僕はなぜ、君をさらったのか？
理由があまりにも優しくて美しくて号泣した。
僕こと守生光星は犯罪者の父を持つがゆえに、日の当たらない場所でひっそりと生きてきた青年。しかし、１人の少女と出会ったことから運命が激しく動き出す。
人は１人では生きられないし、自分が知らないうちに誰を助けているかもしれない。そして、いつでも再生できる。
そんなことを思わせてくれた傑作ヒューマンミステリ。
前半の伏線が一気に回収されるクライマックスは圧巻！

日常の謎解き、美味しそうな料理描写、ワインの知識など、今回も読みどころ満載。
さらに良いのが、各話の客やギャルソンたちにまつわるドラマ。
二話のダンサー話ではホロっとなり、三話のワイン会ライバル対決でスッキリ。
シェフの伊勢にまつわるエピローグでも涙腺がゆるんでしまった。
読後、美味しいフルコースを食べたように満たされる、ハートフルなライトミステリー。

一人の中学生少女が亡くなり、もう一人の少女は自分が殺したと言う。しかし、動機などに不可解な点かあり、捜査を続けるうちに意外な事実が明らかになってく。貧困、いじめ、教育問題、社会的な視点を入れながら、多感で繊細で純粋で、でも残酷な面もある中学生たちの心理を描ききった良作。ミステリーとしての完成度も素晴らしい。

ありそうでなかった、ネット番組が舞台となる連作ミステリ。怪奇現象の謎をスタッフが調査すると、意外な真相にたどり着き、放送中止になってしまう。仕事熱心なAD女子、ユルいけど実は切れ者のD、天然系の妖怪漫画家、イケメン声優、バブル感のあるプロデューサーなど、スタッフのやり取りが楽しく、起伏あるストーリーで本当に面白かった。二話は切なくてウルリ。落語のようにオチがきいていて、ミステリ度も高い。ラノベ風カバーだけと、
大人の本読みも満足できた。

新米ギャルソンと個性的な先輩、謎めいたシェフが、問題を抱えるお客のお腹と心を満たす日常ミステリ。料理描写や知識が素晴らしくて、登場人物の会話が面白く、主人公の成長を描くラストに涙した。無駄がない文章なのでサラリと読めるが、じっくり読むと深いドラマが見えてくる。映像化に向いてそう。