彼女の隣で、今夜も死人の夢を見る
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集英社文庫で発表してヒットした「幽冥推進課」が完結して、これからどんな作品を発表するのかと見守っていた竹林七草だけど意外にも角川文庫から作品を発表。 物語は主人公である大学生・奥津湊斗の見る「死人の夢」から始まる。職場からの帰り道で車に跳ねられ首の骨が折れて腸が飛び出る致命傷を受け、車に乗っていたカップルが救助もせずに責任の押し付け合いを始める様を見せ付けられながら息を引き取った瞬間、自分が致命傷を受けたかの様な錯覚とともに跳ね起きる湊斗。 気付けばそこは大学の教室で近くにいたのは夢に出て来たカップルの片割れであった女子大生と彼女が乗っていた車に跳ねられて死んだサラリーマンの無惨な姿をした亡霊。湊斗には他人に取り憑いた霊の姿を見る霊視能力と霊が経験した死の瞬間を夢を通じて見るという特殊能力が子供の頃から備わっていた。 そんな特殊能力を口にした事で子供の頃から周りから変人扱いをされ孤独癖を拗らせていた湊斗だったが、トイレで吐いていた事で出遅れた次の講義では苦手な教卓の正面に座る羽目に。仕方なしに空いた席に着いた湊斗だったが、続いて入ってきた女子学生の姿を見た瞬間周りは退避を始める。 訳の分からない湊斗だったが、周りのヒソヒソ話で彼女が「10年間の神隠しに遭い、全く変わらぬ姿で帰って来た」という噂の主、高原玲奈だと知る。近くに座る玲奈に溺死体としか見えない女性の霊が取り憑いている事に気付いて蒼褪める湊斗だったが、玲奈はそれに気づかず「座る席はそこで良いのか?」と尋ねてくる。 質問の意味が分からないまま玲奈の傍の席で講義を受ける羽目になった湊斗だったが、講義の真っ最中に水滴の音を耳にした事でハッと玲奈の方に目をやると取り憑いていた亡霊が苦し気に藻掻き出し、同時に何も無い筈の中空から大量の水が落ちてきて湊斗ともども玲奈をずぶ濡れにしてしまい…… 随分と読み易い作品だったな、というのが読み終えての第一印象。最近発表していた「八街七瀬」やら「ヒルコノメ」なんかと比べてもサクサク読み進められた感が。読み易さという点であれば「幽冥推進課」に一番近いかも。 物語の構成は3章からなる連作短編形式。霊に取り憑かれた人間の傍で眠るとその霊が死んだ瞬間を強制的に、それも超絶リアルに体験できてしまうという迷惑極まりない体質の青年・湊斗が大学の同級生で10年の神隠しにより「偽物の神隠し」に遭った霊を呼び寄せてしまうという奇妙な女子学生・玲奈と知り合った事で彼女に取り憑く霊の死の真相を明かしていくという奇妙なミステリ。 初っ端から湊斗が車に跳ねられた際の死の瞬間を夢に見るのだけど……まあ、リアル。首はボッキリ折れるわ、腸は飛び出るわと作者お得意のグロ描写があちこちに出てくる。第二章の亡霊とか頭がパックリ割れて中身が見えてたりするし(「ヒルコノメ」とかに比べりゃ抑え気味かもしれんけど、基本竹林七草はグロ描写大好きな作家と思っていた方がよろしい。グロ描写が少ない「幽冥推進課」がむしろ例外) グロはあるけど読み易いのは連作短編形式を取っていた事が大きいのかな、と。「幽冥推進課」にも言えるけど、この作家さん、短編形式で書いた方が起承転結という基本的な話の展開をテキパキと進められて圧倒的に読み易くなる。忙しい読者でもちょっとした空き時間にサッと読めるのでこれは大きい。 話の体裁も亡霊の死の真相を解き明かす事を基本パターンにしたミステリで、元国民様が土地に取り憑いている理由を明かす為にヒロインが奔走する「幽冥推進課」とこの点でも被っているがその章で主人公が果たすべき目的が明示されているってのも読み易さに繋がっていると思われる。 あとキャラが割とベタってのも読者へのお馴染み感を産んでいる部分はあるかと。他人に理解されない事で孤独壁を拗らせたぼっちキャラというのは作者がデビューしたライトノベルの世界ではお馴染みだし、何よりパートナーを務める玲奈の性格が色々と分かり易い。自分を助けてくれた湊斗に「友達にならない?」と持ち掛けたにも関わらず断られてキレるあたり(それでも憎からず思ってる部分が透けて見える)、これまたライトノベルのヒロインのお約束を踏襲しているというか。玲奈の一見気が強そうに思えて実は……というのは作者の二作目「お伽鬼譚」のヒロインを思い出す部分も。 ミステリなのだけど、謎を解決する事が幸せに繋がるとは限らないというのもビター感があって中々に宜しい。二人が解き明かそうとする「偽りの神隠し」は要するに失踪宣告をされてしまった行方不明者。身内の中には諦めきれずに「どこかで生きているかも」という望みを抱えている人もいるにも関わらず「やっぱり死んでました」と突き付けるのだから解決しても感謝されたりはあまりしない事から話全体をダークな雰囲気にしている。 ただ、湊斗の夢の中に出てくる「もう一人の玲奈」が完全には正体が明かされず、思わせぶりなまま続巻前提ってのは版元からの要望が大きいのかなあ?ライトノベル仕立てにしてしまうってのはいかにもKADOKAWAっぽいというか…… 欲を言えばもう少し作り込んで作中で登場する比較文化人類学者なんかも主役二人にもう少し絡めて欲しかったという気も(第三章では割と絡んでいたので、あのテイストをもうちょっと強めにする感じで)。 ともあれ、連作短編形式のミステリという読み易さに主眼を置いた造りになっているので「幽冥推進課」が完結した状況で作者には本作を頑張って欲しいのだが……二巻、出るよね? | ||||
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