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waiter さんのレビュー一覧
waiterさんのページへレビュー数6件
全6件 1~6 1/1ページ
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ATHOS。
不可解な章題から記される奇怪な手記。アゾート幻想に囚われた狂人の手記だ。 この文章から始まり、物語は探偵・御手洗潔の推理に移る。言及されることは少ないが、本書の面白さには御手洗の推理の豊富さと突飛さにあると思う。到底ありえないような推理を導き出し、それを正しいと疑わない御手洗の姿勢とキャラクターは、謎の不可解さに適合している。 問題となる謎、四十年間解明されることのなかった処女六人バラバラ殺人の謎の不可解さも魅力的である。誰かが、ミステリに必要なのは不可解な謎だと言った。まさに本書における謎は不可解。解明は不可能ではないかとすら思わせてしまう著者の手腕は相当のものだ。 御手洗のキャラクターが特筆されやすいが、忘れてはならぬのが助手・石岡の存在だ。彼は御手洗の推理に手を貸すなんて野暮なことはしない。探偵を置いて、彼自身が彼なりの推理を展開し、捜査を行う。よく考えればこれはなかなか斬新な試みだ。助手が助手のまま完結するのではなく、探偵であろうとする。これは石岡の西壁を如実に表している上に、物語における明らかな重要な要素だ。 ATHOS。アゾート。もしくはアゾースとも云う。 錬金術における賢者の石を示す言葉だ。全ての始まりを意味する「A」の文字の後ろに、ヘブライ語、ラテン語、ヘレネス語の最後の文字を加えた言葉。それがATHOS。 この言葉の成り立ちに符合するように、物語の序章と終章には奇妙な、そしておそらく恣意的な合致がある。アゾート幻想という一つの軸を取り巻くように展開する事件の存在。そしてメタフィジカル的な観点から見た時に感じる合致。著者・島田もなお、アゾート幻想に囚われていたのかもしれないと思わせる。 ATHOS。賢者の石。それは錬成における触媒。 著者のアゾート幻想は、それ自体を触媒として、感動と衝撃を錬成した。 驚くべき錬金術師だ。島田荘司。 |
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すげぇよ京極!すげぇよ!
箱ってなんだよ!美少女の詰まった箱、研究所のような箱、人々に祀られる箱。箱、箱、箱。匣! まさに読む隕石。美しい流星に気を取られていたら、その破片に前頭葉を殴られる。 くらくらと眩暈がする中、次の隕石が絶え間なく注ぐ。 隕石から逃れるには、ふらふらと滑稽な馬鹿踊りを踊るしかない。 そうこうしているうちに、読者はどこか他の場所へ連れて行かれる。そこがどこか理解した頃に物語の幕が降りる。 読者は取り残される。帰ってくることはできない。でもそれでもいいと思える。 気がついたら次作に手を伸ばす読者。 最高のバッドトリップ。文学のオーバードーズ。 |
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驚くべき大長編だが、中弛みさせずに読み続けさせるリーダビリティが貴志にはある。他の貴志作品にも言えることだが、この著者はリアリティがすごい。他の作家とは比にならないくらいだ。設定としては到底ありえないような世界が展開されるのだが、まるでそれが事実であるかのように読ませる。
確かにアニメ化映えする作品だ。しかしそんな作品を文字で表現することこそに意味がある。リアリティを、読者各々によって構成し直すことができる文学こそが、本作を表現するに最適な媒体であろう。 読み始めたら眠れなくなる。連休中に読め! |
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崩壊の美学!
これが崩壊の美学。 全てが明らかになった時、謎と、世界が崩壊する。本作は一つの文学作品としても、美しい顛末が用意されている。綾辻の怪奇趣味とミステリ的要素が丁度よくブレンドされたミステリの歴史的遺産であろう。 僕はアリバイトリックが苦手で、本作においても「アリバイものかぁ…」と少々の消沈を抱いたものだ。しかしながら読後、そんな思いは消えていた。こんなアリバイトリックがあっていいのかと脱帽した。 まさに驚天動地。 是非一読を。 |
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あまりに伝説的すぎて感想を書くことさえ憚られ、ただ、傑作であったと言うことしかできない。
結末の瞬間の爆発のために積み上げられてきた精緻な筆致による殺人鬼の心象。吐き気を催すほどのグロテスク。ここまで殺人鬼に近づいた作者はいないのではなかろうかとも思わせる。 エピグラフの神統記とキルケゴールが意味するものも、読後漠然と理解できるようになる。 伏線やどんでん返しという点に着目せずとも、本作は鮮烈な殺人文学として文壇の歴史に刻まれることは間違いない。 |
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