに描写されている。

「パラレル」でも思ったけど、この本でも恋愛に関しては男の人の

方がねちねちしているのかなって思った。

それでも世間一般の父親よりいいかげんっぽい父(実際に2回離婚

して、今は3回目の結婚をしている)とのやり取りや、

別荘での日常生活の描写が良い感じにおもしろく、

話の重みを中和している。話の舞台が自然の中でなければ

もっともっと重くて読みすすめにくい話だったかも。
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No.5:
(4pt)

ジャージをきて、ごろごろしながら、読みました。

親子、兄妹、夫婦、なんだかみんな複雑な関係なんだけど、山中で過ごす夏の数日間には、その縮図が凝縮されていました。劇的なことは何も起こらないのに…。

『猛スピードで、母は』で母と子、
『パラレル』で夫婦、
『ジャージの二人』で父と息子の関係だなー、となんとなく思いました。
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No.4:
(4pt)

再生の途中の物語

恐らくこの「ジャージの二人」と同時収録の「ジャージの三人」、そして最新作の「パラレル」の順で三部作となっているのでは…と思います。私は「パラレル」を先に読んでしまったのですが、まだの方には先にこちらを読むことをオススメします☆
 この物語で面白かったのは、息子である主人公と、その父の会話のやり取りです。バツ2だけれど特にダメ親父という訳ではなく、かと言って威厳のある父でもない。「友達親子」と言われるようなぁなぁの関係でもない、父と息子の程好い距離感が軽妙な会話に現れています。こういう風に淡々と子供を愛してくれる父親って理想だなぁ…と感じました。
 この物語では主人公はまだ再生の途中。「パラレル」で初めて物語が完結してると言えるのでは?と思い☆4つにしました。「パラレル」も是非!読んでみてください。
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No.3:
(4pt)

淡々と

淡々と、淡々と、ただ過ぎていく、そんな雰囲気。
いいのではないか、と思う。
何にも得るものがないような一日を過ごしてみたいときに読むような
空気のような読書が味わえる作品であろう。
しかし、丁寧に書かれていると思う。
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No.2:
(5pt)

ジャージで読むべき日常的エンターテイメント作品

この作品を読んだきっかけは作者がクウネルに書いていた「褒め負ける俺」というエッセーがあまりにもおもしろかったので。本屋で芥川賞作品にするか迷ったが、ジャージの2人というゆるいタイトルに負け購入。
エッセーを読んだ時から感じていたが、劇的とか奇をてらうとか、そういう言葉とは程遠い作家ですごくいいっ。映画化とかされる作品とは一線をひくほどのゆるさ、(でもクドカンが書いたらすごく面白そうだけど)やる気のなさ。読んでいる最中はぷぷという擬音がついつい口からこぼれ出る。吉田修一作品の読後感の爽快さが好きな人、等身大の日常的娯楽感が好きな人にはぜひともお薦めしたい作品。さいこうっ
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No.1:
(5pt)

ちいさなスケール

元(?)自然派の売れっ子カメラマンで×2の父親と、妻とは上手くいかず書けない小説家でもある、その息子が北軽井沢の古い山荘で、ひと夏を過ごす話。
私は、不甲斐ない彼ら父と息子に好意を持った。そのスケールの小ささを喜んだ。昔「スケールが大きい」といいう褒め言葉をよく聴いたものだが、スケールとはモノサシだ。モノサシが小さいと、目の前のものや人の微かな変化やニュアンスを感じることができるのだ。万歳スケールの小さい人生。私は小さな話を愛す。最後まで、彼らの「へたれぶり」をうきうきと嬉しがり、ときどきヒヒヒと笑いながら読む。
物語としては、起伏の少ない話だ。『猛スピードで母は』で芥川賞を取った時には、「こんなのは小説じゃねぇ!」というような評を書いていた審査員もいた。。
小説中『話を聞かない男、地図を…』のことが出てくるが、そして、それは現実には反対じゃないかと主人公は言っていたのだが、長嶋氏は、いわゆる女性的感覚の持ち主なのではないだろうか。
男の人って、年表にまとめられるよな(あるいはちゃんとプロットが書けるような)大河っぽいスペクタクルな小説が好きな傾向が強いのでは?それは俯瞰の視点を彼らが持っているからで、だから地図が読め政治もスポーツも将軍になったように評し戦略を練る(たとえそれはシミュレーションで終わるとしても)。殿様願望だ。
逆に言えば、こんなとこが、今この瞬間のあのようす、というような具体的細部に鈍感な所以でもあるんじゃないかと思う。
そんな風な非男性的なディテールが長嶋さんの小説の魅力。事件とかなくても、細部に笑いと面白さとアイロニーがあって楽しい。生活ってそんなものだもの。
ジャージの二人Amazon書評・レビュー:ジャージの二人より
4087746771

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