ご存じだろうか。“魔が差す”という瞬間は、たぶんどんな人にも一度や二度は訪れるものなのだ。

直心影流の遣い手・橘円十郎は、江戸・日本橋高砂町の口入れ屋に居候しつつ、気の合う二人の牢人仲間である馬淵と宇佐美と共に気ままな日々を送っていた。

成田空港に一人のアメリカ人が降り立った。

キャバクラ、居酒屋、マッサージ、あらゆる仕事をたくましくこなすリツ。

警視庁捜査一課のベテラン刑事・長谷川が庁内で拳銃自殺した。一匹狼で、上層部とも衝突したことがあるという。

柏木喬は、女児誘拐殺人犯として懲役十五年の判決を受けた。

湘南・葉山マリーナから沖縄を目指す豪華クルーザーのインディアナ号が出港した。

赤かぶ検事が追及するのは、夫殺しの嫌疑をかけられた資産家夫人とその愛人、決定的な証拠も揃い、普通ならば単純な裁判になるはずだったのだが…。

人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。そして今、未曾有の台風が二組の家族を襲う。

非実体主義とは、そこに存在しないものに価値を見出す。

非実体主義とは、そこに存在しないものに価値を見出す。