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むすぶと本。 『嵐が丘』を継ぐ者
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むすぶと本。 『嵐が丘』を継ぐ者の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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『小僧の神様』『ピッピ船にのる』『ピッピ南の島へ』『すべてはモテるためである』『嵐が丘』『夜長姫と耳男』が今巻で登場する本です。ストーリー面ではむすぶと妻科さんの関係がゆっくり展開していきますが、やはりそれより、これらの書籍の奏でる音楽が人々に与える影響が面白いところです。だから、どの話から読んでも良いと思います。「早く私を読んでよ!」というそれぞれの本の呼びかけが伝わってきます。 そこが楽しいところです。むすぶの影を抑えて書かれているので、『文学少女』や『吸血鬼になったキミ・・・』でのようにお話を追って読者に先へ先へと頁を繰らせる圧力はなく、気楽に読めます。 温かい午後、紅茶を飲みながらパラリパラリと気ままに読むのには最適でしょう。 個人的には好きな妻科さんがもっと登場してくれることを願いますが。 | ||||
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今さら野村美月を手に取ろうって読者はたぶん過去作もかなりカバーしているだろうし「嵐が丘」というタイトルと紹介文にある「蛍」という名のヒロインからある程度どんな作品であるかという見当はついていると思う。先にネタを割ってしまうとご想像通り「文学少女」シリーズの第二巻「飢え渇く幽霊」に割とストレートに繋がる作品。 とはいえ姫倉麻貴やら黒崎保、高見沢という名前を知らなきゃ楽しめない、なんていう「忠実なる野村美月信者限定」みたいなケチ臭さは微塵もなく、精々知っていれば多少は他人より楽しめますよ、ぐらいのちょっとしたサービスに過ぎない。ここいら辺は長いブランクからの復帰を図るにあたって既存の読者の支持だけに頼るまいという野村美月なりの矜持みたいな物を感じる。 今回「本の声が聞こえる少年」むすぶが巻き込まれる姫倉家の問題だけど、フタを開けて見たら「飢え渇く幽霊」で描かれた壮絶なまでにドロドロした親子の愛憎劇とはかなり毛色が違っていた。名前の方は「原典」の雨宮さんと同じ「蛍」だけど、抱えた悩みの方は年相応というか中学生ぐらいの年齢だったら割とこういう事で壁に当たるよね、という等身大の思春期少女を描いた話だったという印象。同じ聖条学園を舞台にしながらドロドロし過ぎない様にして「文学少女」との差別化を図っているんだろうか? ただ、それだとお題にしている文芸作品の掘り下げが出来ないんじゃないか、という疑問を持つ読者もいるかもしれない。基本が長編で文芸作品に絡めたドラマを一冊使ってがっつり掘り下げる「文学少女」と違い連作短編形式の本作だとお題に絡む部分は確かに限られている。ただ、その限られたページ数でもお題の「嵐が丘」における親世代と子世代の違いを作中の人物に当てはめてみるという遊び心みたいなものは透けて見える。 サブタイトルこそ「嵐が丘」だけれども本作のメインストーリーは前巻でも登場したストレートパンチ少女・妻科さんに絡む事件の方だったりする。琴吹さんのメンド臭さと式部さんの快活さを足して二で割った様な新ヒロイン妻科さんだけど、これが中々に宜しい。もうね、不器用さのフルスロットル全開。気になる男の子はいるのに、そんな自分の気持ちに素直に向き合えない少女の迷いを真正面から描いている。 そんな彼女がサッカー部のエースから言い寄られて困っている所へ微塵も女心を解さない朴念仁のむすぶが絡むのだから面白くならない訳が無いのだが、ここで野村美月がお題に使った作品が意外過ぎた。90年代に出版されたハウツー本を、それもAV男優が出した本を使ってくるとは……「野村美月?所詮は少女趣味の作家よ!」とどこかでバカにしていた自分を恥じる……意外なほどに懐が深いのね。 しかもこのハウツー本をお題にした短編が男性読者の麺たるをゴリゴリと削るタイプの話になっていたのに大笑い。思春期少年の「モテ」に対する自意識の拗らせっぷりをここまでネチネチ責めてみせるか、野村美月。特に白鳥士郎じゃあるまいしイラストページを利用したネタを野村美月が使ってくるとは想定外に過ぎた。これは思春期少年にはクリティカルヒットになるんじゃなかろうか……思春期なんかとうに過ぎたオッサンにも響くのだからライトノベルのターゲット層には致命傷になり兼ねん。 騒動の果てに「本の声が聞こえる」というむすぶの秘密に触れる事になった妻科さんのサバサバした態度も悪く無かった。これなら今後登場しても話が湿っぽくならないし、サブヒロインの人物造形としては良い塩梅だと思う。 最終章はむすぶとメインヒロインの夜長姫の出会いを描いた短編で次巻以降への「引き」となる短編だったけど、ここだけはえらくドロドロしていた印象。等身大の少年少女を描く良さを感じさせてくれた本作から一転して再び「文学少女」時代のドロドロ路線に向かうんだろうか……どうにも先の読めないまま終わったシリーズ第二巻であった。 | ||||
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