海賊とよばれた男
評判
海賊とよばれた男の評価:
4.26/5点 レビュー 1,156件。 S ランク
Amazonレビュー一覧
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全163件 81〜100 5/9ページ
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海賊とよばれた男の評価:
4.26/5点 レビュー 1,156件。 S ランク
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この小説も、上下二巻の長編ですが一気に読めました。私が知らなかったことも多くあり勉強になりました。
ですが、読み終えて深い感銘を受けてから、引っかかることを調べていくうちに「ん?」と感じることがあまりにも多いことに気づきました。
永遠の0 (講談社文庫)
影法師 (講談社文庫)
といった、百田氏が上梓した「純然たるフィクション」と違い、この本は、実在の人物である出光佐三、実在の企業である出光興産を描いていると公にしている作品です。
ストレートに「出光佐三」といった題名にして、登場人物も全て実名にして、参考文献への脚注もつけた「史伝」のスタイルで書くべきであった、と思います。
※ 百田氏にそのような本を書けるのか、百田氏がそのような本を書くのか、という問題は別ですが。
すなわち、阿川弘之の
山本五十六 (上巻) (新潮文庫) 山本五十六 (下巻) (新潮文庫)
米内光政 (新潮文庫)
井上成美 (新潮文庫)
の『海軍三部作』のようなスタイルです。
阿川弘之の『海軍三部作』は40年以上前に山本・米内・井上の三提督を実際に知る人たちにインタビューした上で書かれたものですが、例えば「米内の幼少期、青年期については既に知る人がいない」として、確かな資料で分かる概略だけを述べるに留めています。阿川氏の意見は「自分が考えるに・・・」などと分かるように書き、三提督の人間像を深く掘り下げています。
一方、この「海賊とよばれた男」は、参考文献として多数の本を挙げておりますが、どこまでが史実でどこからがフィクションなのか判然としません。
登場人物も仮名の人と実名の人が入り交じっており、仮名の人は実在したのか架空なのか分かりません。
一番引っかかるのは、国岡が独立して起業する際に「自分の家屋敷を売り払って、他人である国岡に開業資金を提供してくれた」日田重太郎です。この人は物語の中に何度も出てきます。
常識で考えてそんな太っ腹な人が実在するとは考えにくいのですが、実在したとすれば凄いことです。
しかし、この小説を読んでも実在したのか否かは見当がつきません。
日田重太郎とその事績が架空だとすると、物語の根底が抜け落ちてしまうように思います。同じことが物語の随所でなされていると想像すると、感動して良いのかどうか躊躇を感じてしまいます。
※ 出光興産の公式サイトには日田重太郎のことは何も書かれていません。
なお、出光興産は
「借金して土地を買い、その土地を担保にさらに土地を買い、設備投資をする」
経営をしてきました。
この経営方法は、「土地の値段が下がり、担保価値が下がる」ようになると行き詰まります。
1990年代のバブル崩壊後、土地は必ず値上りするという「土地神話」によって同じような経営をしていた企業が多数破綻しました。その一番有名な例が、中内功氏が一代で築いたダイエーです。
出光興産は、90年代には有利子負債が約2兆5千億円に達し、格付会社ムーディーズから「破綻寸前の企業」の格付けを受けて存続が危ぶまれたようです。ただし、ダイエーのように破綻には至らず、内部改革で事業を再構築し、株式を上場し、より「普通の企業」に近づいて現在に至っています。
この経緯については
出光興産の自己革新 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 4)
に詳細に書かれているようです。抜粋にあたる 一橋大学准教授 島本実氏 の論文がネット上で閲覧できます。グーグルで「出光興産 有利子負債 上場」で検索すると出てきます。
出光興産が潰れそうになったのは、出光佐三(国岡鐵造)が1981年に死去したのちの出来事ですが、
「借金して土地を買い、それを担保に借金して事業拡大する経営手法が、出光佐三(国岡轍造)のやり方であった」
「これはいわゆる『土地神話』に依存した経営であり、例えばダイエーが同じ経営手法を取っていた」
「出光佐三の没後10年ほどで『土地神話』が崩壊し、出光興産の経営は行き詰まった。徹底した改革がなければ出光興産は借金に押し潰されて破綻していた」
ことに、百田氏が一切言及していないのはアンフェアだと思います。
※ 百田氏はそこまで知らなかった/理解できなかったのかもしれません。
また、出光興産については、企業小説の大家である高杉良氏が約40年前、出光佐三が健在であった1975年に発表した処女作
新装版 虚構の城 (講談社文庫)
があります。
高杉良経済小説全集 (1)
によると、発表時に「これは内部告発ではないか」と経済界で話題になった作品です。
「虚構の城」では
「社主(出光佐三=国岡鐵造)が出光興産に君臨し、社主の考えに逆らうことは一切許されない。出勤簿もタイムレコーダーもないために社員は早出競争・残業競争を強いられ、8時出社・21時退社が当たり前だが残業代は支払われない(2014年現在、社会問題になっている「ブラック企業」そのものです)。東大工学部を出て出光興産に入り、顕著な業績を挙げていた主人公は『出光興産に労働組合があっても良いのではないか』という意見をごく控えめに表明しただけで畑違いの部署に左遷され・・・」
という、「海賊とよばれた男」では一切描かれなかった「出光興産の暗部」が克明に描かれています。
「虚構の城」は絶版書ですがアマゾンのマーケットプレイスで容易に買えます。
本書「海賊とよばれた男」に感銘を受けた方は、ぜひ「虚構の城」も併読なさることをお勧めします。