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推定未来 ―白きサイネリアの福音―
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推定未来 ―白きサイネリアの福音―の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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MW文庫初登場の間宮夏生。電撃文庫では「恋愛サイケデリック」の最後で明かされた「弱過ぎる主人公」の正体に「おっ!」と 唸らされたけれど、それ以外の点に関してはあまり印象に残って無い作家さんだったが… 物語は主人公、警視庁品川署の刑事・君島透が品川署の会議室で開かれていた「六本木ホステス殺人事件」の捜査会議の場に 事前の予告も無く姿を現した「ミゼン」の係長・如月美姫のスカウトを受ける場面から始まる。本庁の捜査一課の傘下にあり 独自のソフトウェアを駆使して「犯罪発生確率」を割り出し、犯罪が発生する事を未然に阻止する事を目的とした組織「犯罪未然防止係」に 転属となった透は早速「発生確率70%」という女性出版社社員が絡んだ事件の捜査に乗り出す事に成るが、事件には透の級友が絡んでいた… 犯罪の発生予測と、その予測を元にした防止活動というあらすじに「え、それってスピルバーグが監督したマイノリティリポートやん?」と 思った方へ。あとがきで作者自身が「マイノリティリポートみたいなのを書きたくて作った」と書いてあります。ついでに言えば 予測システムの立ち上げに関わった重要人物が悲劇の中心にいるという部分も「マイノリティリポート」そっくりです かといってパクリとかの剣呑な話にはなりません。プロット自体は完全にオリジナルですし、その点に関してはご安心を… ただ、オリジナルな展開になるからと言ってネタ元より面白いかと言えばそうならないのが難しい所 取りあえず、物語の前半部分に関してはそれなりに楽しめた。中学生の自分に「自分を死刑にしてほしい」という身勝手な通り魔に 両親を殺された透が、自暴自棄になっていた高校時代に同じ様な境遇にありながら自分と違って周りと打ち解けられていたサッカー部員で 現在はプロのサッカー選手を退き、ホストに転職していた稲葉と再会し、彼が女性編集者と痴情のもつれから殺人事件に繋がりそうな状況へと 陥っているという刑事としての責務と友人としての情の板挟みになる話の流れはベタではあるが読ませる物があった ところがこの重い話は本作の前半部分で意外なほどにあっさりと片付いてしまうのである。読んでいて「え?これで終わっちゃうの?」と 驚いたけど、後半は話の内容がガラリと変わる。「ミゼン」という組織の立ち上げと犯罪予報システムが駆使する膨大なデータベースに 課せられた規制、そして如月美姫も含め「ミゼン」の構成メンバーが絡んだ内部犯罪的な物語になるのだけど…これがどうにも微妙 如月美姫の正体自体は彼女の過去が明かされる事でなんとなく読めてしまうし、胡散臭い事この上ない「ミゼン」を強大な権力でバックアップした 美姫の祖父に絡む事情が少々説明不足のまま「そういう事情があったから犯人は罪を犯さざるを得なかったのだ」と強引そのものな流れで 展開されてしまうのである。しかもその真相を追究する透の活動が関係者の説明台詞っぽい証言と、真犯人を前にしての透自身の冗長過ぎる 真相暴露によって物語の真相が語られる話の流れに至っては「いくら何でも語り過ぎだろ?」と溜息が出た。ホームズだってワトソンに自分の推理を 何十ページも語ったりはしないでしょうに… 前半の透の過去に絡んだ話を膨らませていれば「犯罪予知」というシステムの悲劇性を強調した「読ませる話」になっていたのだろうけど 後半でドタバタと「ミゼン」の組織や予知システムの成り立ちの真相を明かすべく話を急ぎ過ぎた所為で読者にとっては「一方的な説明」を くどくどと聞かされる様な退屈な展開に陥ってしまっていた。そういう意味では完全に構成をミスった作品と言える 警察用語をふんだんに取り入れたり雰囲気作りに力を入れているのは伝わって来たけど「一巻で全てを語り尽くす」という事に拘り過ぎて 中途半端かつ一方的な語りに陥った作品になってしまった一冊。打ち切りを恐れたのかもしれないけど、ここまでドタバタと話を進める必要は 無かったんじゃなかろうか? | ||||
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