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東京バルがゆく 会社をやめて相棒と店やってます



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東京バルがゆく 会社をやめて相棒と店やってますの評価: 3.60/5点 レビュー 5件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(2pt)

スペイン好きの私としてはもう少し深みある話を期待していたのですが…。

大手総合電機メーカー山之内電機に勤める20代の貝原圭は脱サラを決意。上司や同僚からは強く慰留されるものの、かねてからの夢だったレストラン経営の道を歩むことに決めたのだ。
 キッチンカーでスペイン料理を出す店『ウツツノバル』を始めて2年。ずっと昔に別れたきりだった幼なじみ阿南礼二がやってきて、雇ってくれと言い出す。しかし阿南にはやる気が全く見えず、隙あれば居眠りをするばかり。
 これはそんな貝原と阿南のところへやってくるお客との交流を描いた連作ライトノベル短編集。

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◆「魚介のパエリア」
:貝原が務めていた山之内電機の新入社員・星野がパエリアを探してやってくる。恋人の菜央と喧嘩したばかりで、仲直りのために彼女が以前作ってくれたのと同じ味のパエリアを食べさせてやりたいと言う。しかし菜央のパエリアには何か隠し味があり、それがどうしても見つからない…。
 星野も菜央も社会人一年生。仕事や世間に慣れるのに一所懸命で、互いを思いやる気持ちを忘れてしまいがちです。そんな二人の仲直りに一肌脱ぐ貝原と、飄々としながらもここぞというときに知恵を出す阿南のコンビが作り出すパエリアの描写が読ませます。
「舌触りのぱらりとしたライスに歯を立てれば、わずかに芯が残っていて食感が絶妙。一緒に角切りの鶏肉も噛み破れば、じゅわつとしみ出す動物性のうま味が存分に味わえる。ぷりぷりしたむき海老の歯応えは心憎いアクセントだ」(84頁)
 ただ、菜央のパエリアの隠し味にたどり着いた後の星野と菜央の人生の展開が、ありきたりな感じがします。若く青い二人だからこその、拙速ともいえる決断と、遠回りした後の結末に意外性が感じられません。若い読者の心には添うのかもしれませんが、50を過ぎた私には、もっと柔軟な選択肢があったはずだと思えて仕方ないのです。まぁ、20代はそんな時代だと、私にも思いあたるところがないわけではありませんが。

◆「海老のアヒージョ」
:貝原と阿南の店にザ・シュリンプがやってくる。彼は海老のマスクをかぶり、お姉言葉で悪役を演じるプロレスラーだ。その彼の一人息子が父親をからかわれて学校でいじめられているらしい。だが、このいじめには別の理由があって…。
 海老のアヒージョにかけて海老マスクのレスラーを登場人物に配するあたりはかなり強引な気がしなくもありません。ですが、シングルファーザーのレスラーと小学生の息子の間に、得も言われぬ愛情があることが描かれる一編です。

*192頁:「熱いアヒージョのオイルにバケットをたっぷりひたしてほおばる」とありますが、「バケット」ではなく、正しくは「バゲット」。「バケット」はバケツのこと。baguetteはいわゆるフランスパンのことです。
 第3話206頁には正しく「バゲット」と書かれています。

◆「スペイン風オムレツ」
:阿南が怒らせた客はそこそこ知られたグルメブロガーだった。この客は『ウツツノバル』をこき下ろす記事を書いて留飲を下げるが、ある日通り魔に襲われて入院してしまう。果たして犯人は誰なのか…。
 客が怒った原因がまさか「スペイン風オムレツ」のスペイン語名が生む勘違いっていうことはないだろうな、そんなベタな話でひとっ話構成するわけじゃあるまい、と思っていたところ、本当にそんなネタでストーリーが展開するので拍子抜けしました。まぁ確かに料理名のスペイン語まで読者のだれしもが知っているわけではないとはいえ、あまり感心しないオチでした。

 また、貝原がバルを始めた本当の理由や、阿南が姿を消していた原因話も、発想が平凡で驚きがありませんでした。また山之内電機時代の同僚や上司の動向も、思いのほか平板な感じがします。ライトノベルに文学的な深みのある人間模様を求めるのは酷なのかもしれませんが、あまり満足は得られませんでした。
 
 わずかに次の一行が心に残りました。
「苦労を楽しめるように自分を変えて、毎日を常夏の楽園にしたいと思っているところです」(227頁)
東京バルがゆく 会社をやめて相棒と店やってます (メディアワークス文庫)Amazon書評・レビュー:東京バルがゆく 会社をやめて相棒と店やってます (メディアワークス文庫)より
4048924400

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