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ショパン 炎のバラード
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ショパン 炎のバラードの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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先程、到着いたしました。 非常に状態も良く、新品に感じます。 ページを開いた跡もございません。 。 。 ありがとうございました。 これから読みます。 | ||||
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「ショパンのバラード第4番には別なバージョンのフィナーレが存在していた!」となれば、ショパン好きにはたまらなく興味をそそられる話です。そして「その未発表の楽譜の数奇な運命をたどる壮大な音楽ミステリー」とくれば、どんなスリルとサスペンスが待ち受けているのか、たとえば影の追っ手に付けねらわれ、秘密の楽譜を手に逃避行を重ねるピアニスト・・・?などと、わくわくする展開を期待してしまいます。 けれどもそういった物語では全くありませんでした。これはバラード第4番の新しいフィナーレの楽譜に込められた、ショパンの恋の情熱をあばく物語です。ショパンはその痛切な思いを新たに作曲したフィナーレに託した、しかし死を目前にした彼にはそれを演奏する体力は残っておらず、その気持ちを「情念の筆跡」に込めたのです。 そしてそれはある出会いからその知られざる楽譜を手にした主人公のピアニスト(アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ?)によって読み取られます。彼は彼自身の恋にその楽譜に込められた思いを重ねる。しかし彼はその楽譜を実際に音にして、それが演奏によっては再現され得ないもので、「私」の完璧な技術によっても(いや、むしろ「完璧」なるがゆえに)表現され得ないものであることを知るのです。それは「情念の筆跡」をもってのみ、表現が可能であると悟るのです。 「壮大な音楽歴史ミステリー」というのはやや誇張のように思えますが、読後にじーんと心にしみるものを残してくれる小説です。文体が個性的で、読み通すのは正直しんどかったですが、読書好きでショパン好きならおすすめいたします。 最後に、「ショパン 炎のバラード」っていうタイトル、ちょっとセンスないかなーと思いました。まるで安手の歌謡曲みたいで。気恥ずかしくてなんとなく本を手にするのをためらってしまいました。キャッチーなタイトルではあるかもしれませんが、この本の読者層を考えれば、そのまま「Presto con fuoco」でよかったような気もします。(もちろん「fuoco」は「炎」という意味ではあるのですが・・・。) | ||||
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《 情念の筆跡というものもあるはずだ。ごく柔らかな徴(しるし)、長く下がりすぎた八分音符の先、殴り書きの休符。四分休符にも相当するか、少し強くペン先を押した跡。引っ掻(か)いた傷痕(きずあと)にも似て、あの分厚い、毛ばだった、かつては、楽譜を書くのに用いた紙に、荒々しく刻まれた気配。かすかに閃(ひらめ)いた躊躇(ためら)いの跡も見つかるはずだ。《プレスト・コン・フオーコ(情熱の炎をこめて迅速に)》という狂乱の指示にも。あの狭い余白のなかで薄れてゆくインクの跡、あたかも時間を圧縮していくかのように。時間を閉じ込めるかのようにして。次つぎに降ってくる音符。それらは音符か、それとも、時には雨だれか。》 ロベルト・コトロネーオ『ショパン 炎のバラード』河島英昭訳、集英社 《 あえて待ちつづけようとする好奇心の形態もあるのだ。》 ロベルト・コトロネーオ『ショパン 炎のバラード』河島英昭訳、集英社 《 精神が物質と結びつく一点がある。微細な、取るに足らない、周縁において。》 ロベルト・コトロネーオ『ショパン 炎のバラード』河島英昭訳、集英社 〔……〕 《 こうして私は、思い知ったのである。世界が、ひとつの音色のうちに潜む、かすかな、不協和音に過ぎないことを。それこそは、震え戦く完璧さのうちに、潜むものだ。 そしてわが生涯において、初めて、そのとき、私は安堵を味わった。》 ロベルト・コトロネーオ『ショパン 炎のバラード』河島英昭訳、集英社 | ||||
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晩年のショパンから義理の娘ソランジュに、その心情の吐露として贈られたという第4バラード異稿(presto con fuoco)は数奇な運命をたどる。2次大戦、ナチスによるパリ占領の際にベルリンへと持ちだされ、さらに赤軍によるベルリン陥落の後、モスクワの音楽院に。そこで楽譜を手にしたピアニストは愛人に裏切られ、密告され命を落とす。しかし手稿は当局の捜査を逃れ、友人のバイオリニストの手を経てパリへ。そしてついに異稿譜は主人公へともたらされる。そこに彼自身と彼の家庭を巡る物語も重なる(母と叔父、父の語ることのできない関係、そして主人公と若い女性との情事)。秘匿された幻の楽譜は、作曲者ショパンの情念の結実であるとともに、この物語にかかわるすべての人の情念(=秘められた愛)の形象化でもある。それは決して公開されるべき類のものではないだろう。 年齢を重ね、人前に出ることも厭わしくなり、隠者のような生活を送る主人公だったが、彼の気難しさは完璧を求めることよりも、むしろ一種のノイズ=自由を求めたがゆえなのだった。(翻訳者と吉田秀和氏には申し訳ないが、ここは「ノイズ」や「雑音」が正しく、「不協和音」ではおかしいと僕は思う。主人公が、単音の中に聞き取るかすかな違和感なのだから。) PS1:ショパンの第4バラードのフィナーレは、通常版でも十分に情念の迸りを示すような圧倒的な音楽です。これ以上の、これ以外のフィナーレは、あり得るのだろうか。 PS2:平野啓一郎「葬送」は、ちょうどこの物語と関係する時代を描いている。一緒に読むのも一興だろう。 | ||||
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晩年のショパンから義理の娘ソランジュに、その心情の吐露として贈られたという第4バラード異稿(presto con fuoco)は数奇な運命をたどる。2次大戦、ナチスによるパリ占領の際にベルリンへと持ちだされ、さらに赤軍によるベルリン陥落の後、モスクワの音楽院に。そこで楽譜を手にしたピアニストは愛人に裏切られ、密告され命を落とす。しかし手稿は当局の捜査を逃れ、友人のバイオリニストの手を経てパリへ。そしてついに異稿譜は主人公へともたらされる。そこに彼自身と彼の家庭を巡る物語も重なる(母と叔父、父の語ることのできない関係、そして主人公と若い女性との情事)。秘匿された幻の楽譜は、作曲者ショパンの情念の結実であるとともに、この物語にかかわるすべての人の情念(=秘められた愛)の形象化でもある。それは決して公開されるべき類のものではないだろう。 年齢を重ね、人前に出ることも厭わしくなり、隠者のような生活を送る主人公だったが、彼の気難しさは完璧を求めることよりも、むしろ一種のノイズ=自由を求めたがゆえなのだった。(翻訳者と吉田秀和氏には申し訳ないが、ここは「ノイズ」や「雑音」が正しく、「不協和音」ではおかしいと僕は思う。主人公が、単音の中に聞き取るかすかな違和感なのだから。) PS1:ショパンの第4バラードのフィナーレは、通常版でも十分に情念の迸りを示すような圧倒的な音楽です。これ以上の、これ以外のフィナーレは、あり得るのだろうか。 PS2:平野啓一郎「葬送」は、ちょうどこの物語と関係する時代を描いている。一緒に読むのも一興だろう。 | ||||
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