お迎えに上がりました。 国土交通省国土政策局幽冥推進課5
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なんとなく疲れている時。やりきれない時。元気にさせてくれるような気がします。少し肩の荷をおろせそうな・・・ オススメします。 | ||||
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次が待ち遠しいです。 ライトな話のフリをしていますが、普段は目を向けていない(向けたくない⁉︎)日本社会の抱える深刻な問題を巧みに織り込んであります。消えゆく妖怪達と人の文化社会が重なって感じられてなりません。 | ||||
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今回は311に関係する話なので、堪えますね。自分の命よりも子どもの命を優先する親心、泣けます。 からの、朝霧家の親子バトルはこれまでと違って、いま生きている人たちの言葉にしない家族愛がもどかしいやら、まぁどこもこんなものだよね、とも思えるような展開に。 | ||||
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国土交通省内(といっても事務所は雑居ビル)にひっそりと存在する「元国民様」の起こすトラブル解決を専門とする幽冥推進課で非正規職員として働く赤貧ガールの物語・第五弾。 物語は主人公の夕霞が八月を迎えた幽冥推進課で百々目鬼さんから夏季休暇の予定を尋ねられる場面から。お盆と言えば里帰りではある事は分かっていても帰郷の費用を考えたら赤貧洗うが如き生活が続いている自分とは無縁の代物と諦めていた夕霞だが、課長の辻神が急な案件で出張して欲しいと持ち出してくる。とある国道整備の為の出先で特定の時間になると倉庫内に仕舞ってある繋がれていない電話機が鳴り響き「ここから出て行け」という女の悲鳴が聞こえてくるらしい。 渋々ながら引き受けた夕霞だが、出張先は宮城県の気仙沼。火車先輩をリュックに詰めて辿り着いた気仙沼駅で夕霞を迎えたのは「気仙沼線」を走るバス、BRT(バス・ラピッド・トランジット)だった。荒れ果てたまま復興の進んでいない気仙沼・陸前地区の風景に絶句しながら辿り着いた東北地方整備局の出先で胡散臭げに夕霞を迎えた役人は誰もいない倉庫で鳴り響く電話の下に連れて行くが恐る恐る受話器を取った夕霞の耳を打ったのは「なんでまだそんな所にいるのよ!」という女性の叫び声。何事かと当惑する夕霞だったが更に聞こえてきたのはバキバキという破砕音とゴゴゴと響く水の音。「逃げて!」と絶叫する女性の声に尻もちを着いた夕霞は一つの答えに辿り着く。この声は2011年3月11日から響いてくるものだと…… 実際の所はどうあれ国土交通省という役所は国土の開発・保全を目的として設けられた役所であり、そこには次の世代の日本人に安心して暮らせるだけの国土・郷土を受け継いでいく、という国民の意思が込められている。その意味においてタイトルに国道交通省の名を冠した作品ならではの内容だったな、と読み終えた上で改めて思い知らされた感がある。 今回は主人公・夕霞の故郷である鹿角市を含む東北地方が舞台となっているのだけれども、上に書かせて頂いた冒頭部分からもお分かり頂ける様に「東北の今」を正面から捉える様な内容となっている。構成の方は三つのエピソードから構成される連作短編形式ではあるが、後半の二本は夕霞の里帰り編と読んでもいい「続き物」の色合いが強い内容。 こう言っては身も蓋も無いのだけど、東北と聞くとどうしても「衰退」の二文字がチラつくのは否定できない。ただでさえ若年層中心の人口流出とそれに伴う高齢化が止まらなかった所にとどめの一撃の様な東日本大震災が加わり、もはや何をどうしたら良いんだよと途方に暮れている人も多かろうと思う。 自分には関係無い土地だから、という方もおられようが結局これは遅かれ早かれ日本全体の問題になる訳で(既になっている、とも言えるが)災害によって荒らされる土地とノンストップで突き進む高齢化からの地域社会の崩壊を前に翻弄される夕霞の姿はまさに日本人全体の姿であると言っても良いかと。 それでも目の前の困難を克服して掛け替えの無い物を次の世代に残そうという人の意志を「郷土」あるいは「家族」というテーマを題材に描こうとしたのがこの第五巻である。特に夕霞に対応した東北地方整備局の課長が言い放った「あの日の記憶を共有している私たちは、どれほど怖くて聞くのが辛い電話であろうとも、絶対にあの電話を無下には扱いたく無いんです」「幽冥推進課というのがどんな課なのかよく知りませんが、それでも外から来た人間に軽い気持ちであの電話に触れて欲しくはありません」という台詞は耳に痛い。 他の地方にいてもモニターを通じてあの惨劇を目にした人間は多いだろうが、慣れ親しんだ土地が津波に飲まれ大切な家族や友人を根こそぎ奪われた辛さを共有している土地の人々に掛けるべき言葉を思い付く人はどれだけいるだろうか?「がんばって」だの「「希望を捨てないで」といった紋切り型の言葉を向けられれば「これ以上何を頑張れと言うのだ」というお叱りの言葉が返ってくるのは目に見えている。何より大切な家族を失いながら「生き残ってしまった」という罪悪感を抱え込んでしまった人に部外者がどんな言葉を掛けてやれるというのか…… サバイバーズ・ギルトとも呼ばれる「生き残ってしまった罪悪感」に陥った生存者を救ったのは何であったか?これが夕霞の里帰り編とでも称するべき第二エピソード以降に綺麗に繋がっていたのは拍手喝采を送りたくなった。東京で赤貧生活を送る娘に電話越しでガミガミ叱ってくる母親・朝顔が中心に据えられたストーリーなのだが、仏間に何故か地縛霊として居座っている夕霞の祖母の心残りこそが第一エピソードで生き残った息子に亡くなった両親が伝えたかったものに完全に重なっている。 手間暇かけて国土を保全しようとするのは何のためか?次の世代の為に安心して暮らせる国土・郷土を残すとはどういう事なのか?次の世代よりは間違いなく早く死ぬであろう自分たちの世代がなんでそんな事をしてやる義務があるのか?多額の税金を投入して国土交通省を維持している現役国民としては色々と言いたくなる事もあるが自分の死後も生きていくであろう次の世代に「しっかり生きなさい」というメッセージを送るには「この土地で生きていきたい」と思わせるだけの環境整備が必要なのだな、と嫌でも気付かされる。面と向かって言うのは気恥ずかしくても豊かな国土を残すことがそのメッセージの代わりになってくれる、という訳である。 そしてそんな前の世代が必死で繋いでくれた国土・郷土を、環境を受け継ごうとする「次の世代」の姿を第三エピソードが担っているのだからこの第五巻の構成は完璧と言わざるを得ない。かつて在った賑わいを失い、放っておけば人口流出と高齢化で先が無くなる郷里を愛し、必死で衰退に抗おうとする若い世代の責任感を十二分に描くストーリーを最後に持ってきて第一・第二エピソードへの答えとして用意するのだから作者の手腕は見事である。 祖母・祖父から父・母へ、そして子へと確実に受け継ごうとする国土・郷土の維持と保全、その手間暇を惜しまない愛郷心、そして愛郷心の基になる家族愛、次の世代に向けての「しっかり生きなさい」という想いを余すところなく描いたシリーズ最高傑作と言っても言い過ぎでは無い第五巻であった。 | ||||
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