人魚呪
- 人魚 (13)
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
人魚呪の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
著者の文筆力は、商業出版の水準を満たす十分なものがある。読みやすさ、文学的表現、話の展開などは水準に達しているので、星2つである。 しかし、本書の最大の欠点は、主人公に信念がまったくなく、それこそ、ただ海中を漂うクラゲであり、何も共感できる点がないとうことである。文章が拙くとも、主人公の生き方や信念が読者を感動させ、読者の人生に影響を及ぼすという書の方が、かえって好感が持てる上に、読後感が良い。主人公の犯した罪への意識とその贖い、不老長寿という人類永遠の夢を手にした者の思考と行動、こういったものの描かれ方が非常に弱い。したがって、その分、感動が薄れる。 民話、昔話が題材であるなら、このような時代であるからこそ、現代人の心に突き刺さるような感動が欲しかったのだが、大きく期待外れであった。 また、星を減点させたのには、史実の誤りがある。織田信長が、神を信じない無神論者で、第六天魔王と名乗ったというのは、小説により流布した架空の人物像であり、その人物像でもって物語の後半を展開させるのには興醒めを覚える。そもそも、信長が第六天魔王と名乗ったという歴史資料は根拠が薄く(一次資料は発見されていない。イエスズ会宣教師ルイス・フロイスがこのことを見聞したという書簡に記されているのみである)、そのことを当時の民衆は知らなかったと考えられている。昔に書かれた小説ならともかく、現代で描く時には、信長に対してこのような人物像を描くことは、作品の質を低下させる。 信長が比叡山延暦寺を焼き討ちしたことから、信長は神を恐れず、神を否定し、自らが神と考えているなどという人物像はあまりにもチープである。当時の仏僧は腐敗しており、また、信長は天下統一の戦略上、統治者として比叡山延暦寺の焼き討ちを行ったのであり、このことは現在では高校生ですら知っている歴史事実である。 ちなみに、比叡山延暦寺は何度か焼き討ちにあっており、足利将軍によっても焼き討ちされた。足利将軍は無神論者で第六天魔王ではないはずだ。このことは、現代の私たちよりも当時の人の方が良く知っており、僧侶の腐敗も知っていた。 著者は、話の展開を面白くするために歴史上の人物を登場させたのであろうが、歴史を論ずるときには現代の間違った歴史観で論じてはいけない。著者が歴史に関して知識がないならば、前半部分を膨らませて、人魚との葛藤を描くことに終始した方が感動的であっただろう。 細かく見れば、人魚と半人魚の設定に矛盾している点など、大小様々につじつまの合わない点がある。しかし、これはフィクションなので細かな矛盾点よりも、やはり上述の点をしっかり描くべきであろう。 今作は、ベテラン作家が自分のスタッフに書かせた作品ではなく、文学賞の受賞作である。激しい競争に勝つだけの中身であったのかと疑問に思った。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
作者の神護かずみ氏は、自らが「語り部」となり読者に語り聞かせる光景を思い浮かべながら本作を著したのだそうだ。なるほど、この物語はただ恐ろしく忌まわしいイメージばかりが付き纏うホラーでは無い。まるで昔話を語り部の傍らで聞いているかの様な多様性に富んだ場面設定にどんどん引き込まれて行った。 舞い散る桜吹雪の下で絡み合う左吉と人魚の娘の妖艶な性描写にうっとりさせられたかと思えば、別の場面では千余年を生きている霊亀と左吉とのユーモラスな掛け合いに思わず笑ってしまう。 そして中盤で、不老不死の体を手に入れた左吉が生臭坊主・黒快に促されるままに刀で身を斬られ、その傷がたちまち治癒する様を人前で披露する場面では、子供の頃親から聞かされた「ガマの油売り」(尤も、こちらは完全トリックなのだが)の話を思い出し、懐かしさがこみ上げた。 後半はホラー小説らしいグロテスクでおどろおどろしい描写が一気にたたみ掛けて来る。特に信長登場後の左吉と黒快の運命は凄惨を極める。 天正大地震、本能寺の変、安土城焼失など、本作は史実を巧みに物語の中に織り込んでいるのだが、その点が物語の完成度をより高くしていると言えるだろう。 久々に読み応えのあるホラーに出会った。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 2件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|