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(短編集)
扉のない家
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扉のない家の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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ホラーの巨匠、ピーター・ストラウブ氏の中短編集。 サイコスリラー風の「ブルー・ローズ」「ある街の短い観光案内」、性的虐待ネタの「レダマの木」、異色の文芸スリラー風の「バッファロー・ハンター」「女神の館」、に掌編風の作品が7篇、という風になっております。 この人の日本で翻訳されている物は殆ど読んでいるのですが、長編の場合中だるみする所があって、その辺がいまいち勿体ないと思っておりましたが、中短編の場合あまり長くないので、中だるみする前に終わる感じなので、読んでいて楽しかったです。 格調高く、荘厳で、読みづらいという風にも聞きますが、私の場合はこのくらいの文章の方が読みやすいというか、通俗だと読みやすすぎて却って読みづらい、と別の作品の感想に書きましたが、本作もそういう感じで読みやすかったです。 この人に限らず、こういう風に重厚な筆致の人の文章を、文学的、文学的格調の高い、と形容されやすいですが、吉田健一の文学論に依ると、文学が娯楽なので真面目に接したり、勉強に使う物ではない、という事で、文学的という風に言われる事に疑義を呈しておきます(因みに、文学が小説に使われやすい言葉ですが、かならずしも小説に使われる物でもないという事で、日本の場合、漫画の方が文学っぽい様に思えます)。 それと、訳者あとがきで、作品中に言及されている関連のある作品の事が丁寧に書いてあるので、必読で感謝です。 ともあれ、ホラーに限らず読み応えのあるサスペンス等を嘱望される向きにお勧めの中短編集でした。是非ご一読を。 蛇足ですが、この人の作品や同じ頃紹介されていた他の方のモダンホラー(死語)が翻訳されなくなっていたり、手に入りにくくなっていて悲しいです。ある版元の<ヒドゥン・マスターピース>等で復活される事を期待しないで待っております。 また、「レダマの木」と「ブルー・ローズ」はこの人の「ブルー・ローズ」三部作に関連しているので、三部作を読む方はその前の読んだ方がいいかも。 | ||||
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ピータ・ストラウヴの作品集。ホラーの位置づけなのだろうがストラウブらしい文芸よりの作品になっている。スーパーナチュラルを全面に押し出さず、人間の心理を丹念に描写することで恐怖を煽っているのが特徴的だ。 ごく短い頁数にまとめることもできるのだろうが、冗長とも思える中編作品に仕上がっている(短い作品は2編のみ)。人の痛みや苦しみをじわじわと表現するには、ストラウブの作風と作品の長さは相乗効果をうむのかもしれない。どの作品も結末に明確な何かが提示されるわけではないので、じっくりとこの長い物語の過程を楽しむことができるかが好き嫌いの分かれ目だろう。 全編を通して暗さが目立ち、タイトルの『扉のない家』のとおり閉塞感が強く心に残る。私は、別の作品集で本書収録の『ブルー・ローズ』と『レマダの木』を読んでいたのだが、かなり時がたっていても気味の悪い肌触りに似た感覚を憶えていた。 催眠術で弟を自死させてしまう少年『ブルー・ローズ』、映画館での淫蕩な体験をする少年『レマダの木』、地方都市の欺瞞『ある街の短い観光案内』、本に没我していく哺乳瓶に執着を持つ独身青年『バッファロー・ハンター』、観客を魅了する不可思議なパフォーマンス『ポポの魔法のタクシー』。 とりわけ長編といってもよいくらいの頁数を割いて紡ぎだされる『女神の館』が良かった。 ■女神の館 選ばれたもののみに研究施設を提供する英国のエスタウッド・ハウス。米国の大学で終身在職権の取得を目論むスタンディッシュは、自身の祖母の姉であり詩人のイザベルを発掘するため、エスタウッド行きを切望する。スタンディッシュは、エスタウッドへ自身の熱意を表明して、長らく待ちに待ったあげく、ついに一通の招待状を受け取るのだった ・・・ 伝統的な英国ゴーストストーリーだろう。底冷えするような恐怖を感じる。謎が謎のまま終わってしまうのが、かえって強い印象を刻み込むことになる。読者のストラウブに対する好悪がわかる試金石のような作品だ。 なお、『ブルー・ローズ』はストラウブのブルー・ローズ三部作『ココ』、『ミステリー』、『スロート』の作中作の位置づけになっている。 | ||||
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